●11R
ピットにあがった瞬間、笑顔がこぼれた。平山智加だ。2コースからの差しで快勝! 出迎えた山川美由紀に祝福されると、嬉しくてたまらないといった表情で勝利を喜び合った。1着ももちろん会心だが、ファイナル行きを決定づける勝利だったのだから、喜びも倍増だろう。山川もシリーズで優出を決めており、明日の健闘を誓い合うふれあいにもなっていたことだろう。
4着ではあった。だが、大山千広は安堵していた。そう、これでファイナル行きが当確となったのだ。なにしろ、道中は6番手という場面もあったのだ。3周ホームでも、4番手争いの大外という不利な状況。3周1マークを気合の全速ターンで攻め、これで一気に4番手に浮上した。もっと上の着順が欲しかったに決まってはいるが、最低限の目標に到達する、会心の外マイだったわけだ。
その外マイに沈められる格好で6番手まで後退してしまったのが香川素子。結果論だが、もし5着でしのいでいれば……。6着で20点。ファイナル行きがほぼ消滅する、痛恨のシンガリ負けなのであった。原田佑実が泣きマネで香川を慰める。それが香川の心をほぐしたのか、それまでも苦笑いであった香川の表情が、やや弾けた。そして、思いきりをしかめた。まさに泣き笑いといった表情で、原田らと悔しさを癒し合っているのだった。
遠藤エミは3着。トライアルはすべて外枠から、時に猛然たる追い上げを見せながら、オール3着にまとめた。ボーダーの21点となったが、この時点では当確は出ていない。それを理解していたのだろう、遠藤はとにかく微妙な表情で苦笑いを浮かべるのみだった。
●12R
結果的に、遠藤はギリギリでファイナル行きとなった。田口節子が3着に敗れた時点で確定、だった。田口は2着なら21点、上位着順の差で遠藤を超えていた。それをおそらく把握していた田口は、ただただカタい表情で引き上げた。残念ではあるが、このレースでも必死の追い上げを見せたし、昨日の第2戦では6号艇で前付けに出て執念を見せた。胸の内に燃えるものをしっかり表現してみせたのだ。その健闘には拍手を送りたい。
ピットにあがった瞬間、笑顔がこぼれた。平高奈菜だ。2コースからの差しで快勝! 出迎えた平山智加に祝福されると、嬉しくてたまらないといった表情で勝利を喜び合った。1着ももちろん会心だが、ファイナル1号艇を決定づける勝利だったのだから、喜びも倍増だろう。平山も先に優出を決めており、明日の健闘を誓い合うふれあいにもなっていたことだろう。
……って、どこかですでに読んだ文章ですか? はい、コピペして選手名だけ変えました。つまり、11Rと同じようなシーンが、同じ香川支部の間で繰り広げられたのだ。平山は平高に両手の人差し指を立てて祝福(1号艇ってこと?)。平高も笑顔爆発でこれに応えた。なにしろ優勝戦1号艇なのだ。ついに念願だった女子のタイトルが現実味を伴った瞬間なのだ。どう繕おうとしたって、笑顔があふれることを止めることはできなかったに違いない。ボート洗浄のために(5日目なので、レース後は全員総出で洗剤を使ってボートを洗うのです)カポックと勝負服を脱いで装着場の片隅にそっと置いた平高は、一瞬だけ立ち尽くすように動きを止めた。それは、ティアラに最も近い位置に立てたことに対する感慨を味わっているようにも見えた。
ボート洗浄の最中から、小野生奈は平高に何かを話したがっているような様子を見せていた。洗浄が終わると、小野が平高に声をかける。スタートの話だ。小野はコンマ02、平高はコンマ01! 12Rのスタートの時間帯、追い風がさらに強くなっている。小野も平高も、スタートラインに舳先を向けたときから、その風に煽られ流されて、起こし位置が想定よりもかなり深くなってしまったようだ。それを振り返り合い、そして勇み足を免れたことを喜び合って笑う小野と平高。ともかく、小野もファイナル行き! そうそう、6号艇・遠藤は前付けも考えているとコメントしており、小野は「もし伸びがついたら、それを活かせる位置から」と前付けを入れてのカドも考慮に入れていると表明している。進入から注目!
もう一人のファイナル行きは、守屋美穂。2着だったらファイナル1号艇だったが、4着に敗れたことで2号艇となってしまっている。ボート洗浄の間、呆然としたような顔つきだった守屋。田口と話しながら控室へと引き上げる間も、眉間にシワが寄りまくっていた。それは4着に敗れた悔しさか、ファイナル1号艇を逃した悔しさか、その両方か。あるいは機力の感触についても? 守屋は去年のファイナルも2号艇だった。そして、スリットで覗く隊形となり、絶好の攻め展開が待っているように見えた。しかし、差しを選択したのが裏目に出て6着大敗。レース後、涙を流す守屋がいた。それをふまえて、明日は同じ色のカポックでどう戦うのか。何を見せるのか。秘めたるものが最も熱いのは、もしかしたら守屋かもしれない。
●シリーズ
8Rを勝ち上がったのは山川美由紀と塩崎桐加。山川は堂々たる逃げ切りで、レース後も貫禄の振る舞いであった。
塩崎は、谷川里江を逆転しての2着。レース後は神妙な顔で谷川に頭を下げていたが、9Rの展示から戻ってきた渡邉優美に祝福されると、最高の桐加スマイル! 二人はがっちり握手を交わしている。それは、次のレースを戦う渡邉にパワーを分け与える儀式のようにも見えていた。
9Rを勝ち上がったのは、竹井奈美と渡邉優美。塩崎の思いが届いた! 105期ダブル優出だ。山下友貴との2番手競りを制したこともあって、爽やかな表情だった渡邉。また、仲良しの同県・竹井とのワンツーに、ふたりで笑顔を交わし合う場面もあった。
竹井は会心の2コースツケマイ。竹井らしい勝利であった。特別絡みを見かけたわけではないが、トライアル出走の盟友・小野も刺激を受けたはずだ。もちろん、まくった山下に対する気遣いも忘れず、頭を下げている。
10Rを勝ち上がったのは、海野ゆかりと長嶋万記。海野は6コースから猛然とまくってきた高田ひかる(不良航法をとられてしまいました……)、さらにジカまくりに出た池田浩美を押さえて、さらに差した長嶋をも封じての逃げ切りだから価値が高い。中国勢や同期の岩崎芳美、先に優出を決めている山川らも嬉しそうな笑顔で海野を出迎えている。谷川里江に祝福されたとき、海野はちょっと照れ笑いを見せていた。先輩からの声は、明日へもつながる力になったか。
長嶋は、地元勢唯一の優出! どちらかといえば安堵の思いが強いか。着替えを終えると、ピットのあちこちにいる仲間――同県の池田や山下だったり、ともに優出を決めた渡邉だったりのもとを訪れて、笑顔で優出の喜びを分かち合った。長嶋としては、最低限のノルマを果たしたものでもあろう。明日は浜名湖の威信をかけて戦う!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)