ちょっぴり不安な埼玉祭
10R
①桐生順平(埼玉)11
②長田頼宗(東京)13
③上條暢嵩(大阪)12
④佐藤 翼(埼玉)24
⑤吉田拡郎(岡山)16
⑥宮地元輝(佐賀)13
埼玉の絶対エース桐生が逃げた。
スタートはスロー3艇が横一線。4カド翼が凹んで5コース拡郎が渾身のまくり差しで迫ったが、ターンの天才には届かない。走り慣れた狭い水面をくるりシャープに旋回し、去年の戸田ダービーに続いてファイナル3号艇以内を決定づけた。あのときと同じ3号艇なのか、さらに内枠なのか、書いている現時点ではわからない。
今日の1着で少し気になったのは1周2マークか。独走状態に持ち込むはずの要所でターンマークを外し、さらに尻もちをつくような鈍さがあり、出口の一瞬だけ後続に肉薄された。本人が初日から口にしている「出足の重さ、弱さ」がまだ残っていたか。明日も枠番によって調整を変えるだろうが、現状は【出B+・直A】で据え置きか。これでも、【出B+・直B+】だったダービーより少なくともストレートは強めと鑑定している。
2着は5コースから猛烈なまくり差しを見舞った拡郎で決まり、かと思えた。が、スタートで凹んだ翼がバック最内から伸び返し、マイシロのない切り返しで拡郎の舳先をかすめた。冷静に開いて差して、2番手を確保する拡郎。が、この攻防で2艇の差が一気に詰まる。
さらに、2周ホームで外の翼がじわり伸びって圧迫する。チルト0.5に跳ねた効果か。拡郎は艇を合わせて自由な翼をもぎ取ろうとしたが、2周1マークの手前で舳先を突き出した翼がツケマイ一閃でファイナルへと羽ばたいた。この残酷な逆転劇をもたらした最大の要因は、明らかなパワー差だったと思う。明日、4~6号艇の翼はさらなるパワーの上積みを求めつつ、今日のスタート凹みの原因を追究してその憂いを解消すべきだろう。とりあえず、今日の見立ては【出A・直A】の据え置きにしておく。
W竜太の分厚い壁
11R
①中田竜太(埼玉)04
②峰 竜太(佐賀)06
③深谷知博(静岡)06
④石野貴之(大阪)12
⑤井口佳典(三重)18
⑥西山貴浩(福岡)22
圧倒的人気の竜太竜太で決まった。
予想欄でも書いたように、私はこのレースのキーマンは石野ただひとりと見ていた。深谷を越えたら一気の絞めまくりで波乱、越えなければ外からの脅威がゼロになって竜太竜太のドラゴン本命ライン。
自称・穴党の私は④-⑥のポンコツライン舟券を握りしめつつスタートだけに全集中したのだが……石野は深谷の舳先を越えることはできなかった。特訓からチョイチョイやられていた深谷が、黙ってはいなかった。本番はコンマ06まで踏み込み、石野を半艇身ほど抑え込んだ。石野が湯川ならそれでも危うかったが、今節の石野にこのスタート差を逆転するだけの伸び足はない。深谷がカッチリ止めて、それで内3艇の優出争いに絞られた。
ダッシュ勢が止められている間に、まずは1号艇の竜太がカッチリ逃げきった。スタートも行ったし、展開も文句なしの逃げではあったが、2コースの竜太をまったく寄せつけない強い勝ちっぷり。レースタイムも10Rの桐生を1秒近く上回る1分49秒2。昼の桐生×中田の足合わせではターン回り~スリット裏の伸び足までぴったり一緒に見えたものだが、いざ実戦ではやはり中田19号機の方が強力だった気がしてならない。据え置きの【出A+・直A】。
注目の2着争いは2コースから差して届かなかった峰vs3コースから握った深谷の一騎討ち。外から半艇身ほど深谷が覗いたものの、内でマウントを取った峰が2マークを豪快にぶん回して深谷だけでなく西山&石野のポンコツ軍団も一気に蹴散らした。さすがのターンスピード!
ただ、出口で一気に中田に突き離されたこと、2マークの出口でも西山らに一瞬でも詰め寄られたことなどを考えると、やはり出足系統に大なり小なりの不安があると思うのだがどうだろうか。今日も【出B+・直A】の据え置きにしておきたい。たとえ峰本人が「出ている!」と叫んでも(笑)。
Wモンスター退治
12R
①池田浩二(愛知)05
②原田幸哉(長崎)07
③湯川浩司(大阪)10
④片岡雅裕(香川)06
⑤椎名 豊(群馬)10
⑥前田将太(福岡)12
本人は「ぜんぜんダメ」と泣きっぱなしだけど、あるいは池田浩二8号機はドリーム戦からずっと変わらずトップ級の抜群パワーだったのではないか。なんて思えるほど強い5日間であり、とりわけ今日の逃げっぷりがウルトラ強力に見えた。
お隣の2コースは戦前から断然エースと呼ばれた幸哉47号機。そのお隣には間違いなく節イチの伸び足を誇る湿気王子・湯川26号機、しかも3カド! 生きた心地がしないイン戦だったはずだ。
が、そんなピンチを吹き飛ばすような絶品スタートでわずかなアドバンテージを作り、ふたりに伸びられてその貯金を失うと、3コースから握った湯川を完璧なブロックで退け、そのままファイナル1号艇の花道を一気に突き進んだ。あとはもう、悠々の一人旅。
つまり、ちょい危うかったのは1マークまでの行き足だったわけだが、ボートレースは面白いもので「幸哉×湯川のふたりのトップ足が舳先を揃えたことによって、逆にふたりの攻めが遅れた」という幸運もあったはずだ。これがどっちかひとり(特に3カド湯川のみ)だったりしたら、もっと危ういイン戦になっていただろう。運も実力のうち、今節の池田浩二は私が見てきた限り、たったひとつのミスもたったひとつの不運もなく、このファイナル1号艇まで辿り着いた。
だからこそ、「池田8号機はドリームの猛時計から抜群パワーではないか」などと勘ぐっているわけだが、元より規格外で強すぎる天才レーサーなので、その真偽はいまだ判然としない。今日の私にできることは【出A・直A】という無難な評価を据え置くくらいだろうか。たとえ、11R中田竜太の今日イチ速い上りタイムを上回ったとしても……。
最後のファイナルチケットを奪い合う2着は死闘となった。エース47号機を操る幸哉vs渋い出足系統で凌いできた片岡42号機。機力的に鎧兜を装着した強い侍に野武士が竹槍で挑むようなミスマッチ感があるのだが、いざ実戦でもパワースケールの大きさは幸哉47号がはるかに上。先行する野武士を強烈なストレート足でぐいぐい追い込み、「いつでも叩き斬れるぞ!」みたいな恫喝とともににじり寄る。侍の強引な一太刀を、野武士がギリギリ交わして体を残す。それでもグイグイ追いすがる47号機は実に不気味だったが、最後は野武士・片岡が竹槍をズブリと侍の脇腹に突き刺して優出の権利を掴んだ(あくまで畠山のイメージですw)。直線は圧倒的な劣勢でも、ターン回りは互角以上だったのでマー君の今日は【出A+・直B+】としておきたい。
さてさて、12Rが終わってみれば、湯川&幸哉という今節のWスリットモンスターが揃って優勝戦リストから消え去っていた。この事象によって、いちばん得をするのは誰か。それは、言葉にするまでもないだろう。(photos/シギ―中尾、text/畠山)
12R優勝戦
①池田浩二(愛知)
②中田竜太(埼玉)
③桐生順平(埼玉)
④峰 竜太(佐賀)
⑤佐藤 翼(埼玉)
⑥片岡雅裕(香川)