BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――目に留まるもの

 

 

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 ピットに入ってまず目についたのは、レイアウトが変わったことである。競技棟の構成もずいぶんと変わっていたが、ピット自体にも大きな変化があった。もっとも大きい変化は、プロペラ調整室、だろう。もともと浜名湖のペラ調整所は3カ所あって、ボートリフト右脇にあったペラ室と、その脇の一角を区切った屋外調整所と、整備室の奥のほうにあったペラ室がそれだったわけだが、それがボートリフト左脇に新設されたペラ室に統括された。そのペラ室の広いこと! たぶん、全国一の広さではないだろうか。しかも装着場から中の様子がよく見えて、以前のペラ室に生じていた死角もほとんどない。いや~、驚いた。かつては記念のたびに呼んでいただいており、訪れる回数は年間でもっとも多かった浜名湖だが、今回は一昨年笹川賞以来2年ぶりの参戦。その変化にはただただ驚かされた次第である。

 

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 可視性の高いペラ室ができたおかげで、選手の動きは把握しやすくなったような気がする。整備室の入口あたりで右、左ときょろきょろしているだけで、多くの選手の姿が視界に入る。特に前検日の今日は、動いている選手がたくさんいるから、首を左右に1往復しただけで、視界は選手でいっぱいになるわけである。

 たとえば、ペラ室の奥のほうにいる石川真二も、あっさりと見つかる。実は今日、石川の動きにはちょっと注目していたのだ。この春から、石川は福岡支部に移籍した。ということは、エンジン吊りでは愛知支部を離れて福岡支部の選手に駆けつけるはずなのである。1班であるドリーム組がスタート練習とタイム測定を終えて、ピットに戻る。2号艇に瓜生正義。石川は……もちろん瓜生のもとに駆け寄った。今までなら3号艇の池田浩二のもとに行っていたわけだが、今日は瓜生へ! まあ、当たり前のお話であって、別にどうってことないといえばそうなんだけど、なんだか今日はいいもの見たような気になった私である。それにしても福岡支部はまた陣容が厚くなったわけですね。

 

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 整備室に視線を戻すと、白井英治が懸命の整備をしていた。ドリーム組の記者会見で白井は、溜め息をつきっぱなしだった。「まったくダメです。スタートの足も悪いし、回ってからの足がまったくない。うーん、考えちゃいますね。イヤー、まだどうするかも決めてないですけど、ここまで悪いこともあんまりないですよ」。ここまで泣きのコメントに占められる会見も、あんまりない。というわけで、会見後の白井は速攻で整備室に飛び込み、整備を始めたというわけなのだ。明日は12R1回乗りだから、時間はたっぷりとある。にもかかわらず、すぐにでも整備を始めずにはいられなかったわけだから、白井がいかに絶望的な気分になったのかわかろうというもの。果たして24時間後までにどこまでパワーを引き上げられるか。その奮闘に期待しよう。

 

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 本体に手をつけている選手は、ふだんの前検に比べれば多めだろうか。今村暢孝も本体を割っていたし、平田忠則が工具でボルトを外している様子も目に入った。前検で本体整備といえば、まずは西島義則が思い浮かぶわけだが、他にはあまりお目にかかれないのも確かなこと。ペラと外回り(ギアケースやバルブ)というのが前検のセオリーのようなところがあるから、大掛かりな整備は目につきやすいのだ。他では、赤岩善生がキャブレターの整備をしていた。まあ、赤岩はいつだって、前検日から全力投球である。

 

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 整備ではないが、前検のピットでもっとも目についたシーンは、これに尽きる。

「太田和美が取材攻勢を受けている」

 今日の太田は、スタート練習&タイム測定のあとは、軽くペラ調整をして、その後は早々に着替えてエンジン吊りに参加するのみ、といった風情だったが、手のすいたらしい太田を確認するや、報道陣が殺到したのだ。

 理由はひとつ。「前人未到の同一SG3連覇なるか」。今節の太田には、まだ誰も成し遂げたことのない大記録が懸かっている。当然、これが最大の注目点だし、特に前検日にはその意気込みを誰もが知りたいわけだ。

 こっちで記者さんに囲まれていたかと思えば、次の瞬間にはやや離れたところで別の記者さんと話し込んでおり、さらに次の瞬間にはまた別の記者さんにコメントを求められる、といった感じ。一人でいる場面をまったくと言っていいほど見なかったのである。

「書きやすいとか、それで話題になるのなら、おおいに書いてもらって大丈夫です。僕自身がそれでブレることはないですから」

 BOATBoy6月号(絶賛発売中です!)の巻頭インタビューで、太田はそう語っている。話題の中心になっていることはまったくプレッシャーにはならないし、実際、今日の太田は実に自然体で過ごしていた。ならば、おおいに煽ろうではないか!

 というわけで、まずは明日、太田がどのように発進するかを楽しみにしたい。少なくとも、前検でジタバタしていないのは好材料。日曜日、歴史の証人になれることを期待しながら、一節間の太田に注目しよう。(PHOTO/中尾茂幸=今村、太田 黒須田=それ以外 TEXT/黒須田)