BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――拍手喝采!

 

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 いやはや、素晴らしいレースだった。そして、素晴らしいSG初制覇だった!

 深川真二、おめでとう!

 進入のカギを握るのは深川。それは誰もが思っていたことだろう。しかし深川は進入のカギになるだけでは終わらなかった。ファンタスティックである。

 深川の差しが魚谷智之を捉えた瞬間、聞き覚えのある声がピットでは上がっている。上瀧和則選手会長だ! 佐賀支部の後輩が、ついにSGに手を届かせた。深川はデビュー25年、その間のさまざまなことを上瀧会長は見てきたはずなだけに、苦節25年の快挙を我がことのように喜んだ。

 2周1マークで差し返されかけたときには、ため息交じりの声も聞こえてきたが、2周2マークの競りをしのいで、3周1マークで勝利を決定的にした瞬間、もう一度歓声があがって、上瀧会長は拍手し始めた。ゴールの瞬間、上瀧会長に引きずられるように、拍手が沸き起こる。そして、深川がピットに凱旋した時には、大拍手がピットを包んでいた。優勝者がこれほどまでに拍手で迎えられるのを初めて見た。

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 上瀧会長は、ピットに上がってきた深川に歩み寄り、そっと抱き寄せた。深川もハグを返し、すぐに離れて、直立不動で頭を下げた。育ててくれた先輩への敬意であろう。その次の瞬間、遅れてピットに上がった峰竜太が「やったーっ!」と声をあげて深川に抱きついた。自分は敗れた。悔しさがなかったとは思わない。しかし、かわいがってくれている先輩が、ついにSGを獲ったのだ。自分の初制覇のときは涙にくれた峰が、先輩の初制覇のときは笑顔を爆発させていた。確認はできなかったけど、目には涙があったのではないかと僕は勝手に想像している。

 祝福を受けて深川は、しかし喜びをあらわにするようなことはなかった。クールに笑いながら、仲間の声にうなずいたり、手を上げたりしているのみ。佐賀支部のSG初制覇、こうも好対照となるとは。深川は会見で「前節の大村で優勝したときと変わらないですね。SGでも一般戦でも変わらない」と言っている。自分は一走一走、すべてのレースで勝ちたいだけ。一節一節、すべての節で優勝したいだけ。だから、優勝の喜びは前節の大村一般戦と同じ。SGだからといって、喜びが大きいわけではない、というのである。

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 それもあって、峰のときのようなウェットな空気はまるでなかった。皆が穏やかに笑い、深川が穏やかに返して、ほんわかした雰囲気になっていたのである。激しい前付けを見せ、猛々しい走りを見せるイメージのある深川が、穏やかな空気を作り出す。そのギャップが、ピットの幸福感をさらに増幅させていた。

 これでグランプリは当確。面白いグランプリになるぞ~。会見でも、がんがん前付けして盛り上げると宣言していた。「枠番抽選では6号艇を引くような気がするんですけど、僕はそのほうがいいです」。今日見せてくれたボートレースの醍醐味を、暮れの最高峰でも魅せてくれる! その意味でも、深川の優勝を祝福したい。グランプリという舞台でも、変わらないたたずまいの深川真二に会えるのを楽しみにしよう。

 なお、足にケガがあるということで、水神祭は行なわれませんでした。水神祭があろうとなかろうと、めでたいものはめでたい! おめでとう!

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 敗者では、やはり魚谷智之が少し痛々しく見えた。表情をまるで変えずにモーター返納作業に向かう様子が、かえって悔しさをため込んでいるように見えたのだ。着替えを終え、帰っていく姿もどこか力なく見えた。SG優勝戦1号艇で敗れるというのは、やはりつらいことだ。

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 前本泰和の表情からも、悔恨が滲んでいるように見えた。顔を歪めたりとわかりやすい表現は見えないものの、奥歯を噛み締めているような顔つきになった瞬間があったのだ。コースが獲れなかったことも、悔しさを増す材料となったか。

 逆に、今垣光太郎は露骨に悔しそうだった。まあ、これはいつもの光ちゃんでもある。腹をくくって6コースを選択したが実らず。今日は一日、本当にバタバタしていた。記憶にあるだけで5~6回、ピット内を走っている姿を見ている。展示待機室に向かうときでさえ、走っていた。そうした調整努力が実らなかったことも、また悔しかろう。

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 白井英治はサバサバしているように見えた。3コースから攻め役になったのが白井。いいまくり差しだったと思うが、白井としてはやるだけやったという気持ちはあろう。3番手競りを獲り切ったという点でも、悔しさだけにとらわれたりはしなかったと思われる。レース前の雰囲気は、これまでのSG優勝戦とはまた違う、スッキリと落ち着いたものだった。もう一丁、階段を上ったような気がしたものだ。次の地元チャレンジが楽しみだ。

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 そして、峰は先述の通り。自分が勝てなかった場合の、最高の結果が出たのだ。負けて笑顔の峰竜太もまた良し。まだ勝って笑顔のSG優勝戦後、というのは見ていないので、次こそ見せてもらおう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)