●8R
スタート展示が終わった、そのとき。突如として雨粒が落ちてきた。しかも、雹だか霰だかが混じった、大粒の雨。さらには強い風が吹き、西風はスタンドに遮られるものの、空中線を見れば微動だにしていないものと、激しく追い風方向にたなびくものが混在。
「SGの準優でこれは過酷だぁ」
菊地孝平が気の毒そうに顔をしかめる。今節、SG準優扱いのトライアルでFを切ってしまった菊地の言葉だけに、これは重い。それくらい、SGの賞典レースでのスタートというのは気を使うものだし、プレッシャーも大きいのだ。
そんななかでゼロ台を決めて逃げ切った山口剛はアッパレ! ほぼ危なげのないレースぶりで優出一番乗りを決めた。控室に戻る道で肩を並べたのは三浦永理。91期の同期生だ。三浦は惜しくも3着。6人目の女子SGファイナリストに名を連ねることができず、また同期ワンツーもかなわなかった。山口は自身の勝利を喜んでいるというよりは、むしろ三浦を気遣う雰囲気。やがて三浦の顔にも笑みが浮かび、山口の言葉が癒しにはなったようだ。
齊藤仁が2着で、東京支部が3人揃った8Rのなかでなんとか優出を決めることとなった。やや疲れた表情に見えたのは、気象状況の急変のなかで戦いを乗り切った安堵感が大きかったからか。水面状況も変わるなかでの激闘、お疲れ様でした!
●9R
ピットに戻った瞬間から大声があがる。誰のことだか言うまでもありませんね。わいわいとエンジン吊りを終えると、祝福してきた同期の土屋智則に「タダで帰りゃあしませんよ、アタシゃあ!」。はい、西山貴浩です。苦戦気味だった今節、トライアル組の着順点アドバンテージもあって準優には辿り着いたが、どちらかといえばおとなしめの様子だったのである。あまり気分が乗り切らないというか。モーターが思うように仕上がらないのがその要因だったようだが、優出を決めた途端に元気になっちゃいましたか(笑)。ようやく西山らしいはしゃぎっぷりが見られて、俺も嬉しいぞ!(笑)
そのすぐそばでは、前田将太がにこにこと相好を崩していた。そして、桑原悠とグータッチ! そう、前田将太は予選トップ通過だから、これで優勝戦1号艇が決まった。そのグータッチはもちろん、SG初優勝の予感がぐっと高まったことへの歓喜でもあろう。それ以外はどちらかといえば淡々としていた前田だが、このチャンスに燃えないわけがない。ついにSGタイトルに手が届くのか、明日が勝負!
ちなみに、9R発走のころには雨はぴたりとやんでおりました。
●10R
シリーズ準優はイン逃げ3連発。佐藤翼が河合佑樹のツケマイにもきっちり対処して逃走を決めた。1st組では唯一の準優1号艇。その責任を果たす格好となったわけだ。もちろん、本来は明日の12Rの優勝戦を目指して住之江入りしたわけで、その意味では不本意さも残る優出ではあろう。しかし、佐藤も勝てばSG初優勝。これで勢いをつけて、来年こそ12R優勝戦へ、といい切り替えにしたいところだ。
8Rは東京支部3人で、こちらは静岡支部3人。そのなかで坪井康晴が2着で優出を果たした。愛弟子・河合のツケマイで生まれた好展開をしっかり突いた格好。その愛弟子が最後まで追いかけてきたが、しっかりと2番手をキープしている。レース後はにこやかに微笑んでいた坪井。これでチャレンジカップからSG2連続優出で、結果的に明日は静岡支部の期待をすべて背負って戦うことになる。
宮地元輝の勝負手はチルトマックスだった(1・5度)。2番手争いで見せ場は作ったものの、チルトを跳ねればやはり道中戦には影響が出る。河合にも交わされての4着で、レース後の宮地は首をひねるばかりなのであった。しかし、なんとしてもファンのために見どころのあるレースをしたいと、チルトを跳ねたのだ。これはナイスファイトというべきだろう。宮地らしい戦いは見せられたのだから、拍手!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)