BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――厳しい表情

 

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 試運転を終えていったんピットに上がった松井繁に、岸恵子が駆け寄った。足合わせをしていたのだろうか。ピットにいたので水面を見ていなかったが、いずれにしてもこれはレアな組み合わせ。近況絶好調の岸なので、ここを優勝して来年のクラシック(総理杯)でまた見られるかもしれないが、これまでSGには縁のなかった岸だけに、これはチャレカ&レディチャレカならではの絡みである。そういえば、岸が王者ファンだという話を昔耳にしたような気がする。中尾カメラマン情報では、モーター抽選時、松井からSGカッパをプレゼントされた岸が乙女の笑顔を見せていたともいう。岸を王者パワーが後押しするかもしれないぞ! 今日のセンター戦が楽しみだ。

 

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 昨日も書いたとおり、こうした男女の絡みは今日もやはり稀で、たとえばやはりいったんピットにボートを上げた寺田千恵に三浦永理が駆け寄る、というシーンのほうが主流である。やはり足合わせは男同士、女同士が多いようである。ちなみに、寺田と三浦では、三浦のほうが圧倒的に表情は柔らかかった。寺田のほうはどうにも冴えない顔つきなのだ。初日ドリーム戦は1着かという展開だったのに、4着にズリ下がった。足的にはかなり厳しい様子だ。一方の三浦はドリーム6着も、機力的な手応えはそこまで悪くないということか。大敗を巻き返すだけの感触はあると、雰囲気だけ見れば思えてくる。

 

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 試運転後ではないが、1R後には平山智加と平高奈菜が、ボートリフトに隣り合わせて乗って、ボート上で深刻な表情をしつつ話し合っていた。1周2マーク、平山が平高に突っ込むかたちとなっていて、平高は1マークでは魚谷香織を差していながら、5着まで後退。平山が不良航法をとられるかたちとなっている。おそらく、平山が平高に詫びたのだろう。同郷の新人王コンビ(過去、女子が最優秀新人を受賞したのは2回のみで、それがこの二人)はもちろん仲は非常にいいが、レースでは激しくやり合うし、わだかまりがあるわけではない。それでも、後味の悪いレースになってしまえば、やはり笑ってレースを振り返るわけにはいかない。もっとも、ヘルメットをとった平高は、むしろ自分を責めるように苦笑いを浮かべていた。そうして自分と向き合える平高は、強いと思う。

 

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 ヘルメットをとったら苦笑いが浮かぶ……かと思ったら、まったく笑みがなかったのが濱野谷憲吾だ。2R、1号艇インコースで2着。もちろん必勝態勢のレースではあったはずで、2着はむしろ不本意な結果だろう。濱野谷といえば、敗戦後でもわりと淡々としているというイメージが強い。そして、微苦笑を浮かべていることも多いと思う。悔しさをあらわにするところをほとんど見たことがなく、だからあの10年賞金王優勝戦での硬直し切った表情には胸を打たれた。で、今日もやはり微苦笑なのかな、と思ったらそうではなかったので、濱野谷の今節に懸ける思いを改めて感じた次第だ(その後、石渡鉄兵に話しかけられたら、かなり歪んだ微笑が見られましたが)。

 やっぱり、地元グランプリ出場への切望が確実にこの人のなかにある。それをわかりやすいかたちで見ることができたのは、やはり嬉しいことだ。スマートな濱野谷はもちろんカッコいいが、たまには泥臭く戦う濱野谷憲吾であってもいいと思う。さて、この悔しさがこれからのレースにどう反映していくのか。なんとも楽しみになってきた。

 

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 グランプリへの思いが強いのは、田村隆信も同様である。ピットにぼーっと突っ立っていたら、プロペラを外している田村に声をかけられたので駆け寄り、そこでその思いを聞かせてもらった次第だ。いや、田村自身は「グランプリに出たい」とは一言も言わなかった。なんとしても頑張る、とも言わなかった。ただ、僕に投げかけてきた言葉の意味は、ようするにそういうことだった。たとえば、「編集長から見て、僕は大丈夫そうですか?」とか。こっちは馬鹿正直に、ランキング的にはあとひと頑張り、みたいな返し方をしてしまったのだが、田村が求めていたのはそういう言葉ではなかっただろう。

 開会式で、「今節は楽しみたいと思わない。しっかり苦しんで帰りたい」と言った。足はいいだけに、「実際はそこまで苦しんでないですけどね」と田村は笑ったが、機力に関してはそうでも、精神的にはしっかり苦しんでいると僕は思った。そして、そういうメンタリティになるほどに本気でグランプリ出場を切望しているのだと、確信した次第だ。

 個人的にも、ぜひ出てほしい一人です、田村は。100%グランプリをより面白くしてくれる存在だから。というわけで、濱野谷、石渡、鎌田の肩入れトリオに田村を加えて、肩入れカルテットとさせていただきます。がんばれ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)