１Ｒ、前本泰和が１着。トライアル１ｓｔ敗退の鬱憤を少しは晴らすことができただろうか。勝ってもあまり表情を変えない人だから、レース後の様子からそのあたりをうかがうのは難しいが、負けられないイン戦であったのは間違いない。エンジン吊りには白井英治、寺田祥が参加。本来ならこの人たちと戦うはずだったのに。そんなふうに見てしまうのは、外野の勝手な感傷というものだろうか。
２Ｒ終了後のことだ。湯川浩司のエンジン吊りを終えて控室に戻ろうとした松井繁が、ふと足を止めて、水面を見つめた。松井が見たほうに視線を向けると、３Ｒ５号艇の魚谷智之が前付けしていた。スタート展示から動きを見せたのだ。魚谷はそれほど前付けを見せるタイプではない。それが、敢然と動いて２コースを奪った。トライアルで減点があった魚谷は、得点的にシリーズでも下位であり、新たな戦いを苦境のなかで迎えている。この前付けは、やはりグランプリ組のプライドだろうか。それともそれもまた外野の勝手な思い込みだろうか。
冷静に眺めてみれば、トライアルからシリーズに回った選手たちは、昨日までと変わらずに作業などに励んでいるように見える。昨日のレース後には激しい落胆を見せていた田中信一郎も、粛々と調整を進め、今日からの戦いに全力を尽くしていると映る。その様子から心中を察するのはやはり難しいが、シリーズに回ればシリーズで全力を尽くすという思いではあるだろう。地元で気落ちしたレースを見せるはずもない。
篠崎仁志、深川真二も今日も変わらず淡々と作業を進める。深川は、ＳＧだろうと一般戦だろうと何も変わらない、と言った。ならばグランプリだろうとシリーズだろうと、ただただ勝ちたいという思いに変わりはない。篠崎だって、同じはずだ。意地がないはずはないが、それが極端に雰囲気や作業などに反映するはずがない。
２Ｒ、中田竜太が６着大敗。トライアルも含めて、大きな着順が並んでいる。レース後はやはり表情がなくなっており、このリズムの悪さに呆然としている様子が見て取れた。中田の初グランプリは、ただただ苦い思い出になってしまうのか。これが糧になる、などといえば軽薄な物言いになってしまうかもしれないが、この流れを何としても断ち切って、来年に向けての力強い一歩にしてほしい。中田も含めて、トライアルからシリーズに移行した選手は今のところ、今節もっともツラい思いを味わった者たちである。残り４日間、声援を送らずにはいられない。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
