BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――リベンジを!

 

 SGグランドチャンピオンの選考基準は「SG優出完走者」「SG予選得点上位者」。前年度覇者やグランプリ優出者、直近SG覇者(グラチャンの場合はオールスター)に優先出場権が与えられるのは他のSGと同じ。選考期間は前年4月1日~3月31日まで。つまり、このクラシックが選考期間最後の対象レースなのである。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150204j:plain

 今年のグラチャンは宮島で開催される。実に13年ぶりのSG開催だ。広島支部にとっては石にかじりついてでも出場したい!というのが心情であろう。現在、当確者は辻栄蔵のみ。山口剛もほぼ大丈夫だろう。現在の広島ツートップとも言うべき2人を送り込めるのは、まあ一安心ではある。だが、できればその人数を増やしたい、というのも広島支部の念願であろう。今節、その広島支部からは4名が参戦している。

 前本泰和はボーダーの少し上で、ポイントをしっかり稼いでいけば、そのまま逃げ切れるといった位置。もちろん予断は許さない状況でもあって、それだけに今日の1着は大きかった。絶対に負けられない1号艇をクリアしたのだから、気分的にも乗って明日以降に臨めるはずだ。まあ、ピットではとにかく淡々としている前本だけに、雰囲気は何も違っていないのであるが。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150219j:plain

 上平真二は不運だった。7R、転覆した今垣光太郎に乗り上げてしまったのだ。これでエンスト失格となり、よもやの0点発進。上平はポイント的には、ほぼ優出しかグラチャン行きのチャンスはないという状況。それだけに、この3号艇はポイントを稼いでおきたかったところだが、痛い痛いエンスト失格である。まあ、上平もピットではとにかく淡々としているので、その後も普段通りに作業をしていたのであるが。明日からの巻き返しに燃えてもらいたいところだ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150240j:plain

 もう一人、市川哲也も優出条件と言っていい。それだけに気合は満点。2号艇で登場した4Rでは、前付けの深川真二を2コースに入れて、自身は3カド勝負! 4着に敗れているが、地元グラチャンへの思いを存分に表現したと言えるだろう。11Rも当然、気合の入る一戦だった。4号艇。4カド発進。持ち前のスタート力を活かして攻めたいところだった。しかし、その前のレースでフライングが出ていたことが影響したか。スタートタイミングはコンマ22。見せ場をほとんど作ることもできず、6着に大敗してしまった。これはなんとも痛いシンガリ負けである。

 初日を終えて苦しい状況となったことで、レース後の市川の表情は当然冴えない。固まった顔つきのまま、時折頬を膨らませて「ふーーっ」と強く息を吐き出している。苦笑いさえも浮かばない、落胆の表情。胸中には暗雲が立ち込めているのは間違いないようだった。

 上平も市川も、あと海野ゆかりも(6着スタート。レース後はピットでの様子はほとんど見かけることができませんでした。見逃し失礼!)もちろん望みが断たれたわけではない。ならば、明日からはさらに気迫の勝負駆けを繰り広げるのではないか。市川は1号艇が回ってくる! 上平は4号艇と6号艇、外枠だが、だからこそ前付けも含めた渾身の勝負を見せるかも! 海野は2号艇と好枠だ。いずれにしても、広島支部から目を離してはならない。単なる地元SGではない、久々の地元SGに懸ける思いは相当に強いのだ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150308j:plain

 上平のところで書いたように、今垣光太郎が7Rで転覆した。上平が乗り上げるという危険なシーンがあり、容態が案じられたが、ひとまず元気です。転覆整備も行なっており、どこかを痛そうにしている様子は見えなかった。ただ、表情は元気がなかった。当然か。その転覆では選手責任&不良航法で12点の減点を喫してしまったのだ。24場優勝を目指して乗り込んだ尼崎、その目標はかなり遠くなってしまったと言わざるをえない。もちろんそれでも闘志を萎えさせるような人ではないが、今日はやはり落胆が大きいだろう。明日は1号艇が回ってくるだけに、きっちり切り替えて明日を迎えてほしい。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150330j:plain

 10Rでは瓜生正義がフライングを切ってしまった。今期2本目、である。これでグラチャンとオーシャンがアウトとなりそう。初日にして優勝戦線から離脱し、またグランプリロードでもビハインドを抱えてしまったことになる。

 そんな状況でも、律儀に他5人に頭を下げて回っているあたりが瓜生らしかった。悔しいに決まっているのだが、それを押し隠して、周囲に気遣うわけである。明日からはさすがにスタート慎重となるだろうが、そんななかでも瓜生らしいレース、瓜生らしいふるまい(ポジティブな)を見せてほしい。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150345j:plain

 さて、市川が悔しい思いをした11R、もう一人、とことん悔恨を背負ってしまった男がいる。桐生順平だ。

 間違いなく畠山も書いていると思うが、2番手争いが「ニュージェネレーション対決」となった。現在、そのスピードターンが大きな話題となっているのが、桐生、毒島誠、茅原悠紀。そのうちの桐生と茅原が2番手争いを演じたのだ。先行したのは桐生。茅原が追いかけるかたちとなっていたが、2周2マークで茅原が逆転。桐生は3着に敗れている。これは悔しい。相手が、最大限に認めている茅原だからこそ、悔しさは大きくなるのが当然だ。そういえば、昨年チャレンジカップでやはり茅原と2番手争いを演じ、最後は敗れた毒島も、レース後にはめちゃ悔しがってたっけ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218150503j:plain

 レース後の感想戦では、やはり桐生と茅原はかなり長く話し込んでいた。真っ向から剣を交えたこと自体は、お互いにとって充実感をもたらすものだっただろう。たぶん、二人にしか理解できない言葉もあったはずだ。もし僕がそこに紛れ込んでいたら、話の難易度が高すぎて、息苦しくなっていたと思う。

 だから、話している間、二人の表情は穏やかだった。笑みも浮かんだ。そして楽しそうだった。2番手争いとはいえ、お互いに力を尽くす場面が生まれたことに、ちょっとした興奮もあっただろう。

 ところが、桐生は会話を終えて茅原に背を向けた瞬間に、顔がすーっと真顔になった。いや、不機嫌な表情になった、と言うべきだ。あそこまで一瞬に、負けたことに対しての本音があらわれるとは、いかに悔恨が巨大だったかの証明である。一言、痺れた。

 いやあ、次の茅原vs桐生がめちゃくちゃ楽しみになったなあ。いったいどこで、この雪辱戦が見られるだろう。もしかして、今節中かも!? 茅原vs桐生、あるいは茅原vs毒島、毒島vs桐生は、今のボート界におけるゴールデンカードである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)