BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

一瞬の攻防

12R優勝戦 並び順
①西橋奈未(福井)  09
②山田理央(香川)   10
④山川美由紀(香川)17
⑤細川裕子(愛知) 23
③田上 凛(大阪)    08
⑥田口節子(岡山) 22

 西橋が勝った。結果は大差の圧勝。だが、1マークは薄い氷を踏むようなギリギリの勝利だったはずだ。
「りんりーーーん、行ったれーーーー!」
「行ったってええぞ、りんりーーーん!!」
「リオ~~負けんなよ~~!」
「リッちゃん、がんばれーー!」
 〆切3分前、記者席からスタンドに流れ着くと、ファンの声援はリンリンvsリオの一騎討ちムードだった。その合間に「美由紀」「節子」などが混じって、1番人気・西橋のそれは驚くほど少ない。今節、全国のファンを驚かせた若手レーサーの勢いが、そのままスタンド全体に流れ込んでいた。

 そして、もっとも多かったであろう「リンリン」は今日も迷うことなく行った。両隣のドカ遅れなんぞ見向きもせずに、唯我独尊のコンマ08。スリットから舳先を傾けただけで、細川と山川を軽々と飛び越える。難敵と思えたリオも伸び返される前にひとっ飛び。
 瞬く間にイン西橋まで辿り着いたリンリンは、そこでレバーを緩めた。おそらく作戦は昨日と同じ。
 マイシロのない西橋をツケマイ気味に絞め込み、引き波にハメて一撃で叩き潰す。
 戦法としては最強。この強襲がモロに決まれば、リンリンは出口で独走状態に持ち込んだだろう。ただ、結果的に今日の戦術は最強でありながら最善にはならなかった。

 西橋の応戦が素晴らしすぎたのだ。まくられる寸前、リンリンが落とすのを肌で感じた西橋は、そこで逆に一瞬だけ強めに握って艇を合わせに行った。勢いの差でぴったりとは合わせきれないが、リンリンのマイシロ(入射角と言うべきか)も大きく削がれる。落とした作用とチルト3度の反作用で、サイドの掛かりが甘くなる。

 リンリンに鈍いブレーキが掛かったところで、西橋はまた握り直した。この瞬間、今年の勝者が決定した、と断言していいだろう。今節の台風の大目玉リンリンはここで死に体となり、道中でもボコボコに叩かれて最下位でゴールを通過した。チルト3度、負の連鎖。

 雌雄を決した1マーク直前に戻ろう。リンリンにはもうひとつの戦術があった。ターンマークも西橋も眼中に入れず、握りっぱなしで完全にまくりきり、大きく流れながら舟が返るのを待つ戦術。この場合、西橋は握って応戦することなく、小回りに徹してバックの出足~行き足勝負に持ち込んだはず。それでどうなったかは神のみぞ知る、だが、やはりコンマ09まで踏み込んだ西橋に分があった気がしてならない。

「(スタンドの声援が)リンリーンばかり聞こえたので、かえって燃えました(笑)」
 レース後、勝者はしてやったりの笑顔で振り返った。
「(1マークの応戦で)ちょっと失敗したと思ったんですけど、勝てて良かった」
 とも。あれだけの冷静的確なハンドルワークのどこにミスがあったのか、私にはちょっとわからないのだが、それだけ西橋奈未というレーサーがしっかり高いレベルに到達している証、と見ることもできるだろう。

 うむ。それにしてものリンリン旋風。今年の丸亀大会は、間違いなく自称「チルトアッパー・タノウエ」が全国のファンを魅了しつづけた。チルト3度は常にフライングや惨敗と隣り合わせ、選手生命を削るようなハイリスク・ハイリターンの戦法でもある。わずか6日間で全国に名を知らしめた和歌山出身の個性派レーサーが、できる限り長くたくましく、全国のまくりファンの目を愉しませる存在であり続けることを、節に願うばかりだ。

(photos/チャーリー池上、text/畠山)