BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――涙のV!

 西橋奈未がJLCのインタビューを受けながら涙を流すのを見て、やはりそうなるだろうという納得と、少し意外な思いが交錯した。
 意外というのは、これはあくまで通過点だろうと思っていたからだ。西橋からは何度も「記念で活躍する選手になりたい」という言葉を聞いていた。記念というのはもちろん、SGやGⅠ。GⅠはトップたちが集う混合GⅠである。女子というカテゴリでトップに立つだけにとどまらず、さらに上位のカテゴリで通用したい。そう、たとえば遠藤エミのように、意識はそこに向いている一人だと認識している。キャリア的にも経験値的にもまだまだこれからという段階であるのは確かだが、そんななかでGⅡ初優勝は――PGⅠであるならまた別だろうが――通過点に過ぎないと考えていてもおかしくない。そう考えていたのである。だから、涙は見せないのではないか、という感覚はあった。

 一方で、やはり初タイトルというのは感慨深いものだろう。一昨年に初出場したクイーンズクライマックス、そのトライアル第2戦でエンスト失格を喫して実質ファイナル行きが厳しくなった時の、激しく落胆している姿は今でも記憶に鮮明だ。本気でティアラを獲りに来たのだ、そう思わせる姿だったのだ。GⅡとはいえ、タイトルはタイトル。通過点といっても、そこに歓喜は生まれて当然だ。
 そして丸亀は、単なるひとつのレース場ではない。昨年3月、西橋はこの水面で大怪我を負った。落水して頭蓋骨骨折。その報は、西橋のキャリアを一時停止してもおかしくないと捉えられていたと思う。その2週間後に宮島周年で復帰し、しかも予選突破したのには本当に驚かされたものだが、ともかく丸亀には痛々しい負の記憶が残っていたのである。

「他場にはない緊張感で臨んでいた」
 西橋は優勝を決めたあとの囲み取材で、そう語っている。それはそうだろう。あのときの記憶は、トラウマだったり、恐怖感だったり、そういった嫌な記憶に変換されておかしくはない。それをレースごとに払拭しながら、西橋は戦わなければならなかったのだ。それが初タイトルという結果に結びついて、「いい思い出に上書きできた」と結果以上の喜びを手にできた。痛みとともに味わった忌々しい思い、それを振り払って得た歓喜。この1年2カ月のことが脳裏に描かれれば、涙が流れて当然だ。そしてこれは、間違いなく次へとつながっていく涙である。

 そう、意外であろうと想定内であろうと、西橋は次に目を向けるのである。2週間後のSGボートレースオールスターだ。SGで活躍したいという思い、タイトルホルダーになったという自信を携えて、西橋は浜名湖に向かう。この戴冠がSGでどんな化学変化を起こしてみせるのか、今から楽しみでならない。もちろん、それがさらなる大きな結果につながっていったとしたら最高である。

「惜っしぃぃぃぃ!」、そう声をあげながらエンジン吊りに向かったのは寺田千恵。「頑張った!」、そう呟きながらエンジン吊りに向かったのは平高奈菜。惜しかったのは田口節子か。頑張ったのは山田理央か。関係性を考えれば、そうなるのが自然だ。しかし寺田は続けて言ったのである。「落としすぎた!」。
 そう、彼女たちが惜しがったのは、頑張りを認めたのは、田上凜に対してなのである。もちろん田口の敗戦を寺田は、愛弟子・山田の敗戦を平高は、悔しがっていたことだろう。しかしながら、チルト3度を駆使して旋風を巻き起こしたデビュー3年の若手のチャレンジをも、彼女たちは応援していたのだ。そして、スリットから一気に出ていって、まくり切るかと思われた田上の走りを、実績充分の大先輩たちが惜しがりながら称えていたのである。

 たしかに惜しかった! 頑張った! 実際に寺田や平高、もちろん同支部の鎌倉涼たちに声を掛けられて、田上は笑顔を返していた。地団駄を踏むような仕草を見せた瞬間もあったけれども、それはなんとも爽やかな様子と映った。節間通して、その健闘ぶりは素晴らしかったの一語! ますます武器を磨いて、また戦いを盛り上げてください。ナイスファイト!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)