BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――グランドスラマー!

 まずは、峰竜太、GRANDE5グランドスラム達成、おめでとう!
 この制度がスタートしたのは2014年5月。ボートレースオールスターからだ。あれから12年3カ月、ついに5大競走をすべて優勝した選手があらわれた。今後も達成する選手はあらわれるだろうが、その第一号として峰竜太はふさわしい。3億円のインゴット、それを手にする星の下に峰竜太はあったということだ。
 だが、峰は囲み会見で、また表彰式でも最後にわざわざ付け足すように、「自分はふさわしくないと思った」という旨の発言をしている。自分にまだその実力はない。オールスターを残して王手をかけている毒島誠先輩のほうがふさわしいのではないか。そんなことを思ったというのだ。

「峰がカタくなってる」
 締切2分ほど前のこと、久田敏之が笑いながら装着場に姿をあらわしている。同支部の毒島を応援するべく、水面を目の当たりにできる場所に出てきたというわけなのだが、待機室で緊張と戦う峰を目撃したのだろう。別に久田は、これで毒島に有利になったと言いたいのではなく、そんな峰を面白がっていたのだろう。峰竜太が今までどれだけ緊張感と戦い、時に失敗し、時に乗り越えてきたか、久田もよく知っている。そして、もはやSG優勝戦1号艇でプレッシャーに圧し潰されるような、そんな選手ではなくなったことも。
 だというのに、峰が昔の彼のように緊張していたのだから、選手仲間としては笑いも漏れよう。そして峰自身は、そんな自分と向き合って「まだ実力が足りない」と感じていたそうだ。だから、グランドスラマーが自分にはふさわしくないのではないか、という発想になった。
 そして、これは運なのだ、と何度も繰り返していた。スター性という言葉も口にしていたが、ようするに巡り合わせであり、そしてまたそうした星の下にあることも自覚している。ずいぶんと殊勝なことを口にしているようにも感じられるが、実は峰にはそういうところがある。というか、実は自分の力量を高く見積もっていない節があるのだ。これまでに何度、「僕よりうまい人はたくさんいるのに」とか、「僕は本当は強くない。必死にやってるだけ」とか、そんな言葉を峰から聞かされたことか。

 しかし、本当にそうだろうか、といつも思う。ならばなぜ、峰はここまでの結果を出し、そしてスーパースターとしてファンの支持を集めるのか。
 そのひとつの答えが、今日「カタくなった」ことにあるのではないか、と僕は睨んでいる。なぜ今日の峰がカタくなったかといえば、自分が勝つこと、そしてグランドスラマーとなって話題を作ることが、ボートレースを盛り上げること、そしてボートレース界に恩返しすることと考えたからだろう。単に自分の勝ち負けだけでなく、業界を背負おうと峰は自分を追い込んだ。しかしその壮大な決意は、負けて失敗する自分を容易に想像させるだろうし、そのときに巻き起こるファンの溜め息や自分の落胆も想像がつくだろう。本当は、グランドスラムに王手をかけて優勝戦1号艇に乗り、おおいに期待感を湧き上がらせた、それだけで充分、盛り上がっているのである。さらに言えば、負けたら負けたで、そのことでまた盛り上がる。そこを峰が考えられないのは当然ではあるのだが、とにかく峰は自分に勝利を課し、自分を追い詰め、そしてプレッシャーと戦うことになった。
 その決意こそが「強さ」なのである。そして、その決意を抱いた峰竜太はやはり、グランドスラマーにふさわしいのだと僕は思う。

 で、そんなふうに戦った峰が、勝って泣くのは当然ですよね(笑)。もちろん負けても号泣だったでしょう。そう、峰竜太は泣いた。ピットに戻ってきた瞬間にもう泣き顔なのが目に入ったし、テレビインタビューを受ける間にも泣き続けた。その後、いったん涙は引いたのだが、ふたたび泣いたのは、毒島に祝福を受けたときである。足的には間違いなく自分が上だったのに、1マーク、差した毒島に迫られている。そのとき、毒島の強さを改めて痛感した。毒島のほうが3億円にふさわしいと思った。それに毒島が、この桐生SGにどれだけ懸けていたか、峰もよくわかっていただろう。その毒島に祝福されれば、いったん引っ込んだ涙がまた湧いてくるのはやっぱり当然。苦しい戦い、強大なライバル、それを乗り越えた峰は、そりゃあ泣き虫王子になるはずである。そして、こんなにも純粋に泣ける峰竜太は、やっぱりグランドスラマーにふさわしいぞ。

 毒島誠の健闘にも拍手したい。レース後はとにかく脱力した感じで、久田に促されて装備を解きに向かう際の足取りが、なんだかもつれそうに見えるくらい、頼りないものだった。メダル授与式に向かう前に報道陣の取材を受けていたが、実に丁寧に、穏やかな様子で対応している。ただ、表情や、ふとした言葉の端々に、とてつもない悔しさが滲んでいた。もちろん、グランドスラムを先に達成されたことに対してではない。地元SG優勝という、巨大な目標を達成できなかったことに対してだ。次の桐生SGがいつになるかはわからないが、その時が来るまでに毒島はさらに、全力で突っ走ることだろう。

 あと、池田浩二が「峰が史上初、というのは納得できねえなあ」と冗談っぽく言って、取り囲む報道陣や他の選手を笑わせてました(笑)。そう、池田はGRANDE5の制度が始まる前に、この5SGをすでに制覇しているのです! 09年にクラシックとメモリアル、11年にクラシックとダービーとグランプリ。まあ、それを言うなら、野中和夫がさらに前に制覇してますけどね。もちろん、これは池田らしい峰への祝福。そして我々は池田浩二の偉業も忘れずにいましょうね!

 なお、まったく油断してましたが、峰のグランドスラム水神祭も行なわれています! ワタシ、てっきり行なわれないものと思い込んで、記者席でパソコンに向かっていたところ、ピットのほうでフラッシュが焚かれまくっている。うがーーーっ、見逃した! 中尾カメラマンがしっかり立ち会っていましたので、写真のみ、どうぞ。とにもかくにも、峰竜太、本当におめでとう! カッコ良かったぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)