BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆けの状況

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 選手は勝負駆けの細かな条件について、完全には把握せずにレースに臨んでいるもの。大まかに「6・00」という目安を持ってはいるが、6・00でも準優に乗れないこともあれば、6・00に届かずとも準優に乗れることはある。
 11R終了時点で18位だったのは吉川元浩。得点率は5・83だった。もちろん、これはまだまだ微妙なラインではある。同時に、吉川はその順位にいるとはわかっていないようだった。JLCの準優展望インタビューを“保険”で収録はしたものの、呼ばれるまでインタビューを受けることがあるとは思ってもいない雰囲気だった。

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 レースを終えている吉川ですらそうなのだから、12Rを走った角谷健吾が詳細な状況を知ろうはずがない。わかっているのは、2着以上なら6点をオーバーし、3着なら6点を切るということ。結果、角谷は3着。2着で6点に到達した倉谷和信と並んで戻ってきた角谷は、自分が結局何位で予選を終えたのか、明らかに知らないようだった。倉谷とともに報道陣に問いかけると、18位! 倉谷がニカッと笑って、角谷の背中を叩く。やったやないか! 我々は資料を手にしているので、彼らが陸に帰ってくる前にその事実を把握している。だから実は、「予選突破した二人のツーショット」とわかっていたのであった。
 残念ながら、吉川はこの結果を受けて次点となった。6点に届いていないのだから仕方ない、ということも言っていたようだから、落胆があったとするなら思うようにポイントを重ねられなかったこの4日間に対するものだろう。

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 1位争いのほうはどうだっただろう。まず10Rで今村豊が1着。8・33で予選を終えている。今村が予選トップ通過を果たすには、11Rで野添貴裕が4着以下、12Rで田中信一郎が2着以下。今村は、レース後もさまざまな人たちと楽しそうに会話を交わしまくっていたので、そのときにどこかで耳にした可能性はあるな。まあ、トップを狙える上位勢は数少ないから、それぞれの得点を計算すればある程度は把握できるかも。

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 11Rで野添が5着に敗れた。これで得点率は7・60。これでトップ争いからは脱落してしまっている。そのレースでは渡邉英児が勝って8・00にまで押し上げたので、1号艇の可能性も降下してしまっている。野添はそれをある程度は把握していたようで、これは12Rが終わったあとのことだが、黒の艇旗と2の艇番を手に自身のボートへと向かっている。ただ、やはり正確な状況はわかってはいなかったのだろう。ボートに辿り着く前に踵を返して報道陣のもとに歩み寄り、「2でええの?」と確認もしている。結局、選手は得点を計算しながら走るというよりは、ただ勝ちたい、あるいは一つでも上の着順を獲りたいというのが、まず優先されるということだろう。A1勝負駆けだのダービー勝負駆けだのってことになると、また別かもしれないが、それにしたって順位を意識して走るわけでもあるまい。

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 12Rで田中信一郎が快勝。得点率は8・33で今村と同率だが、上位着順の差(ともに3勝で、2着は田中が2回、今村が1回)で田中のトップが決まった。田中がこれを知っていたかどうかはやっぱりわからない。というより、田中はエンジン吊りをキビキビと終えると、カポック姿のまま勝利者インタビューに直行、走って戻ってくると展望インタビューもあっという間にこなしているのだ。ようするに、帰宿便を自分のために遅らせてしまって、他の選手を待たせたくない、という心遣いか。ともあれ、堂々の予選トップだ! 予選最終日を逃げてトップ通過→準優も逃げ切り→優勝戦も逃げ切りという、黄金ラインにひとまず乗っかった。名人位に最も近いポジションを、田中は手に入れたのである。

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 勝負駆け実らずの選手で、とりわけ印象に残ったのは前本泰和だった。11Rは1号艇。逃げればもちろん準優行きで、2着でも6・00。ところが3着で5・67という得点率で終わってしまったのだった。さすがにこれでは予選突破は難しいと理解しただろう。いや、12Rの結果次第では滑り込みの可能性はあったのだが、やはりそこまで考えてレースに臨んでいたはずはなく、エンジン吊りを終えてヘルメットを脱いだ時には無念があらわになった顔がそこにはあったのだった。さらに大きく息を吸い込んで頬を膨らませ、思い切り吐き出す。溜息というには強すぎるようにも思うが、しかしやはりこれは溜息であろう。今年は早くもGⅠ2V、今節もドリーム発進。しかも昨年のグランプリメンバー。明らかに格上の一人として参戦したことを思えば、不本意な結末だろう。前節のからつ周年での“勇み足”の雪辱を、という思いもあったとするならなおさらだ。前本はしばしGⅠロードからは離脱することになるわけだが、SGの出場権は消えない。この雪辱は、そしてグランプリロードへの積み上げは、SG戦線で果たしてもらいたい。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)