BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト


強運と悲運の連鎖

10R
①森高一真(香川) 12
②守屋美穂(岡山)  F+0.1
③馬場貴也(滋賀) 01
④浜田亜理沙(埼玉)04
⑤関 浩哉(群馬)    02
⑥峰 竜太(佐賀)    04

 いきなり波乱は起こった。モリモリモヤが気合パンパンすぎての?フライング欠場。勝手な想像だが、3コース馬場が早起こしだった(スリット前でアジャスト)ため、「遅れちゃいけない!」という思いが働きすぎての勇み足だったか。

 とにもかくにも4月8日の児島GIに続いて、「記念レース準優で2カ月連続F」という激痛の勇み足を犯してしまった。今日のFで斡旋が決まっていた来月の尼崎グラチャンはじめ、向こう1年間のSGはすべて除外されることになった。先のFですでに今年の女子BIGも赤信号が点っており、5月30日の戸田GIを走り終えてからは長きに渡って一般シリーズでの戦いに明け暮れることになりそうだ。

「今節はツキがありますね」
 2日目に原田幸哉と篠崎仁志がコンマ01のはみ出しで泣いた中、コンマ01で勝ち星を挙げた守屋はこう言った。今日は自分が泣く側に回ってしまったわけだ。予選よりはるかに罰則の重い準優という賞典レースで……。

 実戦に戻ろう。守屋Fの煽りをモロに浴びたのは、もちろんインの森高だった。インからコンマ12という正攻法の踏み込みで行ったら、F艇が襲い掛かってきた。守屋のジカまくりを浴びたら万事休す、伸び返しの勢いでなんとかブロックしきったが、もはやアタマで突き抜けるだけの体は残っていなかった。結果から先に書くと、2着でファイナル進出。よくぞあの劣悪なスリット隊形で生き残った、と思う。
 ファイナル一番乗りは3コースの馬場。内2艇の大競りを横目に、ぽっかり空いた最内をズッボリと差し抜けた。勝者のスタートはコンマ01。因果応報と呼ぶべきか。

「残って良かった。自分もドキドキしてましたから」
 レース後、馬場は胸をなでおろした。展開一本の勝利ではあったが、タッチスタートで生き残った運は明日に継承される可能性もありそうだ。道中の足色を見る限り、相棒の62号機は中堅に毛が生えた程度にしか見えないのだが、どうだろう。
 1着・馬場、2着・森高。

ピットアウトの明暗

11R  並び順
①宮地元輝(佐賀)24
②桐生順平(埼玉)23
③磯部 誠(愛知)19
⑤毒島 誠(群馬)15
⑥井口佳典(三重)17
④末永和也(佐賀)22

 このレースの“波乱”はピットアウトの直後に発生した。たまに飛び出す毒島が大一番でぽーーんと突出。内の末永を絞め込む形で4番手に躍り出た。末永は減速を余儀なくされて6コースへ。あっという間に進入隊形は123/564で固まった。そして、この最終隊形が実戦に与えた影響は小さくなかったはずだ。

 Fレースの直後でスロー3艇が慎重になる中、4カドを得た毒島はコンマ15のトップS。伸びなりじんわり磯部を煽って攻めを急がせ、磯部が握るやいなや全速で連動してスピーディなまくり差しハンドルを突き入れた。4コースを取りきったからこその高等戦術。

 ただ、毒島自作自演の「4カド奪取トップスタート磯部煽って全速マーク差し作戦」をもってしても、イン宮地を脅かすには至らなかった。ターン出口で3艇身のセイフティリード。
「今日の調整はかなり間違っていた。運が良かった」
 レース後の宮地は何度も首を捻ったが、あの出口のレース足だけはキラリ輝いて見えた。その後、毒島にぐんぐん追い詰められたのも事実ではあるけれど。

 一方の毒島も難敵・桐生の追撃を危なげなくシャットアウトしていたから、課題だった出足系統に大なり小なりの光明が射したか。そうだとするなら、外枠の明日もピット離れから好ポジションをGETし、SG連続制覇の一撃を決める可能性も高まるだろう。
 1着・宮地、2着・毒島。

23歳のチェックメイト

12R
①定松勇樹(佐賀)12
②瓜生正義(福岡)13
③松井 繁(大阪)16
④西山貴浩(福岡)11
⑤石野貴之(大阪)11
⑥中田竜太(埼玉)11

 ふたりのレジェンドを引き連れて、定松がファイナル1号艇の花道を豪快に駆け抜けた。ほぼ横一線のスリットラインから、大先輩たちがそれぞれ正攻法のコースで23歳に迫ろうとしたが、誰も捕まえきれない。

「もう、緊張感しかなかった。吐きそうでした」
 若き勝者はレース前の気分をこう吐露したが、その直後のセリフが憎い。
「ターンは完璧でした!」
 緊張で吐きそうな選手が言うセリフか! とツッコミたいのだが、定松のインモンキーはまさに完璧。瓜生の差しと松井のまくり差しが届く前にスコーーンと軽快に旋回し、出口であっという間に5艇身は千切り捨てただろう。艇界の歴史を築いたレジェンドふたりを。

 あの短時間での突き抜けを見る限り、もちろん節イチパワー32号機もグイグイ背中を押したに違いない。では、あの5艇身のどこまでがターンスピードでどこまでかパワーに拠るものか、と聞かれたら、私は答えに窮する。師匠の峰竜太よろしく、またひとりビッグレースで「足かスピードか判別がつかん!」と私を嘆かせる選手が登場してしまった。

 2着争いは大激闘。定松のはるか後方で、件のレジェンドふたりが丸々3周に渡ってテイルトゥーノーズの死闘を繰り広げた。わずかなリードを死守する瓜生、あの手この手で逆転優出を目指す松井。

 最後のファイナルチケットを受け取ったのは、王者の猛追をギリギリ凌いだ瓜生だった。もしもこの一騎打ちが優勝戦の1着争いなら、伝説のレースとして語り継がれただろう。それくらいの素晴らしいデッドヒートだったが、残念ながらこのふたりの前にはひとりの若者が存在した。
「必ず5000番台で最初のSG優勝レーサーになります!」
 夢と野心と才能に満ち溢れた23歳の若者が。
 1着・定松、2着・瓜生。
(photos/シギ―中尾、text/畠山)