3日目ともなると、ピットでの選手の動きが少なくなってくるのはSGの定説。作業や調整の判断が早いからこそ、トップクラスで戦える。今日もやはり、昨日までに比べて静かな空気にピットは包まれていた。
それでも、作業の手を緩めているわけではない。実際、調整をずっと続けている選手だって多いのだ。すでに今日戦った選手たちだって、レース後の調整に励む。たとえば、1Rで1号艇大敗となった守屋美穂。レース後早々にペラ調整所に陣取り、かなり強めにペラを叩いていた。微調整ではなく、思い切った調整といった雰囲気。水神祭のチャンスを活かせなかった怒りをこめて……なんてことはないだろうが、意外なほど大きな音を響かせながら、ペラを叩いていたのだ。
2Rで同じく1号艇大敗の濱野谷憲吾も、こちらは後半10Rが控えているということもあるが、レース後はすぐにペラ調整に突入している。もっとも、濱野谷はレース以外の時間のほとんどをここで費やしていると言ってもよく、長い時間ペラと向き合っている一人だ。険しい目つきでペラを注視し、コツコツと叩き続ける。なんとか結果を残したいと、諦めることなく力を注ぐ。
井口佳典もまた、ペラ調整を延々と続けているという印象の一人だ。こちらも後半9Rを走ることになっており、1R2着後は試運転とペラ調整を繰り返すという動き。目つきは険しく、いや、むしろ苦い表情にも見える。1R2着は、1着もありえた展開だっただけに、そこを突き抜ける足を来させるのに苦慮しているのだろう。とはいえ、2着確保で、準優勝負駆けはつながった。本領発揮はここからと期待したい。
奮闘しているのは、下條雄太郎もそうだ。SG初出場! なかなか結果は出ないが、この舞台にチャレンジしているのだ。1Rではやっと舟券に絡めた(3着)。レース後は井口同様、試運転とペラ調整に駆けまわっている。女子選手の水神祭は2つ出たが、この人の水神祭もなんとか見たいな~。
さて、それなりの結果が出た者は、やはり表情が明るくなる。今朝のピットで印象的だったのは、3Rを勝った赤岩善生の足取りが実に軽やかだったことだ。このところ、SGでは苦戦が続く。開会式では「こんな僕に投票してくれて……」と、少し自虐が入っていた。ピットでも元気がないように見えたし、苦闘が続いていたのは事実だ。だが、この1着はある種の手応えを赤岩に与えたのではないか。ここまで軽快に歩く赤岩を久しく見ていたなかったような気がするのだ。男・赤岩、華々しく復活。今節がその舞台になっても、少しも驚けない。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)