BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

果断と油断

9R    並び順!
③森高一真(香川)16
①峰 竜太(佐賀)16
②石野貴之(大阪)25
⑤宮地元輝(佐賀)15
④深谷知博(静岡)13
⑥馬場貴也(滋賀)13

 大大大波乱。600倍の配当だけでなく、ピットアウトからゴール直前までありえないくらいの波乱のてんこ盛りだった。
 まずはピットアウトで宮地が突出。深谷をスッと飛び越え、さらに内を狙える勢いだ。が、地元の森高が飛びつくようにブロックして一件落着。こうなれば123/546あたりで収束すると誰もが思っただろう。おそらく、減速しながらそのあたりを観察していた峰も。

 だがしかし、これはSG準優だ。宮地をブロックした森高が、ちんたらしている峰を尻目にスーーーッと加速してターンマークに向かった。油断していた峰が、やっと気づいてレバーを握った。

 時すでに遅し。森高が一瞬早くターンマークを先取りして、峰は行き場を失った。森高の果断、峰の油断。最近の峰の1号艇ではちょいちょい事件が起きている気がするのだが、これは超レアな大事件だ。気を取り直した峰はゆっくりと2コースに入り込んだ。内心はどんな思いだったか。

 スタンド騒然。峰のアタマ舟券を買っていたファンの悲鳴と森高を応援する地元ファンの歓声、何かが起きそうな予感が生み出すどよめきで、しっちゃかめっちゃかの騒音が記者席まで響き渡った。

 そして、何かは起きた。ひとりだけ極端に深くなった森高が好タイミングで発進したが、まるでダッシュが乗らない。たっぷり助走を取った峰がスリット同体からすぐに突出、リベンジのジカまくりを浴びせる。それを喰らったらひとたまりもない森高が、身を投じてブロックする。

 絵に描いたような大競り。2艇が外へ外へとぶん流れる中、外の4艇がぽっかり空いた内水域に殺到する。宮地が有利に見えたが、アウトから最内を差した超人気薄の馬場が伸びる。伸びなり2マークを先取りして下剋上のアタマ確定。宮地が大回りしている間に、石野がくるり小回りで2番手に進出し、ここで準優としてのサプライズワンツーが出来上がった。

 その後も後続はすったもんだの混戦を繰り広げ、挙句は最終ホーム直線で宮地と深谷が接触転覆、外から絞め込み過ぎた宮地が妨害失格となった。こんな波乱だらけの中で、ただひとつだけ穏便だったのは最後の転覆で1500倍⇒600倍に激減した程度だったか。

 とにかく、乱打戦が当たり前の昔ならともかく、最近のSGでこれほど多くの大波乱が重なったレースは記憶にないな。ひとつだけ辛口の原因を書き込むなら、「大人気の峰が細心の注意を怠った」。これが引き金となって様々な波乱に波及した可能性は高い。自己責任の敗戦として、今後への糧にしてもらいたい。

運命的な邂逅

10R
①片岡雅裕(香川)11
②西山貴浩(福岡)11
③池田浩二(愛知)07
④中島孝平(福井)06
⑤島村隆幸(徳島)12
⑥山口 剛(広島)14

 特訓やスタ展ではあれやこれやの勝負手を放った山口だが、最終選択は6コースからのダッシュだった。9Rとは真逆と呼ぶべき超穏やかな枠なり3対3。

 こうなると、コースの利があってパワーも十分なスロー勢に分がある。「片岡が逃げて西山が差して池田がぶん回して中島が二番差し」という極めてオーソドックスな展開を経て、こっちの地元・片岡はインから鮮やかに抜け出した。

 リアルタイムで書いているため明日の枠番が1か2か不明だが、お盆開催で優勝したばかりのエンジンを引き当て、SGでもファイナル絶好枠という不思議な流れは、そのまま連続Vの予兆と見てもいいだろう。明日は地元の熱血男も、背中を痛いくらい押しまくるし(笑)。

 2着争いはやや混戦ムードだったが、3コースから握った池田がわずかなアドバンテージを生かし、それをターンマークごとにじんわり膨らませ、最後は余裕の2番手でゴールを通過した。あまりに的確な捌きでどこまでが機力差だったか判別できないが、「今節の池田15号機は優勝するに相応しい人機」と初日から勝手に鑑定している。もちろん、明日は外枠だけに苦戦を強いられる可能性も高いけれど、私はこっそりと池田のアタマ舟券を買うつもりだ。

ギリギリの詰み筋

11R
①平本真之(愛知)17
②瓜生正義(福岡)19
③前田将太(福岡)13
④吉川元浩(兵庫)12
⑤佐藤 翼(埼玉)14
⑥桐生順平(埼玉)12

 準優ラストカードも穏やかな枠なり3対3から、シリーズリーダー平本がインからガッチリ押しきった。1マークはちょいと早めに寄りすぎ握りすぎのインモンキーかと思ったが、しっかり舟が返って2艇身のセイフティリード。後付けで申し訳ないが、このサイドの掛かり~出口の押しを見るに出足をB+⇒Aに格上げする必要があるだろう。優勝戦6人のパワー相場的には、それで逃げきれるレベルだとは思っている。

 最後の一席を決める2着争いは、瓜生×元浩×桐生の死闘となった。驚いたのは6コースから最内を差した桐生のレース足。昨日までの「中堅ど真ん中」より、明らかに力強い足色だ。

 が、2マークを回った直後は、すぐにライバル2艇に包まれる。明らかに良化はしたけれど、それでもわずかに劣勢ムード。

「やはり、準優では厳しいか」
 私は勝手にそう思いながら2周ホームを眺めていたのだが、後手を踏んでからの桐生のポジショニングがいちいちエグイ。2周1マークはふたりに包まれつつ、外の瓜生に“握るしかない”牽制を入れてからの鋭角差し。これで内から先マイした元浩と窮屈にまくり差した瓜生が軽い接触を起こし、桐生が内からスッと2艇身ほど抜け出す。藤井七冠レベルの盤上この一手!

 ただ、それでも決めきれないのが今節の桐生23号機。瓜生を突き離すどころか2周2マークでは「あわや逆転負け??」の差しを喰らうのだから、完調にはほど遠い。瓜生の舳先を絞め込みで遮り、それでも伸び返す瓜生を強烈なツケマイで攻め潰し、それでやっと最後のお宝を手に入れた。桐生順平という男の底知れぬ能力(それは一部に将棋的な能力だと思っている)を、改めて感じた3周でもあった。(photos/シギ―中尾、text/畠山)