BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――緊張感。リラックス。

 案の定、毒島誠が早くから試運転とプロペラ調整、である。というより、14時前、全選手のなかで真っ先にボートを着水したのが毒島なのである。昨日までは見逃していたが、今節は連日、同様だったそうだ。もちろん、機力的に完璧ではないからこその調整と試運転、しかしながら大勝負の日でもルーティンを欠かすことなく、いつも通りに全力を尽くす。毒島のいつも通りは相当にレベルが高く、またハードなのである。
 3R発売中には、いったんボートを陸に上げてギヤケース調整。大きな整備はなさそうだが、外回りもやれることはやろうということだろう。そうそう、4RをJLCのブースで見ていたときのこと。画面の右上に「④①③148.0倍」と映し出されると、「100円で1万4800円ですもんねえ、夢がありますよねえ」と声がしたので振り向くと、ええっ! 毒島誠! いつの間にか毒島が同じモニターでレースを見ていたのだ。いや、あなたはこれから3分で4200万円のレースを走るんですけど。このスーパースター、実に素朴。そして、地元SG制覇に思いを込めて調整から戦いを繰り広げているけれども、いいメンタルで臨めているようである。

 峰竜太も、まだ水面にボートを下ろしていないけれども、1R発売中からプロペラ室に姿があった。隣には愛弟子の定松勇樹もいた。節中盤あたりからかなりペラ調整に時間を費やしてきたようだが、今日もプロペラをさらに煮詰める、あるいは乗ってみていけるようならきっちりキープして、臨むことになるのだろう。調整を離れて、ピット内を歩いている様子を見ると、やはり緊張気味と見える。今日は最終日なので帰郷準備の荷造りも合間に行なっているのだが、廊下にあるスーツケースのもとに向かう峰とすれ違うと、いつか見た表情になっていた。なかなかSGを獲れなかったあの頃の、SG優勝戦の峰だ。ただ、峰も自分で言っているように、今回の緊張はそのときのものとは質が異なっているようだ。今の峰なら、充分に克服できると思う。少なくとも、それが敗因となるようなことはないだろう。

 定松はといえば、やはりオーシャンのときよりはリラックスしているように見える。優勝戦1号艇と5号艇では心持ちが違ってきて当然。また、とにかく注目は師匠に集中しているのだから、定松としてはマイペースで臨めることだろう。師匠と行動をともにしていることも多いが、まさか緊張が伝染したりはしないと思う。定松は今節、登番が下から2番目。というわけで、いちばん下の西岡顕心が自身のレースが近いこともあって、定松が積極的に新兵の仕事もこなしている。その様子にも余裕はうかがえていて、むしろ平常心が引き出す一発が怖いような気もしてくる。

 毒島以外で、早くからボートを下ろしていたのは茅原悠紀。もっとも、2~4Rの間に試運転をする姿は見ていない。ペラ調整室の外に設けられている臨時調整所に陣取って、ペラ叩きに没頭。叩き変えているのか、昨日までの調整をさらに煮詰めているのかはその姿からは判断できないが、6号艇だからといってひとつも投げていないことはうかがえる。なにしろグランプリ獲ったのは6号艇6コースからだもんなあ、と12年前のいまだ鮮明な記憶が甦ってきたりして。

 愛知勢は、大きな動きを見せてはいなかった。磯部誠は時折ボートにやって来て、モーター回りやレバーあたりを確認したりしているのだが、少なくとも4Rまでに調整を始めた様子はなかった。池田浩二はエンジン吊りでしか姿を見かけず、4R終了後にモーター回りの点検などを始めていて、これから始動しようという様子だった。今日も気温は上がっていないが、昨日に比べれば高くなっている。そして、ここからさらに冷えてくることが予想される。池田は「冷えたほうがいい」とコメントしているので、本格的な動きはもっと暗くなってからになるかもしれない。いずれにしても、マイペースを貫く姿にはさすがの貫禄が感じられるのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)