シリーズのほうにも書いたが、今朝はなんとも穏やかなピットであった。決定戦組に要因を求めるとするなら、悔しくも順位決定戦に回ってしまった6人が、昨日に比べればリラックスの度合いが大きくなっていることだろうか。湯川浩司が顔を合わせた瞬間、目を大きく見開いて「すぅ~~」。湯川語の「おはようっす~」だが、リラックスしているときにしか聞けないものだ。顔つきもかなりスッキリしており、緊張の呪縛からはさすがに解けているようである。
優勝戦に出場するメンバーも、決してピリピリしているというわけではない。毒島誠は山崎智也と肩を並べて歩きながら、ニコニコと笑っていたし、篠崎元志も九州勢とともに動いているときはいい表情だ。優勝戦直前になったら絶対に緊張すると思うけれども、朝からそこまで切羽詰った様子がないのは、悪いことではないだろう。
池田浩二は、仲口博崇と一緒にいるところを何回も見た。二人の様子を一言でいうなら、なんだか楽しそう。優勝戦1号艇の選手には見えないほど、仲口とおかしそうに談笑していたのだ。ちなみに、そのすぐ隣では、赤岩善生と井口佳典がじゃれ合ったりしていた。赤岩も井口もリラックスした様子で、その二人に負けないだけの笑顔を池田も仲口も見せていたのであった。
田村隆信は、気合満点の表情で、これは節間通じて変わらないもの。そして、選手仲間や報道陣と接するときには、柔らかな笑顔を見せるのも同じ。非常にいいメンタル状態と思え、また闘志あふれる顔と笑顔とのギャップも状態の良さを際立たせているように思える。
新田雄史は、ちょっと緊張しているのかな。そう思えてしまうのは、朝の公開インタビューで「レース前はいつも以上に緊張している」なんて言葉を聞いたからかも。新田は選手の輪から離れて、一人、自艇のかたわらにたたずんでいたのだ。もちろん、ただたたずんでいたなんてことはないわけで、整備室に向かう際に見ると、手にはプラグらしきものを持っていたわけだが、そうした作業を一人黙々と行なっている姿が、6人のなかではちょっと異質だと思った次第。もちろん、悪いふんいきというわけではなかったけれども。
で、もう一人異質だったのは中島孝平だ。プロペラ調整をずっと行なっていたのだが、エンジン吊りなどからペラ室に向かう際は全力疾走にも近いほどの駆け足。切羽詰ってるとは言わないが、かなり急いではいるようだったのだ。もっとも忙しく調整していたのは、メンバー中では中島ということになる。気迫を感じたぞ。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)