BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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宮島グラチャン 優勝戦私的回顧

COOOOL!!

 

12R優勝戦

①山崎智也(群馬)13

②峰 竜太(佐賀)10

③松井 繁(大阪)11

④深川真二(佐賀)14

⑤辻 栄蔵(広島)18

⑥中島孝平(福井)22

 

 

 

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 智也、SG2連覇、おめでとう!

「男は40を過ぎてから」

 かつてこう言ったのは王者・松井繁だが、いま41歳の山崎智也がその言葉の正しさを水上で立証している。不惑を超えてから強いわ強いわ。去年の3月11日(40歳の誕生日)からGI6V、SG2V。2カ月に1Vの超ハイペースで大レースを獲り続けているのだ。

 今日の智也も、呆れるほど強かった。何よりもそれを感じるのは、コンマ13という絶妙なスタートタイミングだ。別にゼロ台でもないし、トップスタートでもない。だが、この過不足のない数字が、そのまま41歳の智也の充実ぶりだと思う。

 

 

 

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 ひょっとしたら、智也はドカッと遅れるのではないか。

 昨日の夜から、私はそんなことを考えていた。いや、智也が1号艇のときはいつも頭をよぎるのだが(笑)、今回の優勝戦はとりわけそんな予感がした。ここは宮島……13年前のグラチャン優勝戦で1・2号艇がフライングに散り、24億円強という史上最高額の返還金を記録した。で、それ以来のSGなのである。そのレースに智也はいなかったが、事の大きさは一選手として知らないわけがない。当時の宮島関係者の悲嘆ぶりも、今回のグラチャンに懸ける意気込みも、推して知るべし、だろう。

 そして、智也自身も14年前の賞金王ファイナル(5号艇)で+コンマ05、今で言う“非常識な”フライングをやらかしてしまった。厳罰も含めて、1年以上もその禍根に苦しめられたと思う。はるか昔の出来事とはいえ、時を前後して起こったこの惨事が智也の潜在意識に何らかの影響を与えるのではないか。

 絶対にフライングだけは切れない。

 無意識下の意識が、智也の握るレバーを遅らせるのではないか。そんなことを勝手に考えていた。実際、2年ほど前までの智也は、インコースでズコッと遅れることも少なくなかったし。トラウマなどの心の傷は、無意識の中に蓄積されるから救いでもあり、場合によっては厄介でもあるのだ。

 

 

 

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 だが、今日の智也はそんな私の“下衆の勘ぐり”を、厳島神社のはるか向こうまで吹き飛ばした。早すぎず、遅すぎずのコンマ13。実にクールなスタートだった。そして、SGを連覇するのに十分な時計でもあった。コンマ10の峰竜太(これが09だったら、節間すべてコンマゼロ台だった。惜しい!)にも慌てず騒がずぐいぐい伸び返す。さらに、ツケマイに出ようとした峰に対し、わずかに外に艇を降って牽制した。そのワンアクションで、峰の勢いはしぼんだ。4カドの同期・深川真二にも、智也を脅かすだけの伸び足はなかった。1マークを回って、智也の連覇はほぼ決まった。クールなスタート、クールなインモンキー、クールなSG連覇。

「年を取ってから、大レースの1号艇のプレッシャーを楽しめるようになった」

 大村オールスターでも、今日の優勝戦でも同じ言葉を口にした。“不惑”とはよく言ったものだ。40歳を過ぎたあたりから、智也はそれまでとは違う境地に達したのだろう。それが単に年齢に拠るものか、何かしらの直截的な原因があったのかはわからないけれど。うん、今日の優勝は、いつもの「カッコイイ」より「クール」という言葉が似合う優勝だったな。どっちも同じような意味だけど。

 

 

 

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 敗者について触れるなら、やはり辻栄蔵か。13年ぶりの地元SGで、優出3着。初日から頑張って頑張っての3着だったが、本人には悔しさだけが残ったことだろう。

「この宮島には、13年前に置き忘れたものがあります。その忘れ物を取り戻しにきました」

 

 

 

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 開会式で山口剛が言ったセリフは、もちろん地元4選手の総意であり、「我々広島支部が優勝がする」という宣言でもあった。それを成し遂げられなかった、という思いは栄蔵も含めた4人全員の心に重く残ったかもしれない。ただ、地元選手の優勝ではなかったが、宮島ボートそのものはしっかりと13年前の忘れ物を取り戻すことができたと思う。優勝戦を全うし、売上の目標額を1億円ほど上回ることができた。関係者の安堵と喜びはどれほどのものか。今日、宮島の関係者は智也と同じくらい美味しい酒をガブ呑みすることだろう。いや、智也よりはるかに上か。明日人間ドックに行く智也は、今晩は一滴も飲めないのだから(笑)。41歳の身体をしっかり労わり、SG3連覇を目指すべく三国に向かってもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)