BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

びわこマスターズ準優ダイジェスト

ボコられサバイバル

 

10R 並び順

①今村 豊(山口)10

⑤大嶋一也(愛知)10

④大場 敏(静岡)20

②三角哲男(東京)10

③長岡茂一(東京)17

⑥北川幸典(広島)16

 

 

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 関東魂の勝利、と言うべきか。まず、ピットアウトから大嶋がゴリゴリ攻めて、これは当たり前。スタート展示では三角も大場も突っ張ってごたごたの隊列になったが、本番では三角は「や~めた」ってな感じで激戦区から離脱した。これが、いかにも関東っぽい。進入に淡泊というか潔いというか、ごたごたが起きたらスッと身を引く風潮が、間違いなく関東地区にはある。それは「逃げるより、まくってナンボ」という多くの関東ファンの嗜好にも合致する。

 

 

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 コースを譲る不利と、カドに引ける利点と。今日の三角の選択は、後者に傾いた。スリットはイン今村豊とぴったり同体。で、ダッシュに引いた分だけ、グイッと力強く伸びる。さらに、カド受けの大場が1艇身近い立ち遅れ。伸びなりに舳先を傾けたら、大嶋と今村のはるか上を飛び越えるハコまくりになった。昔ながらのびわこ名物・伸びなり4カドハコまくりであり、これぞ有無をも言わさぬ関東がましという風情でもあった。もちろん、あれだけ楽にまくれたのは、三角の行き足~伸びが秀逸だという証でもある。節イチと呼ぶほどの迫力は感じないが、「3コースからインの西島に楽をさせない伸び足」ではあるな。

 

 

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 さてさて、ミスターである。今日も曲芸というか綱渡りというか、絶体絶命の展開から命からがら生き残った。まずは三角の一撃パンチ。いくらハコまくりとはいえ、インに与えるタメージはでかい。三角の引き波にハマれば万事休すという局面を、なんとか小回りの落としマイでギリギリ凌ぎきった。が、そこに他艇が左右から襲い掛かり、バック直線の2着争いは「3艇並走の真ん中やや凹み」というこれまた最悪のポジション。無理に動けばさらに悪化しそうな戦況下で、ミスターはじっと左右の敵が動くのを待ち、くるりと小さくブイ際を差し抜けた。「2着絶対」という状況での、この待機戦法。血の気の多い若手レーサーには真似のできない、「動かざること山の如し差し」だった。

 嗚呼、それにしても、今節のミスターの運動量は去年の何倍だろうか。去年はほとんど一撃KOでの完全V、今年は常にボコボコにされながらカウント9で立ち上がる矢吹丈のような日々……それでいて、優勝戦の4号艇。去年の神のような強さとはまったく異質な、真の天才の凄みみたいなもの随所に感じる今節ではある。

 

ゼロ台ファイターの神髄

 

11R 並び順

①田頭 実(福岡)09

②平石和男(埼玉)14

⑤藤丸光一(福岡)17

③吉田一郎(長崎)17

④上田隆章(香川)15

⑥山一鉄也(福岡)15

 

 

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 スリットでどーんと田頭が飛び出し、そのアドバンテージを生かしてキッチリ逃げきった。本人的にはスタート勘が掴めずニギニギして正解だったらしいが、「スタート勘がなくても怯まずゼロ台まで踏み込む」という田頭の長所(F3をも生み出す諸刃の剣だが)を生かしきったレースだった。足的にも、弱い部分が見当たらないバランス型で、2コースから十分に勝ち負けに持ち込めるパワーだと思う。ぶっちゃけ、明日のファイナルは枠なり&スリット同体なら1=2で決まる可能性はかなり高いだろう。足的なキーマンである田頭がどれだけスタートを張り込むか、それに応じてまくるか差すか、でレースは大きく変わると見ている。

 

 

 

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 2着の平石も実にらしい足色&レースっぷりで、明日は「しょせん5コースでは」などと安直に軽視すべき存在ではないと思うぞ。昨日は西島をあわやという所まで追い詰め、今日も逃げる田頭を舳先が入りそうなところまで追いつめている。ターンの出口からじわじわ加速して、そのじわじわが次のターンマークまで続き、回り足もやや強め。そんな粘っこいパワーは、混戦になればなるほど強味を発揮するだろう。もちろんスリット同体の5コースでは優勝の可能性は低いが、田頭のジカまくりやミスターの玉砕戦法??など、何かしらの非常事態が発生すれば超大穴の片棒を担ぐことになるだろう。

 

王手、だが……??

 

12R

①西島義則(広島)14

②小畑実成(岡山)13

③江口晃生(群馬)18

④新良一規(山口)23

⑤烏野賢太(徳島)15

⑥濱村芳宏(徳島)21

 

 

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 3日目から3連続で12R1号艇を任された西島。結果は311着と順調にリハーサルを積み重ねているようだが、どれも「インから圧倒」というレースにはほど遠い。今日も、バックで実成に舳先をグイグイ突っ込まれ、並みの選手なら2着確定という展開だった。1周2マークは新良を先に行かしての差し、2周1マークの手前では実成の内から「落とすとみせかけて2段で噴かす」というひとり時間差切り込みみたいな変則戦法で逆転の1着を獲りきった。常にスマートなミスターの“曲芸”に対し、こちらは裏をかく奇襲戦法とストレートな力技を巧みに使い分けて敵を翻弄する。今日の西島も、あの手この手の戦法を駆使して、なんとか1着を獲りきった(去年の準優では地元の山室&実成をボコッて賞典除外に。そんな後味の悪いレースにならなくて良かった!)。

 

 

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 この逆転勝利で、4日連続の最終レース1号艇が約束された。が、直近3戦を見る限り、「明日は西島が勝つ」とはとても断言できない。少なくとも、去年のミスターの信頼度には遠く及ばないと思う。22号機は西島の非凡な整備力で、恐ろしく出足の強いエンジンに生まれ変わった。行き足~伸びの不安もかなり解消された。ほぼ完全に西島仕様かつイン戦向きの心強いパートナーになったと思う。それでも、昨日は平石に、今日は実成に舳先を突っ込まれた。去年の児島46号機の足元にも及ばない、というのが私の正直な感想だ。今日の2着の実成と比較するなら、出足系では西島が上で、行き足は実成がかなり上、伸びはどっこいという感じ。つまり、トータルでは実成がやや上かもしれない。3日目に西島の整備力を絶賛した私だが、優勝戦の前日に至った今も22号機は節イチとは無縁のモーターだと確信している(66号機の野長瀬帰郷は残念!)。

 

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 そして、だからこそ明日の優勝戦が楽しみなのだな。パーフェクトとは言えないエンジンを西島がどう御すか、弱点を突かれて後手を踏んだらどんな手段で巻き返すか、田頭はどんな直球を西島にぶつけるか、三角に意表の4カドはないか、ミスターがどんな秘策を用意しているのか、西島が絶対ではない分だけ平石や実成による一撃大穴はないか……レース前から、力VS力、技VS技、力VS技のバリエーションをあれこれ想像できる優勝戦なのである。去年は3日目あたりからミスターに脱帽し、どんな風に優勝するかだけに興味が注がれた。今年は、難解かつコクの深い優勝戦を堪能させてもらおう。(photos/シギー中尾、text/畠山)