BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎オールスター 準優ダイジェスト

なんだかんだ王者

 

10R 並び順

①松井 繁(大阪)07

③西島義則(広島)16

②峰 竜太(佐賀)11

④茅原悠紀(岡山)03

⑤太田和美(大阪)08

⑥桐生順平(埼玉)04

 

 

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 やっぱり松井は強かった。西島の前付けに抵抗して100m起こしになっても、4カドの茅原がゼロ台前半で絞めまくりに来ても、王者のインモンキーは微塵も揺るがなかった。コンマ07の完璧なスタート、完璧なターン、完璧なイン逃げ。このレースっぷりといい、6秒77の展示時計といい、パワー面でも今日がいちばん強力だったと思う。前検から松井の足を軽視し、「V候補に挙げるにはパワーが劣勢すぎる」と書いた私だが、心の中で詫びつつ訂正しよう。

 ファイナル3号艇でこのパワーなら、有力なV候補だ。

 いまさら遅いか、誰でもわかるか(苦笑)。

 

 

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 1マークを回って、焦点は2着争いに絞られた。バック中間、スッと抜け出したのが桐生と茅原。2艇身後方から西島、太田が追いすがり、2マーク手前で内寄りに切り込んだ。このベテランの勝負手を、一撃の全速マイでやっつけたのは桐生だった。あっという間に1-6完成。3番手の太田以下は、完全に置き去りにされた。桐生のスピードを持ってすれば、優出の2議席はこの時点で固まった、はずだった。だが……波乱は起きた。

 2周1マーク。桐生のはるか後方から、太田が「最後のお願い」という風情で内に切り込んだ。これを見て桐生が選んだ戦法は、いつものように「全速で抱いて回る」だった。両者の位置を考えれば、それで正解だったはずだ。が、太田の切り返しは、想像以上に激しかった。抱いて回ろうとした桐生の艇にほぼ真横から衝突し、太田の艇がもんどりうって転覆した。明らかに太田自身に非がある転覆で、不良航法&責任転覆のW罰則は必然だろう。ただ、これが「SG準優の2着争い」であることを考えれば、桐生の“目測”が甘かったと見ることもできる。もう少し余分に懐を広げていれば太田の奇襲は空を切り、完璧に1-6隊形が固まったはずだ。

 太田の衝突をモロに喰った桐生の艇は大きくよろけ、西島、そしてバック最後方だった峰が軽々と追い越した。転覆艇の出現で、2着は2周2マークの一発勝負。西島が回り、その外から峰が全速のツケマイを浴びせ、桐生がありえないような追い上げで最内を差した。そして、全速でぶん回した分だけ、峰が激闘の2着争いを制した。

 

 

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1着・松井、2着・峰。

 今日の峰の優出を分析するなら、「99%の強運と1%のターンスピード」だろう。茅原の絞りまくりをブロックした峰はその衝撃で失速し、最後方を余儀なくされた。他者のパワー&スピードを考えれば、そこで万事休すだったはずだ。そこから、もつれにもつれて2番手浮上。超ラッキーとしか言いようがない。そして、だからこそ明日の峰は怖い。SG制覇に欠かせない3要素は、実力とパワーと運。今節の峰はすべてを兼ね備えているし、その運がとびっきりの超強運なのだから。「棚ぼた優出」と肩の力を抜いて戦えるのも好材料だし、4号艇というポジションも今節の峰に合っている。「一度は死んだ身の上」と開き直ってスタートを突っ込めば、あっさりのSG初戴冠があっても不思議じゃないと思うぞ。

 今節、誰よりも声援を送ってきた西島は、無念の4着……よう頑張った。贔屓目でもなんでもなく、「まだまだ、いつでもSGが獲れる」と確信させてくれた5日間だった。次こそは!

 

実戦心理

 

11R

①重成一人(香川) 14

②中島孝平(福井) 17

③服部幸男(静岡) 06

④遠藤エミ(滋賀) 04

⑤下條雄太郎(長崎)04

⑥白井英治(山口) 06

 

 

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 服部の戦法が、このレースの着順を決めた。スリットを通過した瞬間、内隣の中島は1艇身近く凹んでいた。インの重成も後手を踏んでいる。そのまま伸びなりの絞りまくりに出る選択もあったはずだ。一発勝負のファイナルなら、そうしたかもしれない。

 だが、ここは準優。服部は激しい戦法を自重(おそらくアジャストした影響もあっただろう)し、じわりと内に艇を寄せながらまくり差しのハンドルを入れた。この瞬間に、新たなファイナル2議席がほぼほぼ決まった。まくり差した服部と、インで残した重成。2艇が力強く抜け出し、バック直線はパワー勝負。内の服部11号機がじりじりと伸びてわずかに舳先を突っ込んだが、2マーク直前、スッと舳先を抜いて外に持ち出した。ここも準優ならではの実戦心理。優勝戦ならば、そのまま突っ張り続けたかもしれない。先マイの権利を得た重成が俊敏にターンし、外に持ち出した服部が安定味のある旋回でしっかり2着を確保し、1-3隊形が固まった。

 

 

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 1着・重成、2着・服部。

 コースの利と展開の利で重成が先着したが、パワーでは服部11号機が上。そう確信させる一騎打ちだった。慎重な立ち回りでファイナル6号艇をゲットした服部が、明日はピットアウトからどんな勝負手を放つのか。その戦略は、ファイナルそのものに大きな影響を与えるだろう。そして、メイチ1着勝負の服部は、明日こそ心置きなく自力で攻めたてるだろう。

 女子レーサーでただひとり準優に乗った遠藤は、展開がなく5着。ただ、この大舞台で4カドからコンマ04まで踏み込んだ根性はあっぱれだった。今節、エミがどれだけ成長したかは、明日以降のレースで随所に反映されると思う。

 

優勝すべきパワー

 

12R

①平本真之(愛知) 09

②岡崎恭裕(福岡) 14

③井口佳典(三重) 12

④辻 栄蔵(広島) 09

⑤吉川元浩(兵庫) 04

⑥濱野谷憲吾(東京)05

 

 

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 このレース、私は岡崎に◎を打った。うまく差しハンドルが入れば、バック直線で舳先をねじ込むことができる。そう確信していたからだ。そして、1マークはまさに私が思い描いた通りの展開になった。平本が先マイし、岡崎が小さく回って差す。差しハンドルは完璧で、あとはバックで舳先を突っ込んで勝ち。温泉気分で見ていたらば、その後の一騎打ちは脳内レースと完全に真逆だった。舳先が入るどころか、ぐんぐん突き放されてゆく。誤算も誤算、ターンの出口からの実戦足は、平本のほうが強力だったのだ。11Rで内からグイグイ差を詰める服部を見ていただけに、その彼我の差はより鮮烈だった。

 2マーク、平本が回り、岡崎が回って、最後の2議席はすんなり決まった。2艇の足色が強力で、どんどん後続が千切れてゆく。このレースは、文句なしにパワーのレースだった。

 

 

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1着・平本、2着・岡崎。

 平本のこの1着は、いろんな意味ででかい。でか過ぎる。まずは、ファイナル1号艇ゲット。インの強い尼崎で、このアドバンテージは計り知れない。ただ、1号艇ならではのプレッシャーもつきまとうわけで、今晩の平本はかつての失敗(5年前のグラチャン1号艇で6着)とも向き合うことになるだろう。「明日は大丈夫だろうか」と疑心暗鬼になる可能性だってある。

 で、そんなときに、今日の勝ちっぷりが大きな味方になるはずなのだ。「岡崎を置き去りにした、あのレース足があれば大丈夫。絶対に負けるわけがない」と自分に言い聞かせることができる。よほど1マークの展開が崩れない限り、インの勝ち負けはその部分のパワーで決まる。ターンの出口からの出足~行き足は、イン選手の命綱。その部分に絶大なる信頼と自信を得た平本は、最大の難関(心の問題)を克服する可能性はかなり高い。一言でいうなら、平本は優勝すべき最強のパートナーを手にした。その自覚がある限り、平本が自滅することはないだろう。今日の勝ちっぷりで、平本のV確率は30%から70%くらいまでアップした、とお伝えしておく。

 

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 逆に岡崎は、「あれ?」と不安がよぎったのではないか。私と同じような誤算を感じたとしたら、明日はピットでいろいろなことを考えるだろう。「6コースでは話にならないから、服部さんに連動して前付けに行こう」と考えるかもしれない。「パワーで平本に劣る以上、スタート勝負しかない」と思うかもしれない。とにかく、精神的に苦しい立場に立たされた気がしてならない。まあ、逆の見方をすれば、「開き直った岡崎」を見たくもあるな。私が勝手に言い続けている『艇界のあばれる君』が何をやらかすか……服部の戦略と連動させて、これからゆっくりじっくり妄想を膨らませたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)