BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@クライマックス――感動の2014ファイナルデー

 

 

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 鎌倉涼には感動しました。

 気合が図抜けていることはもう何度も書いた。それは今日も変わらなかったと思う。さらに、調整に文字通りの全力を尽くした。10R発売中にいったん記者席に戻っていたとき、池上カメラマンが「涼ちゃんが整備室に入った!」と血相を変えて報告に来た。このタイミングで!? トライアル第2戦でもやはり同じタイミングで整備室に飛び込んでいるが、優勝戦の今日もなのか!? その後、鎌倉は試運転に出て、さらにペラ室に入って、本当にギリギリまで作業を行なった。やっと作業を終えたとき、落合直子と川野芽唯が心配そうに寄り添っていた。鎌倉の思いを身近で知っているだけに、そうしてエールを送っていたのだろう。

 

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 そんな鎌倉が、スタート展示から戻ってきたときには、いい笑顔を見せていた。平高奈菜と並んで、爽快に笑い合っていた。もう感触がどうこうではない。後は水面で戦うだけ、という思いが、そんな笑顔をレース直前に生んだのだと僕は思う。

 レースも死力を尽くしたものだった。攻めた。道中は諦めずに前を追いかけた。結果は出なかったが、僕は鎌倉の今節の戦いをひたすら尊いものだと思う。

 レース後はさすがに悔しそうだったなあ。やるだけやったという思いはあっても、悔しいものは悔しい。今夜は今節の疲れをたっぷり癒し、またその悔しさも癒し、明日からまた力強く走ってほしい。僕はもう、絶対的に大拍手です!

 

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 平山智加にも、感じるものは多かった。これも何度も書いたことだが、女子の中に入れば、平山には間違いなく格上感がある。雰囲気は明らかに一女子選手のそれではないのだ。それは今日も変わらなかったと思う。

 鎌倉と平高の笑顔を見た後に、平山が展示から戻ってきたのを見かけた。顔には微笑が浮かんでいるように見えた。だが、それはよく見れば単なる微笑ではない。頬が力強く引き締まり、来るべき戦いを戦士として待っている微笑である。いやあ、痺れたなあ。平山も結果は残念である。レース後は微笑というより微妙な表情を見せていて、不本意な感情が見え隠れしていた。それもまた、格上選手だからこそ湧き上がる感情だと思う。この悔しさを平山はきっと忘れない。そして遠くない将来に、それを晴らしてみせるだろう。

 

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 平高奈菜は、カッコいいと思った。準Vに終わったレース後、優勝者のウイニングランだけでなく、2着3着の平高と鎌倉もレスキューに乗って水面へと向かっている。勝者には、地上波放送やJLCのインタビューがあったため、平高と鎌倉はそれを待つかたちとなった。同期生の二人がそこに揃い、周囲から声がかかれば、彼女たちも笑顔になる。しかし、二人ともそれが心からの笑顔には見えなかったし、特に平高は作り笑いとさえ思えたのだった。なぜなら、待機中の二人が人々の注目を集める前に、平高はカタい表情で、思い切り脱力していたからである。

 そりゃあ悔しいでしょう! 準Vは平高にとって上出来ではない。勝たねば納得などできなかったのだ。それをまずは素直にあらわしていた平高が、そして人々には笑顔を向けた平高が、本当にカッコいいと思ったのである。やっぱりこの人には大舞台が似合う。来年はSGでも会いたいですね。

 

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外枠2人に関しては、わりと淡々としているところしか見かけることができなかった。三浦永理は、モーター返納中に大きくは表情を変えることはなかったと見えたし、守屋美穂は返納を終えると整備士さんや先輩たちに元気よくお礼を言って、控室へと向かっている。いや、実を言うと、鎌倉と平高に注目しすぎて、彼女らを追い切れなかった。申し訳ない。ただ、自身も残念な結果に終わった、同県同期の盟友・長嶋万記がちょっと微妙な表情で三浦とともにいたのが印象的ではあった。通じ合う無念があっただろうか。

 

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 さて、優勝はグレートマザーである。凄いなあ。コンマ01のトップスタート! 日高逸子は昨日、「奇跡が起こるといいですね」と本音なのかそうでないのか、どう考えても曖昧な言葉を口にしていたわけだが、「スタート勘がわからない」と言い続け、しかも直前に向かい風が強くなっていた優勝戦で、コンマ01のスタートを決めたことは、たしかに奇跡に近かったかもしれない。

 ピットに凱旋した日高は、バンザイで出迎えた後輩たちに両手をあげて応えていた。その様子は実に嬉しそう! 渡邉優美など30近くも年が若いわけで、ほとんどが相当に年の離れた後輩である。彼女たちは、グレートマザーの完勝に勇気を与えられたはず! おそらく同世代の人たちも力を分けてもらった日高の勝利だと思うが、若い後輩たちもきっと、日高の強さに刺激を受けたはずである。

 日高を出迎えたのは後輩たちだけではない。JLCのピットレポートで一節間クイクラを見続けた、いや、1年間レディース戦を間近で見てきた徳増宏美さんが、日高と堅く、力強く抱き合った! 二人は56期の同期生である。徳増さんは元選手として、時に若手の相談相手にもなっただろうし、ファンに対しては彼女たちの戦いをプロの視点で伝えてきた。そんな徳増さんが、そのときは同じ苦労をしてきた同期生に戻っていた。徳増さんのそんな姿は初めて見ただけに、それは感動的な光景だった。この住之江に56期は単独参戦だと認識していたが、実は違ったのだなあと思った次第だ。その後に、徳増さんプロの解説者として、日高はプロのレーサーとして、インタビューをやり取りしていたのはさすがだった。

 

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「一時は引退を考えたこともある」と表彰式で日高は言った。昨日は「これを勝ったら引退してもいい」と言っていたそうだ。そこでまた考える。日高逸子の本音はどこに!?

 いや、もちろん引退を考えたことは本当にあったようだが、しかしそれは困るんです! こんなに強く、人々に勇気を与え、また感動も与えるグレートマザーにはまだまだ去ってもらったら本当に困る。何より来年は地元クイーンズクライマックスではないか。そこにあなたがいなくてどうするんだ!

 で、これはまったくノーマークだったのだが、水神祭が行なわれたそうです! マジか! 私、見に行くことができませんでした。池上カメラマンは噂を聞いていたようで、グッジョブ! というわけで、写真だけでお許しください。水神祭は、お初の儀式であり、また通過点たる区切りの勝利の儀式である。そう、この優勝はまだまだ通過点。もっともっと強さを見せつけるグレートマザーを、その不思議な謙遜発言とともに(笑)、まだまだ味わわせてください! おめでとうございます!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)

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