BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――グランプリロードの最終章だ!

 

 

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 まずは平本真之からだ。準優進出ならず。悔しさをまったく隠そうともせずに、顔を歪めていた。こちらの姿を見つけると一言、「悔いなし!」。悔しいけれども、悔いのない戦いはした。結果はついてこなかったが、チャレンジしたという実感は残っただろう。

 6着で特別選抜B戦に回ることになったことが、実は大きかった。着替えを終えてピットにあらわれた平本は、独り言だったのか、たまたま近くにポツンと突っ立っていたこちらに聞かせようとしたのか、「また来年!」と叫んだ。それが明らかに「来年こそはグランプリだ!」に聞こえたので、いやいや、まだあるでしょ、可能性は、と平本に振っている。だから「来年」じゃなくて「明日」でしょ。平本はきょとんとした顔をしたが、平本のほうが状況をよくわかっていた。たとえB戦を勝ったとしても、120万円の賞金ではひとつ上の原田幸哉を超えられないのだ。そして、平本のレースの前に、笠原亮が優出を決めている。笠原は完走すれば平本を超える。つまり、平本は終戦を迎えていたのである。こちらが間違ってました、すみません。

 ただ、平本はいい解釈をしてくれた。「来年、じゃなくて、明日から、ですよね」。フォローありがとう。そして、その意気や良し。その勢いで、来年はグランプリジャンパーをゲットしよう。

 

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 同期の新田雄史も優出ならず。こちらもグランプリへの道は閉ざされた。3着という結果はあとひとつ上なら、という着順。ただ、道中逆転の目はほとんどなかったと言っていい。ようするに、不本意な結末だ。

 だから新田は、泣き顔になっている。いや、本当に泣きそうなのではなく、エンジン吊りの面々からの慰めに、目をつぶり、泣いているような顔つきをあえてしてみせたのだ。おどけているようにも見えるし、心中を思い切り表現したとも言える。エンジン吊りのあとは、うつむき加減に控室へと戻っていき、その姿からは落胆が感じられた。

 

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 赤岩善生も今年のグランプリロードを終えることになった。こちらも3着。3番手競りのような展開にもなって、これを捌いたかたちだが、グランプリ勝負駆けということを考えれば、むなしいものだったかもしれない。

 ただ、赤岩はわりとスッキリした表情を見せている。控室に戻る際に目が合い、こちらが残念だったという表情を作って見せると、赤岩はこちらに言葉をかけてきた。ヘルメットをかぶったままだったし、展示のエンジン音などが響いていて、ほとんど聞き取ることはできなかったが(「このエンジン」という言葉だけはわかった)、実にサバサバしたというか、負けて悔いなしというか、そんなふうな前向きで明るい様子だったのは感じられた(「このエンジンでここまで来れた」という意味のことだったかも。今節もいつも通りに必死の整備が続き、序盤よりは明らかに気配をアップさせていた)。しばらくグランプリから遠ざかってしまっている赤岩。だが、最後の勝負駆けのあとに、そうした表情を見せたのは状況好転の兆しだと思う。来年は一味違う赤岩を見せつけることになるかもしれない。

 

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 そして! 瓜生正義もグランプリ戦線から脱落した。一言、まさか、である。2015年が始まったとき、瓜生がグランプリに出ないなどとは想像できなかった。というより、グランプリうんぬんを問うという発想すらなかった。出て当然だと思っていたから。しかし、瓜生ですら圏内に届かないこともあるほど、グランプリへの道は険しい。甘くない。だからグランプリの輝きは、特別なものなのだろう。

 レース後は、いつも通りにサバサバしているようには見えた。あるいは、そう振る舞っていただろう。だが、僕個人の感覚と断わったうえで、はっきりと無念や不本意や絶望や自尊心の傷つきなどが、表情には貼りついていたように思った。ようするに、顔はひきつっていた。本人は決して自分を大きく見せようとしない人だが、しかし瓜生正義であるプライドは確実にあるはずだ。それがボコボコにされた瞬間。好漢の顔つきが変わるのは当然だと思う。

 まあ、瓜生には「来年こそ」なんて言葉はまったく不要であろう。来年は普通に帰ってくると思う。逆に言えば、この状況を味わってしまった瓜生が、来年は何を魅せてくれるのかが楽しみだ。新型瓜生正義の登場があるかも!?

 

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 さて、優出メンバーは、6人中4人が現時点で18位以内の選手となった。つまり、逆転ベスト18入りは2人のみに絞られた。

 いや、笠原亮は6着でも現在16位の茅原悠紀を超える。無事故完走で当確。というわけで、笠原はグランプリ行きの当確マークをつけたわけだ。

 レース後の笠原は、それを知ってか知らずか、まったくいつも通りの様子。涼しい表情だし、穏やかだし、勝利の喜びをあらわすわけでもない。記者会見も淡々と進めていた。優勝戦1号艇のプレッシャーは、たぶんこの人にはないな。笠原の興味は、グランプリよりもむしろ、明日の優勝戦を勝つことにあるだろう。

 会見が終わったあとは、間違いなくグランプリ当確を知ったと思う。報道陣が囲んでいたからだ。いくつかの取材を終え、自艇を磨き始めた笠原が、数10mほど離れて立っているこちらに気づいた。笠原は右手を掲げてガッツポーズ! 笠原が喜びをあらわす仕草を見せたのは、レース後に関してはこのときだけだ。こちらは左手を掲げて返す。明日のレース後もこんなやり取りになるだろうか。

 

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 もうひとりは、吉田拡郎だ。2年連続グランプリ出場に望みをつないだ。笠原が当確なのだから、勝負駆けにチャレンジできるのは吉田のみとも言える。闘志のスイッチを入れた拡郎が、大きな大きな関門を突破し、明日に臨む。

 それにしても拡郎は聡明だな、と改めて思う。たとえば、「明日は準V条件だと思う」とさらり言ってのけたこと。自分の立ち位置を把握しているのだ。まあ、今回は誰もがある程度はわかっているだろうけどね。ただ、拡郎が理解しているのは間違いないと、その口ぶりからも思えてしまうのである。また、コースを問われて「自分らしくないかもしれないけど……いやいや、外から行きます(笑)」と前付けも匂わせつつ、オチをつけるというあたりにもそれを感じる。相対する人を楽しもうとしているのだとしても、万が一巧みに本音を隠しているのだとしても、やはり頭がいいのだ。6号艇から拡郎は何を魅せ、どんな戦略を練って、優勝、最低でも準優勝を目指すのか。ちなみに、拡郎は今、将棋にハマってます。畠山の将棋の師匠である白井英治にも1回だけ勝ったことがあるとか。おそらく今晩から、拡郎は詰将棋を始める。グランプリ行きという王将をどう詰めるのか、必死に考え抜くだろう。

 

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 他の優出4人、太田和美、辻栄蔵、石野貴之、守田俊介はグランプリ当確組。ただし全員がベスト6の勝負駆けではある。その意欲がもっとも強いのは、まずは石野。「今年は最初からベスト6を目標にしてきた」と口にしているし、現時点で5位だからなんとか逃げ込みをはかりたいと考えているはずだ。ちなみに足のほうは、拡郎が「石野よりははっきりと出てます」と言って報道陣を笑わせてました。石野自身、ターン回りは納得でも「カドになりそうな守田さんを受け止める自信がない」というストレート系の弱さを実感しているようだ。

 

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 同様に、地元でグランプリを走る太田も、ギラギラとしたものはまったく感じさせないが、その意識はあるはず。みなさん、前回の芦屋SGを覚えてますか? 12年グラチャンです。勝ったのは2号艇の太田和美。決まり手は2コース差しです。再現あるかも!「再現できればいいですね。スタート出ればまくりますけど」。この水面のビッグレースでの好感触をもっとも最近知っているのは、間違いなく太田和美である。

 

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 辻がベスト6入りをどこまで考えているかはよくわからない。相変わらず飄々としているのだ。もちろん、ギリギリまで調整に励むのも相変わらず。基本的には太田同様、それほどギラついて見せる人ではない。

 足的には「ダッシュなら伸びる」そうです。「今日はかなりよかった。明日はわからないけど。カカカカカカ!」と煙に巻いたりもするわけだが(笑)、5号艇という枠番だけに、この伸びをさらに求めるかも?

 いや、ひとつ内枠が同期である。その人も伸びる。攻めさせてまくり差し……辻のSG初優勝は、5号艇5コースから、4コースの原田幸哉のまくりに乗ってのまくり差しだったなあ……今度は74期ラインでの再現となるのか!?

 

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 その辻の同期生である守田俊介に関しては、ベスト6勝負駆けなんてまったく伝わってきません。ダービーの優勝会見でもまるで気にしていないと言っていたし、今日のレース前もレース後も会見でも会見後も、そんな雰囲気は微塵も感じないのだ。本音は知らないけど。

 前検でのドリーム戦インタビューで、守田がいきなり報道陣に質問を振った、という話を書いた。今日は、頼まれもしていないのに、守田は自分で締めた。

「ブログで今度SG勝ったら全額貯金しますって書いたので、明日は気楽に行けます」

 ダハハハハ! ダービー優勝賞金全額を東日本大震災の被災地に寄付した守田。本来は美談のはずだが、守田はこうして笑いに落とし込むわけである。今回勝てば、かっぱ寿司250万皿分のたくわえができるぞ。一生回転寿司には困らないね、俊介!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)