BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――いつも通りのミスター

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171218180554j:plain

 ミスター劇場、完全優勝がかかった朝に開演!(笑)

 1R終了後の長谷川巌のモーター返納作業をヘルプしていた今村豊。整備室の奥のほうで、山口勢や北川幸典相手にはしゃいでいるのが見えた。近くで撮影していた中尾カメラマンによると、新良に向かって「頭のネジ締めてやろうか?」とドライバーを向けていたようである。仕事でドライバーを使うようになって何十年、新良との付き合いも何十年、これまで何度そのギャグを言っていたのか……あるいは今日、急に思いついた? 新良が呆れた顔をしているのも当然である。北川も失笑していた。

 その直後のことである。モーターの下のほうにある何かを手探りで探していたミスター、頭を下げた状態でいると、その瞬間、ギアケースあたりの作業をするためモーターが傾けられた。そして、キャブレターあたりがミスターの頭を直撃! 「痛ぁっ!」と悲鳴があがり、頭を押さえてうずくまる今村豊! 周囲は大爆笑! 中尾カメラマンは「新良さんにあんなこと言ってるから、バチが当たった」と思ったそうである。その新良は嬉しそうに言い放った。「欠場じゃ、欠場!」。ふたたび起こる大爆笑。もちろん、そんな大事ではございません。ミスターが頭ぶつけて痛そうにしている、というだけである。こちらもいちおうお義理で「大丈夫ですか?」と声をかけたら、ミスターは「見とったっぁ?」と目を丸くするのみなのであった。パーフェクトVがかかった人の朝の光景とは思えませんな(笑)。ちなみに、モーターを傾けたのは、5月に児島でデビューする地元の新人・入海馨くん(いるみ・けい、と読みます)。今日はデビュー前の研修みたいなかたちでお手伝いに来ているのだ。彼は「デビュー前に今村豊をイワした男」として、伝説の男になるであろう(笑)。真っ青になってミスターに平謝りしてたけど(笑)。

 もちろんふざけているばかりではなく、今村は今朝、ギアケース調整をやっている。優勝戦の朝には必ず見かける光景で、最後にしっかりと点検し、万全を期す作業だ。万事を尽くして、優勝戦に臨む。そのかたわらに、笑いを振り撒いているわけである。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218180604j:plain

f:id:boatrace-g-report:20171218180614j:plain

 優出メンバーは、基本的にゆっくりと過ごしていた。ピットに入った瞬間に、荷物整理をしている倉谷和信を発見。今日は最終日、レースが終われば管理解除となるので、宿舎から荷物をすべて持ち出し、レースや調整のかたわらに整理するわけだ(だから最終日のピットはあちこちに開きかけのスーツケースが置かれている)。急ぎの作業をする必要がないから、倉谷は荷物整理に取り掛かっているわけだ。

 北川幸典はゲージ擦り。これも当然、急ぎの作業がないからできる仕事である。頭をぶつ前の今村が、ギアケース調整のあと、隣に座って話しかけていたが、ゲージに集中しながら今村の言葉に耳を傾け、時に微笑む北川であった。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218180626j:plain

f:id:boatrace-g-report:20171218180634j:plain

 熊谷直樹と田頭実は、エンジン吊りでしか見かけていない。1R後はともに控室から姿をあらわし、控室へと消えていったし、2R後は九州の選手が出走していなかったから、田頭は姿をあらわしていない。ともに気合を感じる顔つきでありながら、選手仲間とは笑顔で話し合い、リラックスムード。とにかく、朝の時点では余裕である。

 

f:id:boatrace-g-report:20171218180650j:plain

 そんななか、ひとり精力的に動いていたのは、やはり小畑実成であった。1R発売中にはボートが係留所にあり、優出メンバーで唯一、着水している選手となっていた。と書いたまさに今、目の前を試運転する小畑が走っていったぞ。1R発売中の段階で着水している優勝戦メンバー、というのはSGでもあまり見かけないもの。機力がもうひとつという面はあるにせよ、ここが児島で、優勝だけを思い描いてレース場入りしたということを考えれば、その動き自体が気合のあらわれだと思う。

 もっとも、一息入れて陸に上がったときは、いつもどおりの優しい表情になってはいた。前のめりになりすぎてもいないようである。悔いの残らない地元マスターズとなるよう、小畑は全力投球。その敬虔とも言える思いは、尊いものである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)