BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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GPトライアル2nd第3戦 ダイジェスト

壮絶タイム

 

11R

①瓜生正義(福岡)08

②松井 繁(大阪)10

③太田和美(大阪)16

④辻 栄蔵(広島)15

⑤坪井康晴(静岡)16

⑥石野貴之(大阪)17

 

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 穏やかな枠なり3対3でスリットはほぼ横一線。中でもインの瓜生がわずかに覗いた、となればイン逃げ圧勝パターンだ。が、松井の差しがそんなムードを吹き飛ばした。ターンマークをくるり小さく回って、瓜生の内フトコロに舳先を突き刺す。完全に差しが届いたように見えた。王者の意地。1着なら当確、2着で相手待ち、己が置かれた状況を知り尽くした男の、渾身の差しハンドルだった。

 ただ、そこからの攻防に戦術は通用しない。ひたすらレバーを握り合っての伸び比べ。ターンの出口から、スーーッと瓜生が伸びた。届いたと思った舳先が抜け落ちた。バック中間でさらにじわじわ瓜生19号機が伸び、2マークの手前では2艇身近いアドバンテージを奪っていた。そのままブイを先取りして、瓜生の1着がほぼ固まった。

 その直前、今日も不気味な足を見せたのが忍者・栄蔵だ。4コースからの2番差しで、例によって最内からひたひたと王者に忍び寄る。2マークは松井に先んじての小回りターン。松井が冷静に差し抜けて逆転はならなかったが、今日も栄蔵の“最内・忍び足”に目を奪われた。

 

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 その後方では太田、石野、坪井が4着争いを演じていた。前の3艇とは差が開き、もはやボーダー21点以上の可能性を残すのは5番手の石野のみ。6着なら20点でほぼ赤信号、5着なら21点で黄信号という状況だった石野は、注意深く後方の坪井に抜かれないターンを繰り返し、最終ターンマークで太田を抜き去った。なんとか安全圏の22点をゲットしたが、その足色はやや頼りないものに思えた。

 

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 レース後の得点は瓜生は27点で文句なし、続いて22点の石野も当確。ここからが大変だ。松井と辻が235着の21点でぴったり並んだのだ。こうなると、ふたりの最高タイムで優劣が決まる。私はてっきり「辻が昨日1分48秒3という2着とは思えない時計を出しているので、辻が上位だ」と思い込んでいた。が、今日の松井のそれはなんとなんと1分47秒1!!!! 9Rで逃げきった今垣光太郎の勝ち時計より、コンマ5秒も速い猛時計だった。こんな得点状況を想定してタイムアタックをしていたとするなら、「さすが王者」と絶賛するしかないな。ん、ではでは勝った瓜生のタイムは……泣く子も黙る1分46秒0!! 昨日の菊地の猛烈タイムを、さらにコンマ03縮めてみせた。

 瓜生、強し。1マークではやや冷やりとさせたものの、スタート、ターン出口のレース足、その後の伸び足、3周の勝ち時計、どれを取ってもグランプリを勝ちきるに相応しい勝ちっぷりだった。ただ、この時点では明日の枠番はまだわからない。1号艇か2号艇か、それで瓜生のV確率は大きく変わる。そう思いつつ、12Rのスタート展示に目を向けた。

 

白カポック争奪戦

 

12R 並び順

①山崎智也(群馬)20

②池田浩二(愛知)18

⑤篠崎仁志(福岡)08

⑥菊地孝平(静岡)07

③井口佳典(三重)03

④桐生順平(埼玉)04

 

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 進入から1マークから、最後のトライアルは11Rよりもはるかに激しい展開になった。引き金を引いたのは、6号艇の菊地。瓜生同様、菊地もまたV確率を大きく変えるポジションに立っていた。1着ならファイナル1号艇。それを意識していたかどうかはともかく、菊地は動いた。小回り防止ブイをゆっくり回ってから、おもむろに加速。5号艇の仁志が徹底抗戦し、2艇がいち早く舳先をスタート方向に向けた。続いて智也と池田が舳先を向けて、それぞれ艇番を主張する(やや遅れて進入した池田は待機行動違反。実は1着でもファイナル進出は絶望的だった)。

 一方、井口は「付き合いきれません」という体で逆方向に舳先を翻し、一時は抵抗した桐生は回り直して1256/34。内4艇は横並びでずんずん深くなってゆく。12秒針が回って、ダッシュ2艇が唸りをあげた。80m近い起こしで加速のつかないスロー勢とは雲泥の差。井口がスリットから勢いよく飛び出した。すぐに絞め込む。すでにファイナル進出は絶望的な井口だが、最後の最後に意地を見せた。絞め込まれた菊地はサンドイッチで艇が浮き上がるほどのダメージを受けたが、舳先を抜かない。抜いている場合ではない。そのまま艇を押っつけて、内から抵抗し続けた。

 

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 それは昨日の12Rの光景によく似ていた。まくりまくられ、もつれ合っての超変則2段まくり? 昨日の菊地はまくる側、今日は抵抗する側でインの智也に迫る。昨日は抵抗する側だった智也は、インから握って応戦した。ファイナル進出へは最低でも2着条件。まくられた時点で連覇の夢はほぼ途絶えてしまう。井口と菊地を弾くようにして応戦したのだが、智也自身も大きく外に流れた。

 これぞグランプリ、な肉弾戦。バックの内水域がぽっかり空いて、そこにアウトから鋭角にターンした桐生と2コースからくるりと旋回した池田が一気に突き抜けた。2艇身ほど遅れて、智也が3番手。2マーク、2着が欲しい智也が追いすがるが、前2艇には届かない。1着がほしい池田が桐生に渾身のツケマイを浴びせたが、これも届かない。桐生が敢然と抜け出し、池田(すでに赤信号が点っていたが)と智也はファイナルへの花道から遠ざかった。

 

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 V戦線を占う意味でとても重要な菊地の順位は、4着止まり。この瞬間、瓜生のファイナル1号艇が確定した。もちろん、菊地の2号艇も相当な脅威ではあるが、ここは住之江、とりあえず「瓜生、初の黄金メットに王手!」と記しておこう。今日の11Rと同じレースができれば、おそらくそれは実現するはずだ。

「選手になった以上は、やっぱり一度は獲りたいです」

 大村チャレカ前検の前日、たまたま夜食をともにした瓜生はグランプリについてこう語った。その柔らかな口調に、“悲願”という言葉は似合わなかった。が、瓜生本人というより、それは福岡在住、いや全国の瓜生ファンの悲願だ。

「瓜生、次は賞金王ぜっ!!」

 福岡ダービー優勝後の、地元ファンの叫び声がまだ耳にこびりついている。その時が来た、という確信にも似た予感が私の頭を巡ってもいる。明日、私は1号艇を無印にしながら、きっとそれを待ち望んでいるだろう。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)