BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――準優日であっても

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 2R、平尾崇典が転覆してしまった。岡山勢はリフト近辺に集合し、転覆艇が戻ってくるのを待つ。後の処理を行なうのは、同支部の仕事だ。いや、同支部だけではない。同地区の選手も、ここには駆けつける。今村豊、白井英治の山口勢だ。辻栄蔵は3R出走のため参加していないが、別のレースであったらその輪に加わっていただろう。

 転覆艇が陸に引き揚げられると、一斉に作業に取り掛かる。あ、よく見ると瓜生正義もいるではないか。瓜生は今月の選手班長。アクシデントに対処するのも班長の仕事である。

 

 

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 今村、白井、瓜生、茅原悠紀、吉田拡郎……この輪には準優組が5人もいるのだった。そう、こうした作業に先輩も後輩もA1もA2も準優も一般戦も関係ない。これがボートレーサー。なんたって、今村が率先して動き回っているのだから、まさしく「そういうもの」なのである。今日は準優組の多くが本格的に始動したのは3R後くらいだったが、彼らは調整に忙しい最中でも当たり前のように駆けつけるだろう。そして、仮に結果が出なかったとしても、この時間を言い訳にしようという発想など1ミリもないのである。

 

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 実は白井は早めに始動していた一人で、1R展示後には係留所でモーター音を響かせていた。このとき係留所にいた準優組は、秋山直之、井口佳典。秋山はマイポジションである係留所の端のほうで熱心に作業をしていた。「別にこだわりがあるわけじゃないんですけど、誰も使わない場所だろうなと思って」その場所を選択するのだそうだ。実際は、周囲に選手が少ないがゆえに精神統一の場にもなっているのではないかとも思う。

 その後は、先述したように3R後くらいから始動する選手が多かったので、しばらくの間はわりと静かなピットであった。レース後のエンジン吊りに選手がわらわらと集まってくるくらいで、準優組を見つけるのはなかなか大変なのであった。

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 エンジン吊りで目を惹いたのは毒島誠と齊藤仁のコンビ。仁ちゃんが毒島の腰を抱くようにして、耳元で何かを話していたのだ。内緒話をしているようでもあり、仁ちゃんが毒島に秘策を伝えているようでもあり。いずれにしても、毒島にとっては準優を前にして心強い先輩の気遣いのはずで、毒島の表情はかなり柔らかくなっていた。

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 表情がカタく見えたのは峰竜太。まあ、いつものことなので、気にする必要はないだろう。トークショーのイベントに出演のタレント・ユージさんがピットを訪れた際には、嬉しそうに記念撮影していたし。峰は大一番の前には外野にも伝わってくるほど緊張感をあらわにしているものだし、それが悪い結果につながっているとは思えない。むしろ、これが峰の勝負モードだと考えていいだろう。

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 峰以外の選手はみな、まだリラックスしているように見えた。予選トップの松井繁も同様。もっとも、予選トップの準優1号艇に王者が震えるなんてまるで考えられないし、実際にこれまでに何度も経験してきたこと。予選1位自体は「特に考えてなかった。そんなエンジンやなかったからね。昨日についても、タラレバというか、結果的に、ということやね」だそうだが、この人が予選1位になるとすべて狙ってもぎ取った感じがしてしまうのだから、さすがの王者である。

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 で、早い時間から昨日とまったく同じ動きをしていたのは、吉川元浩。していたのはゲージ擦りだ。ゲージ擦りも真剣な作業には違いないが、足に余裕がなければ取り掛かることのない作業でもある。準優日にもこれに没頭しているわけだから、もっとも不気味な存在ではないかと思う。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=中国勢、毒島&齊藤 TEXT/黒須田)