BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――気候変化

 

 今朝は目立った動きはなかった。動きはあった。というか、ありまくった。目立った動きがなかったのだ。つまり、全員が調整に忙しい。プロペラだったり試運転だったり装着場での作業だったり、内容はそれぞれだが、とにかく誰もが手を休める様子がない。だから、各々の動きが目立たないのである。結果、ピットの空気はむしろ静かにさえ思えるのだった。
f:id:boatrace-g-report:20180523120708j:plain 一例をあげるなら長嶋万記。係留所でモーターを回して調整し、モーターを止めるとすぐにプロペラを外して調整室へ。レースが終わればエンジン吊りに駆けつけ、その後はすぐさまプロペラ調整。ペラを手に係留所へと向かい、入念に装着作業を行ない、そのままカポックを着て水面に飛び出す。1周ほどして戻ってきて、今度こそ一服か、と思いきや、またまたプロペラを外す。
 3R発売中に行なわれた守屋美穂の試運転に参加した時も同様。率先して後輩の儀式に参加し、ニッコニコで守屋を水面に放り投げ、手を伸ばして守屋を陸に引き上げると、拍手するや否やダッシュで係留所へ。休むヒマもない。

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 長嶋だけがこういう動きをしていたかというとそうではない。みんながみんな、こんな感じなのだ。今日は天候が変わった。雨が落ち、湿度は急上昇して、気圧は下がった。気配には変化があって当然。それよりも、これでどう変化があるかを選手たちは感じ取ろうとしている。朝、まだ試運転をする前の笠原亮は、すぐに水面に出られるように準備をしていたが、まだ乗っていないからこそ「どう変化があるのか」に考えを巡らせていた。これまでの経験則をふまえて、思い浮かぶこともあるのだろう。

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 モーター装着作業をしていた新田雄史。いったん整備室に向かう際にすれ違ったのだが、目のピントがどこにも合っていない感じだった。いちおう会釈をしたのだが、もちろん気づかず。つまり、調整の方向性なのか、気候が変わったことでの気配変化の予測なのか、とてつもない勢いで頭を回転させているのだ。気圧が変わるとモーターの回転は上がらないというが、選手の脳みその回転は逆に一気に上がるわけだ。選手との接触も、緊張感が増す次第である。

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 そんななかで、守屋美穂の1着にピットは沸いた。女子選手が嬉しそうに笑っているし、茅原悠紀も祝福していた。茅原に水神祭だと聞かされた白井英治も「おっ、祭りかぁ!」とテンションを上げていた(水神祭にも参加してました。詳報は別記事で!)。ちょっと薄暗いピットの中で、守屋の笑顔は実に目立っていましたよ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)