BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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びわこレディースvsルーキーズTOPICS 2日目

2日目の団体戦
紅組3-5白組

総合ポイント
紅組7-9白組

 団体戦とは何か。
 この素朴な疑問をいささか深いレベルで考えさせられるレースがあった。レディースが1~3号艇に配置された10Rだ。イン戦がメチャクチャ強い守屋美穂が1号艇だからして、「守屋が逃げ、土屋南と山川美由紀が追随して紅組の鉄板レースか」と思ったファンは多いだろう。

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 が、そんな紅組鉄板ムードを豪快に切り裂いたのが、3コースの山川だった。トップスタートから一撃で内2艇を攻め潰す絞めまくり! 真っ先に叩かれた南も、必死に抵抗しようとした守屋も、讃岐のツケマイ女王の引き波に沈んだ。痛烈な“同士討ち”だ。その後、守屋が猛追したものの5着に散って、団体戦ポイントは白組(テニスで言うところのサービスブレーク)に。もちろん、その最大の要因は「山川の絞めまくり」と言わざるを得ない。
 颯爽と先頭を走る山川を見ながら、私の脳裏をよぎったのが「団体戦とは何か」という自問だった。もしも山川が己の成績よりも団体戦に重きを置くなら、1マークはまったく違う展開になっていた可能性は高い。今節の私の舟券予想(ミッション含む)も、大なり小なり団体戦における選手の実戦心理をオプションとして加えている。このレースも「カド受けの山川が外をブロックしてからの握りマイ、その間に守屋がすたこら逃げる」と予想していた。
 が、20年以上もの長きに渡って記念戦線の修羅場を駆け回り、一流の男子レーサーを駆逐してきた女傑は、迷うことなく猛烈な絞めまくりを選択した。そう、これがあくまでも個人競技であるボートレースの正攻法だ。団体戦というオプションは、ガチのボートレース=真剣勝負の前では何の意味もなさない。山川のまくりは、その本質を鮮やかに刺し貫いた。

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 勝利者インタビューで団体戦について聞かれた山川は、「あ、すみませんでした」と言って苦笑した。これに続くセリフが憎い。
「でも、こういう番組を組まれた以上は、こうなりますよね」
 勝手に意訳するなら「私が3号艇3コースに入ってスタートを決めた以上は、相手が誰であっても絞めまくりをしないわけがないですよね」。なんという自負、なんというプロ意識!
 3回目に突入したこのシリーズは、【あくまで個人競技であるボートレース+団体戦という連帯意識=??】という数式を、選手とファンがそれぞれ紐解くというユニークさを有している。どんな化学反応が発生し、それがどのように結果に反映され、ならばどんな舟券を買うべきか……江戸川の第2回大会あたりから、私はこうした2次方程式な発想が気に入り、今節もあれやこれや妄想も含めて節間を楽しんでいる。
 今日の教訓は、月並みではあるが「選手の個性と性格もしっかり推理のファクターに加えるべし」だな。山川の猛烈な絞めまくりは、このイベントの本質のみならず、ややもすれば「隠れオール団体戦」とも呼ぶべき女子戦の在り方にも一石を投じた気もするのだが、どうだろうか。

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 さてさて、今日のMVPはルーキーズからふたり。ひとりはもちろん、昨日のドリーム戦から圧倒的な強さで連勝街道を突っ走る山崎郡。昨日の5コースまくり差しも素晴らしかったが、今日の12Rの4コースまくり差しもド派手だった。スリットほぼ同体から、カド受け海野ゆかりの外へやや無理気味に艇を併せに行った。そこから海野も握ったから、「あれ、郡は弾かれるかも?」と思ったほどで、何にしても先頭に立つような展開ではない。が、海野が落としてまくり差しに切り替えた瞬間、郡はそれを強引に抱き込むようにして2段のまくり差し! 実に骨の折れる1マークだったはずなのに、そこから引き波を超えて出て行くパワーの半端なさよ! バック直線、ふと気づけばインから普通に先マイしていた小野生奈を鮮やかに捕えきっていた。

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 明日は4R6号艇&9R3号艇(←団体戦の3号艇……今日のインタビューで「白組に勝って欲しい」と言った郡が、果たしてどんなグラッチェ攻撃を見せてくれるのか。悩ましくも楽しみだ)という難関だが、現状のパワー&リズムなら無傷の5連勝も十分にありえるだろう。

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 ちょいと寄り道。このレースでありえない展開で郡に差された生奈、5・6・3着で現状レディースの17位に低迷する大山千広は、まだまだ劣勢パワーから抜け出す気配が見られない。今日の3Rで大差の5着争いを繰り広げたふたりの惨状(それはそれで熾烈ではあった)は、正視するに忍びなかったな。今節の目玉レーサーのパワーアップに期待したい。

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 もうひとり、やはり無傷の3連勝で予選を折り返したのが超ダークホース?の山田晃大だ。正直、ビックリの一語! 前検ではそのパワーにまったく気づかなかったし、初日の3コースまくりを目の当たりにしても「ま、たまたまだろ」くらいに軽視していた。それがまさか、今日の2Rも鮮やかに逃げきり、8Rは4カドから伸びなり一気に長嶋万記らレディース軍団をまくりきっていた。
 うーん、この流れ&雰囲気は、2月・江戸川を制した澤崎雄哉に似てるかも? まあ、澤崎の相棒が江戸川のスーパーエース機だったのに比べると、山田晃大の29号機はかなり見劣る気もするのだが(←勝手に上位の下あたりと鑑定)どうだろう。明日の6号艇でどこまで健闘できるか……これまた正直に言うと、昨日の夜から私と黒須田は晃大君を「裏山田」とか「別山田」とか非常に失礼な名称で呼び合っている。もちろん、「表山田」「本山田」は祐也なわけだが、目下の予選得点率は10・00vs3・33のトリプルスコア。明日も奮闘して、超失礼な私と黒須田を見返してもらいたい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)