
いやはや、凄い。いつも通り前付け。コンマ13の安定したスタート。8Rの西島義則だ。F3でもまったくブレない自身のスタイル。そしてレースぶり。しかも、1マークでは2コースから差して先頭に立ったのだ! ピットにどよめきが起こったのは、それがいかに凄いことかを誰もが認識していたからに相違ない。
ただし、残念ながら最後は2着。猛然と追いあげた福島勇樹が逆転したのだ。その瞬間、ピットに起こったのは嘆くような悲鳴。みな、西島がF3でも凄いレースで勝つところを見たかったのではないだろうか。声をあげなくとも、そのまま先頭でゴールするのを応援していた。だから、抜かれた瞬間に溜息が出る。福島に逆転してほしくなかったというのではなく、西島の凄さに酔いしれたかったのだ。
レース後の西島は、昨日ほどの悲壮感はなかったものの、しかし難しい顔で足早に引き上げていった。明らかに抜かれたことが悔しいという、そんな表情だった。重すぎる足枷を背負おうが、しかし勝利を望むし、逆転されればひたすら悔しい。そんな西島義則があまりに素敵すぎた!

とは言いながらも、福島の勝利も素晴らしかった。2周1マーク、内でおっつける杉山正樹を全速で交わし、そのまま西島のふところを捕らえようとする、まくり差しのハンドル。ターン出口で西島がバタついたとはいえ、西島の左側にピタリと張りつくスピードは見事だったし、2周2マークで差し返して舳先を掛けてきた西島を振り切る気合もアッパレ。ピットに戻った福島は、なぜか大笑いしていて、それは激戦を演じたことへの快哉か、あるいはいったん差されながらも何とか獲り返せた安堵がもたらしたもの、ということだろう。充実の笑み、だ。

3着となった杉山も、福島と笑顔でレースを振り返り合った。87期の同期生コンビ。いったんは揃って大先輩に屠られたところを、福島だけは逆転し、杉山も3着には食い込んだ。2周1マークは同期がツープラトンで西島先輩に迫った展開でもあり、杉山もしっかり戦えた実感はあったかもしれない。87期でGⅠ最多優出は杉山で、福島が2番手(優勝は福島と出畑孝典)。そんな二人がこの舞台で勝負した、その充実感も共有されたかもしれない。

ところで、林美憲と瓜生正義が、装着場の真ん中で話し込んでいたのである。林は75期、瓜生は76期だから、養成時代に半年かぶっている。だから長い付き合いであり、先輩後輩ではありながらも心安い関係にあるのだろう。期と支部は違うけれども、同世代の仲間のようなものだ。で、話している内容に聞き耳を立てていたわけではないのだが、ときどき漏れ聞こえてくる言葉から類推すると、林選手と瓜生選手の会話というよりは、林選手と瓜生選手会代表の会話であるようだった。レースのことより選手会関係の話というか。瓜生代表はピットでは代表としての顔を見せなければならない場面があるわけですね。

江口晃生と辻栄蔵がやたら楽しそうに会話している姿もあった。こちらも期が違って、支部も違う。しかも54期と74期だから、期に関してはなかなかの離れっぷりである。とはいえ、長くSGやGⅠの舞台で剣を交えてきた2人である。もはや戦友のようなものでもあろう。辻は05年グランプリを制しているが、その優勝戦には江口も出走していた。1億円を奪い合った間柄でもあるのだ。
そう、期がどうこう、支部がどうこうよりも、彼らは本当に長い間、多くの大舞台で同じ時間を過ごしてきた。属性が何であろうと、気安く話ができて当然なんでしょうね。これもまた年輪と経験のなせる業だ。


と言いつつ、同期や同支部の絆も強い。9R、笠原亮が3コースまくりで快勝。池田浩二は2コースから差しを放とうとしたが、イン柴田光の艇尾を突きそうになって前が詰まり、そこで笠原がドンピシャのタイミングで握り込んで突き抜けた展開。池田はハンドルが遅れたものの、なんとか2着。致し方ない展開ではあったが、レース後はやはり悔しそうな顔で引き上げてきた。それを慰めたのが同期の佐々木康幸。というか、池田が佐々木に愚痴をこぼすように話しかけ、佐々木が「あれはハンドル切れないよね」と慰めた格好。佐々木は同支部の後輩である笠原を讃えた後は、同期である池田をケアしたわけである。養成所時代は30年近く前。長い年月が経っても、同じ釜の飯を食ったつながりは強くて深いのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)