BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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丸亀メモリアル 準優ダイジェスト

嵐を生む男

9R 並び順
①笠原 亮(静岡)15
②萩原秀人(福井)20
③西山貴浩(福岡)21
④峰 竜太(佐賀)11
⑥湯川浩司(大阪)09
⑤片岡雅裕(香川)06

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 やはりと言うべきか……イン逃げ8連発の丸亀水面に大波乱を巻き起こしたのは、4コースの峰だった。スリット隊形は御覧のとおり外コースの天下。「覗いたら絞める」をモットー(戦術というより身体が勝手に動くのだろう)とする峰は、すぐさま舳先を左に傾けた。3コースの西山はほぼ死に体だったから、無謀な仕掛けではない。そのまま伸びなりに萩原まで呑み込めば、まくりorまくり差しで優出を決めた可能性は高い。

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 が、直後に不慮のアクシデントが起こる。舳先ひとつで抵抗する西山を絞めきった瞬間、(おそらく)その舳先が峰のプロペラかモーターに追突した。西山の艇は不自然な方向に飛び、同時に峰の艇もそこで一気に推進力を失った。そして、もたれるように萩原に接触して不利を与えた(不良航法及びエンジン不調)。峰の名誉のために繰り返すが、峰の攻撃に落ち度はなかった。偶発的な接触によって他艇と自艇に被害が生じた。私はそう解釈している。

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 3艇が玉突き状態で失速する中、峰を飛び越えてアタマまで突き抜けたのが5コースの湯川だった。展開の勝利ではあったが、マーク差し態勢から内3艇のアクシデントを見てすぐに握りマイに切り替えたのは流石。判断が少しでも遅れていればイン笠原には届かず、さらに片岡にも差されていただろう。

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 惜しかったのはその片岡だ。渾身の差しは1マークに接触して湯川には届かなかったものの、その後の伸び足は迫力があった。1周2マークの手前、その勢いのまま突進気味に先マイしようとした片岡はそれを断念、スッと減速した。成功したかどうかは微妙だが、片岡にとってはそこでの先マイ攻撃が唯一の優出チャンスだった。一か八か、行ってみる価値はあったと思う。

素晴らしきぶち込み

10R 並び順
①井口佳典(三重) 09
②篠崎仁志(福岡) 12
⑥松井 繁(大阪) 16
④菊地孝平(静岡) 14
③秋山直之(群馬) 13
⑤濱野谷憲吾(東京)12

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 敗者戦はほぼオール枠なり(一度だけ5・6が入れ替わり)で、1号艇が楽インから8連勝。正直、気の抜けたコーラのようなレースが続いたが、準優はすべて進入がもつれた。特にスロー勢が深くなったのがこのレースだ。もちろん、仕掛け人は王者・松井。オレンジブイをほぼ全速のモンキーターンで旋回してそのままホーム水域に侵入。枠番を主張する井口、篠崎もやむなく早めに2マークを跨いだ。

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 その3艇の外から、スローながらもじわり助走距離を取る韋駄天・菊地。関東もんらしく颯爽とダッシュに構える秋山、濱野谷。様々な波乱が想定できる、実に不気味な進入隊形が出来上がった。しかも、内3艇の起こしは90m前後!!

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 が、いざスリットに到達したらば、御覧のスタートタイミング。見事な集中力で横一線のラインが誕生し、そこからゴキゲンな行き足で抜け出した井口が豪快に1マークを先制した。2コース篠崎の差しハンドルも的確。コースの利を生かした内2艇が力強く抜け出し、井口が篠崎の舳先を封じてファイナルの2号艇以内を決定づけた。2着もそのまま篠崎。今日の丸亀は1-2が8本に及んだが、ピットアウトの激戦を踏まえていうなら、この10Rがもっともスリリングな1-2だった。90m起こしでゼロ台までぶち込んだ井口に拍手、拍手。

無敵モード

11R
①毒島 誠(群馬)09
②柳沢 一(愛知)12
⑤重成一人(香川)11
③山口裕二(長崎)11
④茅原悠紀(岡山)15
⑥山田康二(佐賀)14

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 最後の準優もピットアウトから1艇が動いた。5号艇の重成。通常は5コース選択が多い重成だけに「枠なりか」と踏んでいたのだが、やはり地元の気合がそうさせたのだろう。ただ、こちらは他の面々と息が合って、やや穏やかな3コース奪取。すんなり125/346の並びが固定し、スロー勢は余裕を持って舳先をスタート方面に向けた。

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 12秒針が回って、イン毒島の起こしは110m。そして、スタートは上記の通り。このスリット隊形で、絶好調の毒島が取りこぼすはずもない。余力たっぷりにターンマークを先取りし、柳沢の差しをまったく寄せつけずにSG連覇のポールポジションを確定させた。

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 2着も行った行ったで柳沢。このレースの2着争いはもっともつれると思っていたのだが、柳沢の冷静的確な差しハンドルが後続を寄せつけなかった。今日の穏やかな丸亀水面は、よほど1-2に向いていたのだろう。インコースが11勝、2着1回。1号艇のパーフェクトを阻んだ“立役者”は、先に書いたように峰竜太のアクシデントだった。うーーーん、どうしていつもこの男なのだろう。

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 さてさて、優勝戦を踏まえて圧倒的V候補・毒島のパワー評価を少々。昨日までの毒島57号機の見立ては「出足系統主体に上位の下あたり」だった。が、今日の足は「上位のど真ん中」か。一人旅のレースからは判別不能だが、走破タイムがパワーアップを暗示している。昨日まで5連勝のベストタイムが1分49秒9(昨日までの5位タイ)で、今日のそれが1分48秒8(節間トップ)。
 毒島は常にタイムトライアルというか全力疾走なので、艇界でいちばん時計とパワーが連動する男だっと思っている。昨日までは5勝もしながら5位。今日一発で1秒以上短縮して節間トップ。もちろん今節初のベタ水面だからタイム更新は当然なのだが、5位→1位はパワーアップと推定していいだろう。

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 昨日、私は「最近の毒島には死角らしい死角が見当たらない」と書いたが、そこに機力アップというオプションまで付いてしまっては、まさに鬼に金棒状態だな。外枠に松井や重成もいない優勝戦だし……ただ、総合的なパワー評価では「行き足を主武器とする井口の方が上」と思っている。それから伸び仕様に仕上げたときの湯川、笠原のストレート足も、おそらく毒島のそれを凌駕するだろう。重箱を突くようなレベルだが、そのあたりが微かな死角ではないだろうか。それから、ほとんどありえないけれど、本番レースだけの湯川の3カドや井口の2カド!も頭の片隅に留めておきたい(笑)。
(text/畠山、photos/シギー中尾)