終わってみればオール１号艇１着。順当な結果が続いたように見えるが、準優進出戦はなかなか激しかった。
９Ｒは伸びて攻めた野長瀬正孝が内側を押圧、川﨑智幸が落水して、野長瀬は妨害失格となっている。展示から戻ってリプレイを見ていた倉谷和信が「あぶねぇーーーっ！」と声をあげたほどの激しい落水シーンで、煽りを食った烏野賢太もなんとか鮮烈復帰したものの、半周ほど遅れてのゴールとなった。
川﨑は、ひとまず大きな負傷にはならず、普通に歩いている姿も見かけたが、無念の途中帰郷。烏野はボートに穴があいて、レース後はリフトに直行し、完走した３者より早く乗り込んでいる。レース後の烏野は淡々とした風情ではあったが、複雑な思いはあっただろう。“加害者”となってしまった野長瀬は、やはり硬い表情になっていた。
10Ｒは、スリット後には波乱の予感が一気に高まった。今村豊がインでやや後手を踏み、２コースの藤丸光一に完全に出切られたのだ。しかし、藤丸は１マークでやや流れて、くるりと回ったら今村が先頭に立っていた。荒れ水面に助けられた格好だろうか。完全に勝ち筋が見えていた藤丸は、レース後にはやはり悔しげに顔をひきつらせる。４着でも得点率的に準優進出はほぼ大丈夫ではあったが、しかし手が届いていた１着をこぼしてしまったのは痛い。
藤丸以上に悔しそうにしていたのは、江口晃生だ。江口は２マークで今村を差し、先頭に立っているのだ。ところが、２周１マークで少し艇が暴れている間に並ばれ、次の２マークで捌かれてしまった。負けたレース後は苦笑を浮かべることが多い江口が、かなり表情を硬くしていたのだから、胸に湧き上がる悔いは大きかった。その後、ＪＬＣの展望インタビューを終えた江口は、スタッフさんに「俺は納得してないんだよぉぉっ！」と叫んでいる。おそらくは自分に向けて、であろうが、腹立たしい敗戦だったのだ。
11Ｒも、スリットでは波乱の要素がたっぷりだった。田頭実が珍しくスタートで遅れたのだ。しかも２コースの長岡茂一も少し遅めのスタート。３コースの小畑実成がまくる態勢が間違いなく出来上がっていた。ところが、くるりと回ったら、田頭が先頭に立った。強い追い風で小畑も慎重になったきらいはあるが、それにしても鮮やかな小回りだったし、パワーの良さも感じさせた。
小畑は悔しさを表に出しはしなかったが、しかし手痛い２着でもあっただろう。その小畑に真っ先に声をかけたのは、長岡茂一。同期の接触で、小畑も長岡もふっと雰囲気が柔らかになった。結果としては、両者とも準優へ勝ち上がりとなっている。そのことへの安堵もしくは歓喜が少しは顔を出した瞬間だったかもしれない。
そんななかで、12Ｒは順当だった。１マークを回った直後は、２コースから差した平石和男の舳先が届いているように見えており、ちょっとした波乱もありえたところだが、２マークに到達するまでに西島は完全に振り切り、あとは内枠が上位を独占するのみだった。
外枠にはほぼ出番がなく、その３人はそろって苦笑いを浮かべている。濱村芳宏が「山一、お前、連れてけよ～～」と異議を申立て、山一鉄也も「す、すみまっしぇ～～ん」と目を細めていたが、山一のスタートタイミングはコンマ06。充分連れて行ってます（笑）。強めの追い風、高い波高、パワー充分の内枠勢と、ダッシュ勢には不利な状況が揃いすぎていたのだ。たぶん濱村は準優に届かないことを覚悟していたと思われるが、18番目に滑り込んでいる。よかったっすね！
というわけで、１号艇カルテット＝西島、田頭、今村、三角哲男はそれぞれ１着クリア。ドリーム１～４号艇だから、その時点から今節の主役カルテットだったわけですね。結果だけ見れば、ますます順当度が高まるわけである。
レース後は、西島と三角は淡々、負けてもおかしくなかった今村と田頭は苦笑い含み、とその様子までもが順当というか何というか。なんかもう、この後に波乱があるとは思えなくなってくるわけである。
とはいえ、ひとつひとつのレースの中身は、それなりに激しかったのだ。また、大嶋一也や藤丸光一が外枠になったことで、進入の妙味も生まれる準優となった。明日もまた激しい戦いが繰り広げられるのは間違いない。で、その末に順当な結果になるのかもしれないけど。（ＰＨＯＴＯ／池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
