気温上昇の最終日。ピットは実に爽快な空気で、
21℃、45%と表示されている寒暖計にも「COMFORT」の
文字が躍っている。そんな爽秋の陽気もあってか、
ピットの雰囲気も実に涼やか。優出メンバー6人の表情も、
非常にリラックスして見えている。もちろん朝の段階では、
ということになるが。
もっとも気になる川北浩貴だが、今日も山崎智也が寄り添っていて、
川北にとっては心強い限りだろう。
さらに今垣光太郎も歩み寄って話しかけており、
どうやらSG8冠王のアドバイスが川北に送られたらしい。
こうした仲間の後押しは間違いなくパワーになるはずで、
直前には間違いなく緊張感に襲われるはずだが、
それを乗り越えさせるだけのプッシュにもなるかもしれない。
鎌田義の笑顔も爽快。主役の一人として
最終日を迎えられたことへの充実感がうかがえる。
2R発売中には早くも着水し、係留所で調整を始めてもいた。
王者のアドバイスは「しっかり自分の仕事をすること」。
それこそが結果を出すための真の近道なのだと、
王者は愛弟子に伝えている。鎌田もそれを素直に聞き入れ、
言葉通りに自分の仕事を早々に始めたというわけだ。
動き出しがわりと早かったのは、丸岡正典も同様。
丸岡は2Rのエンジン吊りを終えると屋外ペラ調整所に向かい、
ゲージを当ててペラのラインのチェックをし始めている。
そして、気になるところを見つけて、木槌を振る。
僕が見た範囲では、ペラに触り始めたのは、
優勝戦メンバーのなかでは丸岡がもっとも早かった。
濱野谷憲吾は、丸岡と同じようなタイミングで、
装着場に置かれた自艇に乗りこんでいる。
防水カバーを外してキャブレターをむき出しにすると、
奥のほうを真剣な表情で覗き込み始めた。
おそらく弁の角度をチェックしているのだろう。
この作業を終えたのが、3R開始直前。
ボートを降りて控室へ歩き出すと、
ちょうど鎌田も控室へといったん戻るところだった。
濱野谷が鎌田に言う。「今日はたのすぃ~ね~」
皆様、さまざまにツッコミを入れてください(笑)。
ともあれ、濱野谷は楽しい一日に上機嫌なのだった。
やまとのやまやまコンビ、山田哲也と山口剛は、
先輩たちに比べれば、始動はゆっくりめとなっている。
僕より一足早くピットに入っていたチャーリー池上カメラマンによると
、山田はハンドルを何度も回して、その具合をチェックしていたとか。
何か違和感でもあったのだろうか。
モーターパワーと同様に大事な部分には違いなく、
万全の状態でレースに臨むための準備ではあろう。
山口は、エンジン吊りの場面でしか姿を見かけなかった。
その様子は実に笑顔が多く、西島義則や辻栄蔵の大先輩と
談笑を交わす場面を見かけている。事故パンという状況も考えれば、
いちばんリラックスできるのはこの人かも、という気もする。
無欲の一発は充分にありそうに思えるが、どうか。
(PHOTO/中尾茂幸=川北、濱野谷、山田 池上一摩=鎌田、丸岡、山口 TEXT/黒須田)