桐生順平、4連勝! 10Rは5コースまくり差しがズバリ決まって、得点率を8・00まで伸ばした。レース後はサバサバした様子ではあったが、あれだけの勝ち方を見せて、歓喜を爆発させるところが見られなかったのがまた凄い。内心はどうだったかわからないが、少なくとも興奮している様子は微塵もなかったのだ。戸田の5コースの勝ち方はこれだと、静かに教えているような、そんな雰囲気。やはり戸田を誰よりも知り尽くしている男だと言うしかない。
10Rで痛恨の大敗を喫してしまったのは磯部誠。1着勝負で3コースから果敢に攻めたが、及ばなかった。道中ではキャビって後退するところもあって、無念の勝負駆け失敗。磯部から出てくるのは苦笑いしかなく、やはり大敗で18位圏内から滑り落ちた吉田裕平と寂しく笑い合うしかなかった。足はいいだけに、残り2日、らしい走りを見せてもらいたい。
3番手を争った宮地元輝と吉田拡郎。宮地は3着条件、吉田は4着条件、そのノルマの差が勝敗を分けたというわけではないが、きっちりと宮地3着、吉田4着となったのだった。レース後、宮地と吉田は朗らかにレースを振り返り合う。先に歩み寄ったのは吉田のほうで、宮地が恐縮する場面もあった。その後はヘルメットの水分を拭いながら、にこやかに語り合う。お互い相手が何着条件で、結果どういう状況になったかを把握していたとは思えないが、それぞれノルマをクリアできたという安堵が表情を和らげていたのだと思う。
12Rはボーダー争いとしてはかなり大きな一戦。1号艇の茅原悠紀と6号艇の平本真之が2着条件で、①=⑥という2連単で決まると17位の西山貴浩、18位の前田将太がまとめて圏外に落ちるのだ。福岡両者はどんな思いで12Rを見ていたのか……。結果は④-⑤! 湯川浩司が4カドからまくって、一気に茅原らを呑み込んだのだ。峰竜太がそれに連動。湯川はこれでダッシュから3連勝。さすがに松井繁とにっこり笑い合っていた。
悔しがったのは平本真之。湯川が内を呑み込んだのだから、その後のハンドル次第では2着は十分可能性があった。しかし、ターンマーク際でもつれて失速。接触もある不運な展開だったが、準優出を逃す大敗に、大きく肩を落とす平本だった。
茅原は少々サバサバとした雰囲気。あれだけきれいにまくられてしまえば、湯川の伸びを称えるしかあるまい。もちろん、目元に悔しさが漂ってはいたが、大きく悔しがることもなく、丁寧に頭を下げる湯川にも微笑で応えているのだった。
これで生き残った西山と前田。前田はすでに帰宿していたのか姿は見当たらなかったが、西山はすぐに報道陣のもとへ行き、想定番組を確認している。西山はもちろん6号艇だが、4号艇に石野貴之。今日も4カドから伸びてまくっているだけに、その外にいたほうが展開が? どんな選択をするのかにも注目しておこう。
さて、予選トップ争い。なにしろ、昨日の段階で、いや、10Rを終えた時点で首位の中田竜太と2位の池田が11Rで直接対決なのだ。2人揃って大敗となれば、桐生や12R登場の峰竜太にトップ通過の権利が生じるが、3号艇・中田、4号艇・池田だったから、これが事実上の首位攻防戦だったと言っていいだろう。
6号艇の松井繁が前付けし、これを入れた中田はスロー4コース。池田は5カドとなった。バックでは池田が松井や片岡雅裕らとの2番手争いとなり、中田は遅れた5番手。これはカド受けからの差しとカドからの全速戦の差だっただろうか。中田は2マーク小回りですっと番手をあげたが、しかし3番手争いまで。池田は2マーク豪快な全速戦で外マイして2番手浮上。池田の先着は確実だった。
池田が2着ゴールなら、中田は3着でなければ得点率で池田を上回れない。中田はどこまでそれを把握していたかわからないが、必死の競り合いもむなしく、4着ゴールとなっている。これで池田のトップが確定! ピットに戻った中田は、やっちまった、という感じで口元を歪ませていた。トップ陥落を覚悟していた表情だったのは明らかである。一方の池田は、西山貴浩にからかわれるように祝福されてとびきりの笑顔。これまたどこまで把握していたのかわからないけれども、トップ通過を確信していたのだろう。表情の明暗がくっきりだった池田と中田。これが結末を左右することになるのかどうか……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)