３カド及ばず……
11Ｒ
①井口佳典（三重）07
②石野貴之（大阪）10
③毒島 誠（群馬）11
④太田和美（大阪）11
⑤池田浩二（愛知）11
⑥茅原悠紀（岡山）12
毒島誠がくるりと舳先を翻した瞬間、満員のスタンドが歓声、奇声に包まれた。昨日５着大敗した男の、勝負の３カド。枠なり２対４の隊形で12秒針が回る。ダッシュ４艇がぐんぐんスリットに近づく。スリットラインは美しいほどの横一線。ここから毒島が伸びるか、と思いきやスローの石野貴之とまったく同じ足色になっていた。また今日も、私の「バカに良く見えた選手」の見立てはハズレた。毒島の行き足～伸びは、このメンバーでワースト級だった。嗚呼、明日はどの選手がバカに良く見えるのだろうか……（恐怖）。
この３カド攻撃は、スリットからやや覗いた太田和美をブロックする役目を果たした。
ただし、それで得をしたのは毒島本人ではなく、スローの２艇だった。井口佳典が逃げて、石野貴之が差して、外の仕掛けは完全に遅れた。1-2でほぼ安泰の展開だったわけだが、ここで恐るべき足色を披露したのが太田だ。二番差しから２艇身ほど前にいる石野をぐんぐん追い上げ、ついに舳先を半分突っ込んでしまった。昨日の松井繁との対決（立場は逆だったが）で披露したゴキゲンなレース足を、今日も同支部のライバルに魅せつけた。１周２マークは展開の綾で石野に先着を許したが、パワーでは太田が圧倒していた。おそらく、節イチ。
それを、さらに明確に証明したのが、例によって後方から追い上げた茅原悠紀とのマッチアップだった。太田はこの若き韋駄天の猛追を、シャットアウトした。もちろん、太田のテクニックに拠る部分も大きい。ただ、ターンマーク前後の足に、茅原を上回るパワーを感じた。もっとも分かりやすいのは最終ターンマークの直前だ。太田が先行して、茅原が１艇身半ほど後ろ。ちょうどこの程度の態勢から、茅原は様々な強敵を握りマイで攻め潰してきた。今日も、茅原はスッと上体を持ち上げて、行こうとした。
行くか？ と思った瞬間、茅原は躊躇した。思いとどまってから、また握った。それはもはや、力のないターンだった。なぜ躊躇したのか。おそらく、自分が想像したより、太田ははるかに力強く伸びていたからだ。ここで握ったら危険だ、と防衛本能が働いた。想像の域ではあるが、私はそう確信している。どちらも節イチ級と呼ばれている太田と茅原。ファイナルに乗る可能性の高いふたりの直接対決は、太田の完勝だった。きっと茅原も、パワー負けを痛感したと思う。この段階での精神的な余裕の有無は、意外と大きく響くかも??
嗚呼、それにしても。実戦でこんなに凄まじい太田の足が、特訓ではバカに良く見えることがないのは、なぜなのか……。宿題は続く。
圧勝した井口は、レース後のインタビューで「もう何の不安もない、節イチ級」というようなことを豪語した。非常に攻撃的でポジティヴな性格だから、そう思い込んだ方がいい。明日も、そう信じてインからしっかりスタートを踏み込むだろう。ただ、私の見立ては井口＝節イチはちょっと無理があると思います！（笑）
目指せパーフェクト!!
12Ｒ
①白井英治（山口）13
②菊地孝平（静岡）18
③山崎智也（群馬）17
④松井 繁（大阪）15
⑤吉田拡郎（岡山）09
⑥丸岡正典（大阪）20
今日の白井英治も強かった。スリットから吉田拡郎が覗いたが、まったく慌てることなくターンマークを舐めるように旋回した。「白井の賞典レースの１号艇はデンジャー」はもはや昔の話。スタートから１マークの出口まで、教科書に載せたいような美しいイン逃げだった。時計が遅いのがちと気になるが……。
昨日の当欄で記したように、これで無敵の「艇王ロード」突入か?? と思いきや、やはり水神様はイタズラがお好きなのだ。明日の白井は４号艇。それは良しとして、当面のライバル井口に１号艇、太田に３号艇という好枠を授けたのだ。もしも明日11Ｒの白井が３着で12Ｒの井口が逃げきれば、ふたりは１１３着で並ぶ。こうなると、すでに持ち時計でリードしている井口が、間違いなくファイナル１号艇を手にする。最近流行りの「逃げ３連発Ｖ」の王道だ。また、白井３着で12Ｒ太田が１分46秒5より速いタイムで１着なら、やはり太田がファイナル１号艇になる。明日の枠番的にも、ボートレースファンからすれば超面白い「ポールポジション争い」になったわけだ。
まあ、もちろん白井英治はそんな同点・時計争いなんか眼中にないだろう。２着で12Ｒを待たずにトップ確定、なんてことも。おそらく、お祭好きの白井はパーフェクトＶしか考えていないし、それくらいの気合で突き進むべきだと思う。
リズム抜群の白井とは裏腹に、どうにも煮えきれないのが賞金トップの菊地だ。昨日は２マークの無理なターンで着順を落とし（２着９点と３着７点の差はでかい）、今日は早めにハンドルを切りすぎ？ターンマークにぶつかりそうになっていた。スタートでやや凹んで焦りがあったか。そもそもコンマ18というスタート自体が、らしくないのである。明日もまた２号艇で、スタート～１マークまで鬱憤を晴らすレースができるか。それができれば、そのままファイナルの道も拓けることになる。
昨日は２着と気を吐いた王者・松井繁は、流れた菊地に接触する不利もあって最下位に沈んだ。やや不運だったとは言え、ターンマークごとにどんどん引き離され、最後はポツンと１艇だけ千切れてしまった。昨日は太田との差を痛感し、今日は他のすべての面々との差を感じたかも知れない。イコール激痛、か。明日も同じ４号艇で２着勝負。自力のＳ勝負という「イチかバチか」（今節の松井のテーマ）は、内が太田であることを考えるとコンマ01は必要だろう。ならば、前付けか、太田マークのまくり差しか……「上積みはない」と名言しているだけに、己の腕を信じて極め撃ちの「イチかバチか」を狙ってきそうだな。それが何かは分からないけれど。（photos/シギー中尾、text/畠山）
