BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――マスターズチャンピオンの重み

●10R

 石渡鉄兵がイン逃げ快勝で優出一番乗り! 昨年に続いての優出だ。この10Rには東京支部が2人参戦しており、陣営が手薄になっていたことから、太田和美がヘルプした。その太田が「よかったな! バタバタしてたけど!」と笑顔で祝福! 今日は動き出しが早い一人だった石渡だが、さらに上積みをはかって、調整を繰り返していたのだ(うまくいかなかった、と回顧している)支部こそ違うが、その努力を認めてくれる先輩の弾んだ声に、石渡はにっこりと微笑んで返した。
 勝っても感情をさらけ出すようなタイプではないだけに、その後も粛々とエンジン吊りやボート洗浄をこなす。ただ、終始微笑が浮かんでいて、気分の良さと安堵の思いがうかがい知れる。昨年の優勝戦は3着。今年はそれ以上を目指す戦いとなる。

 4カドから軽快に攻めていった菊地孝平は、やはり明るい表情となっている。笑顔ではあるが、それは力強い笑顔だ。優出を果たした満足感がにじみ出ている表情ともいえる。石渡に歩み寄ると、笑顔でお互いを称え合う。そしてちょっと甲高い声を出して、まくり差しが届かなかった悔しさも表現していた。
 面白かったのは、会見で「ターンに迷いがあらわれていた」と言ったこと。福岡周年で何度も道中逆転を許したことで、中澤和志の猛追にドキドキしていたという。菊地曰く「安全に、丁寧に回りすぎた」「新人みたいなレースになってしまった」。1マークでのまくり差しがややバタついた感じとなったのも、外に行くかまくり差すか迷ったことが出てしまったという。百戦錬磨のベテランでも、メンタルがターン技術にも影響を及ぼす。ボートレースの深淵、ということだろう。

 福島勇樹はスタートでややヘコんで菊地に叩かれ、結局6着。レース後、ボート洗浄を行ないながら悔しそうに顔を歪め、何度も何度も首を捻っていた。悔しがって当然の結果ではあるが、まるで隠すことなく、感情をあらわにしていたのだ。たしか2010年のボートレースメモリアル。準優で敗れた福島は、やはり露骨に悔恨をさらけ出していた。あのときはどちらかといえばやるせなさや怒りのほうが強く出ていたと記憶するが、いずれにしてもあれから16年、マスターズ世代になってもその様子が変わっていないことに、彼の若々しさと闘争心の強さを見た思いだ。また来年もこの舞台にやって来て、次は爽快に笑う姿を見せてもらいたい。

●11R

 1マークを6艇が回った瞬間、ピットはにわかに沸き立った。「おおっ!」。少し驚きを含んだような歓声。6コース単騎の益田啓司が、最内を差して2番手に浮上したのだ。声をあげたのは同支部で1期違いの江夏満。一緒に整備室でモニター観戦していた太田和美も声援を送る。
 益田を終始猛追したのは原田幸哉、そして服部幸男。なかなか広がらない差に、江夏たちは「ああっ!」「うわわーっ!」「まだ近い、まだ近い!」とヒヤヒヤしながら声をあげる。おそらく益田もヒヤヒヤしていたはずだが、それはピットで見ていた仲間も同様だ。

 そして、益田が2番手を守り切って2着でゴール! 出迎えた江夏たちは、そこではそれほど大騒ぎしていたわけではなかった。むしろ中辻崇人や、江夏たちと一緒に観戦していた菊地孝平らが嬉しそうに「おめでとう!」の祝福。もちろん益田は笑顔で返していて、嬉しそうではあった。ボート洗浄を終えて、江夏がついにニコニコし始める。そして、右手を掲げた益田の手を思いっ切りパチン! なんと力強いハイタッチ! 益田も江夏も新兵だから、他の敗れた先輩たちに遠慮してたんですかね。ようやく江夏も感情爆発で、益田の笑みもぐーーーっと深まったのだった。おめでとう!

 勝ったのは瓜生正義。まあ、GⅠ優出で感情を爆発させるようなところはなくて当然。粛々とボート洗浄を始め、その途中で地上波のインタビューに呼ばれて粛々と去っていった。うーん、貫禄たっぷり!
「このタイトルはできれば優勝したい、そんなタイトル」と瓜生は会見で言った。SG11V、GⅠ22V。とてつもない実績を残してきた瓜生が、このタイトルが欲しいといった。「新鋭王座も優勝させてもらってるし、コレクションじゃないけど、いろんなタイトルを獲らせてもらったら嬉しい」そうだ。そうか、優勝したら新鋭王座と“名人戦”のW獲り! その願いがかなうかどうか、明日は見届けるとしよう。

●12R

 まさかここでインが飛ぶとは……。予選トップの池田浩二が盤石と思われたこの一戦、白井英治の3カドまくりに屈することになろうとは……。「行けなかったわ」、池田は瓜生にそう言葉を投げた。スタートが行けなかった、ということか(コンマ11ではあるが……)、それとも優勝戦に行けなかった、ということか。白井が3カドとはいえ伸びられたことから放っていた可能性もあるし、瓜生が先に優出して待っていたから後者の可能性もあるし。とにかく、やはり痛恨の敗戦。ヘルメットの奥の目が、悔しそうに歪んでいた。

 白井の3カドは「3コースは立ち遅れるイメージがあったので、そうはしないため」だったそうだ。そこから出ていく足があるとは初めて気づいたそうで、ただ「内が放ったかもしれない」とその可能性にも触れている。とにもかくにも、その3カド策が奏功して、見事に優出! ピットに戻ってきた直後の白井はただただ凛々しく、そして充実感にあふれていたのだった。ちなみに「この大会は1年のなかでも楽しみにしている大会」とのこと。瓜生と思いは一緒のようだ。マスターズチャンピオンの重み、である。

 2着は杉山正樹。バックでは差して白井のふところを捕らえていただけに、逆転されての2着にはやはり悔しさもあるようだ。ただし、やはり優出は嬉しい! 足のほうは、昨日までは設定5で、今日はペラを叩いたら設定2になったそうだ。明日は設定6を目指して調整する、と。ワタシは詳しくないのですが、パチスロですね(笑)。ちなみに、GⅠ初優出は05年の新鋭王座で舞台は宮島だった。また、前回のGⅠ優出は3年前の宮島周年で、1号艇で転覆失格。相性はいいし、しかし大きな忘れ物もしている水面でもある。ここでGⅠ初優勝なら最高!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)