BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル最終戦ダイジェスト

緑の魔術師

11R  並び順
①土屋智則(群馬)21
②毒島 誠(群馬)17
③峰 竜太(佐賀)17
⑥茅原悠紀(岡山)25
④定松勇樹(佐賀)22
⑤上條暢嵩(大阪)34

 インコース10連勝の生ぬるい住之江水面が、いきなり業火で煮えたぎる鉄火場に変貌した。引火したのは、もっとも人気薄の6号艇・茅原。最近の必殺技である「バナレ飛び」が、このギリギリの正念場で炸裂した。すぐに絞め込んで上條~定松まで呑み込む。必死に抵抗したふたりはガッツリ水をもらったり、茅原の艇尾を突いてみたり、そんな光景そのものが修羅場でもあった。

 これがグランプリ、これがトライアルの最終バトルだ。
 荒れたのは進入争いだけではない。インの土屋が外2艇より立ち遅れ、峰の猛烈なまくりをブロックしている間に、誰かしらに最内を差し抜かれた。

 これまた茅原!
 茅原のスタートも遅れ気味だったが、展開を鋭くえぐる二番差し一閃。つまりは絶望的な6号艇から自力で4コースをもぎ取り、そのコースの利を最大限に生かしきって先頭まで躍り出たわけだ。今節、5号艇も6号艇も勝っていない水面で、文句なしに節イチの超ファインプレー。

 いや、手放しで称賛するには早すぎる。1周2マーク、バックでマウントを取られた土屋が凄まじいツケマイで茅原を再逆転した。なんだこのド迫力は! 渾身の強ツケマイで1艇身ほど抜け出した土屋だったが、今度は茅原が内から舳先を突っ込む。1周バックでもこの2周ホームでも伸び足は茅原が優勢で、その差が勝敗を分けたと見ていいだろう。

 2周1マーク、再びマウントを奪った茅原が先制し、逆に土屋は峰に接触する形でケリがついた。こう言っちゃなんだが、それまでのシリーズ戦とは別次元の激闘だった。
 もちろん、茅原を信じてアタマ勝負で的中したファンは、生涯忘れられない特別なメモリアルレースになることだろう。茅原も茅原ファンも、ファイナル当確&500倍超の配当、おめでとさん!!

 勝った茅原はでっかい10ポイントを加算してトータル25点。ファイナルへの当確ランプを点した。しかもセンター枠が見込めるポイントだ。2着に敗れた土屋は「1着のない21点」で苦しい12Rの結果待ち。3着の毒島は26点で暫定トップに立つとともに、【12Rの馬場が4着以下ならファイナル1号艇】という条件付きのチャンスも受け取った。4着の峰と6着の上條はほぼほぼアウト。5着の定松は土屋よりも強い21点で12Rの結果を待つ身となった。

魔の2マーク

12R
①桐生順平(埼玉)12
②平本真之(愛知)15
③関 浩哉(群馬)17
④馬場貴也(滋賀)13
⑤池田浩二(愛知)10
⑥菊地孝平(静岡)15

 推定8mとかいう天気予報の賑やかな風雲はいったいどこへ行ってしまったのか……絶好のコンディションで最終バトルははじまった。
 11Rの茅原とは裏腹に、平本のピット離れが不安視されていた(スタート展示でもやや凹みで3コースに)が、いざ本番はスッと飛び出して2コースへ。そのまま穏やかな枠なり3対3で落ち着いた。

 この水面環境でこの最終隊形となれば、さすがにコースの利がモノを言う。ほぼ横一線に近いスリット隊形から、人気の桐生が天才肌のインモンキーでしっかり押しきり、トータル25点でファイナル好枠を決め込んだ。さすがの底力。

 2着は5コースの外から外へ、大きな放物線を描いて強豪を抜き去った池田! 内の艇が競り合った展開の利もわずかにあったが、あれだけ大回りをしながら最短距離で旋回した桐生の背中にするする取りついたのだから恐れ入る。やっとエース62号機の片鱗を見せつけた、と言っていいだろう。明日も同じ5号艇からどんなパワー&テクを披露してくれるのか。この3日間はすべて外マイを選んだ池田が、明日はついに引き波に舳先をブッ込む戦術を選ぶ気がするのだが、どうだろうか。

 そして、今年のV戦線のハイライトになりうるのが3着争いだ。1周バックではしっかりと馬場が必要十分条件の3番手を確保していた。このまま3着で流れ込めば、ファイナル1号艇が確定。4着以下なら毒島にその座を明け渡す。おそらく、馬場本人もその重要な数字を念頭に置いていただろう。

 雌雄を決する1周2マークでそれは起きた。昨日まで軽快な回り足を見せていた馬場56号機が2本の太い引き波に吸い込まれるように振り込み、キャビテーション。あっという間に5番手に滑り落ちた。その後の追い上げも利かず、5着=トータル24点でフィニッシュ。魔の2マークでファイナル1号艇から4号艇に陥落した、と表現していいだろう。私の脳裏には「弘法も筆の誤り」という言葉が浮かんだが、おそらく調整にズレがあっての振り込みだった気がしてならない。

 そして、馬場にとっての魔の2マークは、バック4番手だった関にとって幸運の2マークとなった。3着浮上でトータル21点。11Rの定松、土屋と同じポイントながら、1・3・6着という強い着順でギリギリ6位に滑り込んだ。今年もまた、ボーダー21点近辺の戦士たちは、ボートレース界でもっとも残酷な天国と地獄に振り分けられた。(photos/シギ―中尾、text/畠山)

 遅ればせながら、過酷なサバイバル戦を生き抜いたファイナル6PITをアップしておこう。

12Rグランプリ優勝戦
①毒島 誠(群馬)
②桐生順平(埼玉)
③茅原悠紀(岡山)
④馬場貴也(滋賀)
⑤池田浩二(愛知)
⑥関 浩哉(群馬)