BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――準優1号艇で敗れるということ

9R 1号艇・吉田拡郎

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 2着で優出、を良しとはできない。ピットに戻ってきた吉田拡郎の表情は露骨にそれを物語るものになっていた。しかも「いったんは先頭に立っていただけに、悔しいです」。1周2マークでは差し返しをこじ入れているから、やはり1着を獲るだけだった、が吉田の思いとなる。1号艇で敗れるのは選手に特別な悔しさをもたらすが、それが準優ともなればさらに大きな悔恨となる。まあ、2着に残ったことがなんとか救いとなっている、といったところか。

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 勝ったのは田村隆信だ。予選は1着が獲れなかったが、ここでようやく出た。「明日でもいいと思ってたんですけど(笑)」と冗談めかしてはいたが、やはり安堵の思いはあったようである。
 仲間たちも、田村の思いを知っていただろうから、祝福の声が大きくなる。優出者の一通りの儀式を終えた田村を、山本隆幸が「イェーイ!」とたたえた。井口佳典にしても森高一真にしても、田村には笑顔を素直に送っていた。その笑顔は、12Rにもさらに見られることとなる。

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 飯山泰は、ひたすら残念がっていた。「全力は尽くしたんですけど……」。だからこそつのる悔しさもあるだろう。新プロペラ制度が導入されて以降、行き足から伸びを仕上げてまくるタイプの選手は苦戦を強いられる傾向となり、飯山もそうした一人となっている。今回は久々に、おおいに本領を発揮できたSG。それだけに、10年グラチャン以来の優勝戦進出を果たしたいと切に願っていた。チーム長野の僕にしても。「また頑張ります!」と最後に力強く言い切って、控室へと戻っていった飯山。これがひとつのステップボードとなることを望む。

10R 1号艇・中田竜太

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 エンジン吊りの間も、笑顔を浮かべてはいながらも、思い切り顔が引きつっていた。中田竜太はまさかの3着。道中は舟券圏外を走ってもいたから、最後は3着に浮上したものの、思いもよらぬ敗戦だったことだろう。
「持ってないっす……」
 そう言って肩を落とす中田。SG初優出の大チャンスをフイにしたことで、落胆は大きいようだった。その思いを糧にできるのかどうか。今日の戦いを経て、中田の課題はそこになるだろう。リベンジの機会は、早々に引き寄せなければなるまい。

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 中田を負かしたのは、群馬コンビ! ピット離れで出た毒島誠が、徳増秀樹の前付けを入れて3カドに。スタートを決めて一気にまくって、土屋智則がこれに続いた。毒島は土屋の会見に顔を出して、「うちの後輩はインタビュー慣れしてないんで、大丈夫ですか?」とおどける場面も。やはりゴキゲンだ。「SGの準優で後輩とワンツーを決められて、やっぱりうれしいですよ」と、最高の結果を出せたことが毒島のテンションを上げる。

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 一方の土屋は、いったんは徳増に逆転され、これを抜き返しての優出。毒島とグータッチをしていたが、同期の西山貴浩からも祝福されて顔をほころばせていた。「西山からのアドバイス? まったくありません!(笑)」。まあ、そうだろうけど(笑)。同時に、同支部の先輩が相手とはいえ、コースを奪われたことには少々の悔恨を残したようだ。ピット離れでのものだから仕方ないようにも思うが、自分が主導権を握れていれば、徳増に抵抗しての2コースでも、自らの3カドでも、さまざまな戦法で勝ち筋を見つけられていたはずだけに、それを悔しがることも理解できる。それでも、SG初優出はめでたい! 明日は悔いなき戦いを見せてほしい。

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 あとは、羽野直也。声をかけると、「まだまだです……まだまだです」と繰り返した。スタート展示では5カド、本番は3コースがカドになっての5コース。やや不利な状況になったようにも思うが、敗因をそこに求めずに自分と向き合う姿は清々しい。「もっと強くなってきます」。次に臨むSGはメモリアル。あと1カ月半、羽野はさらに努力を積んで丸亀に向かう。

11R 1号艇・峰竜太

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「…………ミスターン、しました?」
 まったく信じられないことが起こった、というふうに峰竜太が僕に向かって言う。正直、まったくわからなかった。1号艇が連敗する中、しかし峰は堅いと確信していたし、僕自身、2艇に差されるなどというシーンは信じられなかった。だから、あれが峰のミスだったのかどうかは、まるで判断がつかなかったのだ。
 そう、峰までもが飛んだ。1号艇がすべて敗れるという波乱の準優。峰自身、こんな負け方は想像していなかっただろう。それだけに、レース後の峰は今までにない、ただただ首をひねるという姿を見せていた。流れが来たと思えたのは、気のせいだったのか……。

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 埼玉の竜太を破ったのが群馬コンビなら、佐賀の竜太を破ったのは大阪コンビだ。丸岡正典の差しと石野貴之のまくり差しがズバズバと刺さった。二人はレース後すぐに地上波放送のインタビューに呼ばれている。その様子を眺める、井口佳典、森高一真、そして田村隆信。笑わそうともしているぞ(笑)。同期の丸ちゃんが、1号艇で優出! 銀河系軍団にとって、田村の優出も併せて、めでたいオーシャンカップとなったわけだ。丸岡は、優勝戦ポールポジションとなったにもかかわらず、いつも通り飄々としていて、その柔らかな顔からはいつでもニャハハ笑いが聞こえてきそうなのだった。

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 石野はなんだかんだで今年SG初優出。夏場になって、石野らしい凛々しい表情が輝き始めた。石野は優勝ならオーシャン4V。王者に並ぶことになる。6号艇はさすがに不利ではあるが、乗ったときのこの男なら、という期待もある。
 それにしても、明日は縁のある選手が同乗する優勝戦となった。石野にとっては、吉田拡郎が同期生。丸岡とは大阪同士。群馬コンビがいて、銀河系コンビもいる。陸では仲の良い間柄の者たちのガチンコ勝負。真夏の夜の若松に、コクの深い優勝戦が光を放つ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)