BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル2nd第3戦ダイジェスト

レジェンド、王手!!

 

11R

①茅原悠紀(岡山)18

②丸岡正典(大阪)20

③石野貴之(大阪)13

④白井英治(山口)11

⑤吉田拡郎(岡山)11

⑥池田浩二(愛知)13

 

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 レジェンドの愛弟子が、誰もが成し遂げたこのない伝説を築こうとしている。4連勝での賞金王パーフェクトV。かつてモンスター野中和夫がパーフェクトを達成したが、当時のトライアルは2戦だった。まくり差して逃げてまくって、白井英治が史上初の大偉業に王手をかけた。

 

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 勝ち将棋、鬼の如し。勝てる流れのときは、すべてが勝者の味方に付く。4カドからスリット全速で通過した白井は、とりあえず内の石野貴之を叩いた。ツケマイ気味に叩き終わってみると、内の2艇がおあつらえ向きに凹んでいて、あとはレバーを握ったままでその2艇を踏み越えて行った。白井がまくりきるために発生したスリット隊形。私の目にはそう映った。

 

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 もちろん、その大前提には白井自身の充実ぶりがある。第1戦からのスタートはコンマ15、コンマ13、コンマ11、すべてほぼ全速。「地に足の着いたレースをしたい」という初日の宣言どおり、はしゃがず慌てずバチッとスタートを決め、すべて冷静沈着なターンでバック突き抜けた。かつての「大事なところで何かをやらかす英治」の面影は、もうどこにも見当たらない。明日はどうかと言われれば、もちろん断言はできないが、おそらく同じようなレースができると思う。SGを獲るまで気の遠くなるような年月を要したが、その長い長い労苦がひとつのSG制覇によって「真の強さ」へと昇華した。私はそう信じる。「涙の数だけ強くなる」という常套句があるが、徐々に強くなるとは限らないのだ。

 この貴重な1勝で、白井は12Rを待つことなく明日の1号艇を掴み取った。悪手をひとつも指さず、大偉業に王手。この王手は、将棋用語で言う「必死」に限りなく近い王手だと思う。

 

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 2着は、白井にまくられながら、狭い所に根性のまくり差しハンドルを突っ込んだ石野貴之。さすが「勝負駆けに強い」「短期決戦が大好き」と豪語するだけあって、ここ一番の勝負強さを発揮した。同期の吉田拡郎は、その背中を悔しい思いで見つめたことだろう。今年、目に見えて活躍したのは拡郎だった。早々にこの舞台の権利を勝ち取り、しっかり心と身体の準備を整えてきたはずだ。一方、石野がグランプリの挑戦権を得たのは11月30日、田中信一郎との一騎打ちに競り勝ち、優勝戦の結果も幸いしてトップ18に滑り込んだ。短期決戦の勝負駆け……同期のライバルは、今年最後の直接対決で天国と地獄に分断された。

 

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 3着の茅原も、なんとか貯金にモノを言わせてファイナリストの権利を手にした。逃げきれば明日の好枠も見えたが、第6位でのトライアル通過。「SG初Vがグランプリ」の可能性はやや遠のいたが、この男にしかできない異次元ターンの破壊力は、どんな常識をもぶち壊す。パワーも上々。明日、緑のカポックがバックで突き抜けても、今や驚愕するファンはひとりもいないだろう。私も、驚かない準備をしているつもりだ。

 

賞金トップの意地

 

12R

①井口佳典(三重)16

②菊地孝平(静岡)15

③太田和美(大阪)12

④松井 繁(大阪)15

⑤山崎智也(群馬)18

⑥毒島 誠(群馬)15

 

 

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 ファイナル進出へ、山崎智也が3着、菊地孝平と松井繁が2着が目安だったこのレース。鮮やかに勝負駆けを決めたのは、2コースの菊地だった。スリットから太田和美に煽られたように見えたが、慌てず騒がず冷静的確な差しハンドルを突き刺した。

「賞金トップの俺が、ファイナルに行かずどうする!!」

 そんな声が聞こえるような激差しだった。

 逆にインの井口佳典のほうは、太田のまくりを警戒しすぎたのかも知れない。1マークのターンがやや流れ、菊地の舳先を許してしまった。これには緩い追い風&チルト1度が影響したかも知れないし、「逃げきっても、菊地に差された2着でも、明日は2号艇」という条件が影響したかも知れない。明日を考えた場合、井口にとってもっとも警戒すべき相手は菊地ではなく太田だったのだ。

 

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 菊地の舳先がズッポリ入って、勝負駆けの成功が約束された。後方では井口が粘り、是が非でも2着が欲しい松井繁がその2艇身ほど後ろにいた。2マーク、松井が井口の前を真っ直ぐ通過する形で先マイを打つ。いきなりの勝負手だ。が、井口は冷静に差しハンドルを入れ、さらに太田も松井と舳先を並べた。その後は……彼我の機力の差に、王者は泣きたくなったかも知れない。ターンマークごとに太田がグンッと伸び、そのたび松井を突き放していった。王者のグランプリが終わった。

 

 

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 私が期待した山崎智也も、なす術なく6着で終戦を迎えた。パワー的には十分「3つめのメット」を狙えるとみていたが、今節の智也は3戦ともにスリット付近の覇気がなかった。スタートで後手を踏み、それが実戦に響いた。もともとバカッ早いタイプではないけれど、勝負どころではとことん行く男でもある。出足系統に不安があったのかも知れない。

 

 

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 最後に、現状の見立てを記しておくとファイナル6艇でのトップは太田(出足S・回り足S・伸びA)、2番手が白井(出A・回A・伸S)、茅原(出A・回A・伸S)、その下に井口(出A・回A・伸A)、石野(出A・回B・伸S)で、菊地はまだ良否を計りかねている。まあ、今節の私の見立てはまったく当てにならないので、単なる独り言だと思ってくださいまし!

 さあ、泣いても笑ってもあと1戦。もちろん私は白井師匠と心中するが、客観的には白井VS太田・井口の今シリーズ最初にして最後の直接対決が楽しみでならない。(photos/シギー中尾、text/畠山)