BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ダービーキングの微笑

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 ピットに四六時中張り付いていたわけではないが、たぶん守田俊介は今日一日、ほとんど何もしていない。2R発売中にプロペラ装着をした話は前半の記事に書いた。そのときから、ボートは8R発売中までまったく動かされていなかったのだ。もちろんプロペラもついたまま。10R発売中にスタート練習があったため、9R発売中になってようやくボートを着水させたが、その後もペラ室や整備室に入った様子はなかった。文字通りのノーハンマーで、守田はダービーキングになった!

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 9Rのエンジン吊りに出てきたときに、ちょっと顔色が変わっているように見えた。すでに予選トップからの優勝戦1号艇は3年前に浜名湖で経験しているとはいえ、やはり重圧がゼロになるわけではない。「3年前よりは大丈夫でした」とはレース後に語っているが、しかし緊張感は容赦なく守田に襲い掛かったようだ。だが、それが守田から実力を削ぐものにはなりえなかった。プレッシャーをしっかり感じ、しっかり乗り越えて、守田はダービーキングになった!
 それでも、勝利を手にした守田は飄々と見える。笑顔が特別に爆発するわけではなく、周囲からの祝福を受けても、穏やかに微笑をたたえるのみ。それはもしかしたら照れ隠しなのかもしれないけれど、ともかく淡々としているのが守田俊介という男なのだろう。なお、今日は「回転寿司を買い取ったろうかと思ってます」だそうです。そうしたトボけたジョークを優勝後に飛ばすのもまた、守田俊介だ。

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 いち早くモーター返納を終わらせた井口佳典が、守田のもとに駆け寄って頭を下げた。おめでとうございます、と握手を求め、両手を差し出し、もう一回深々と礼をした。それに対しても守田は飄々と返すわけだが、激しく礼を尽くすあたりが井口佳典らしさだ。胸の内に悔しさはうごめいていたはずだが、それをぐっと収めて人と接するのだ。

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 池田浩二と石川真二が、お互いに苦笑を交わし合っていた。石川はピット離れが飛ばずに3コースで、コースのもくろみはお互いに違っていたかもしれない。1マークでは、石川がイン換わりの策に出て、池田は狙っていた差し場に飛び込むことはかなわなかった。コース獲り、1マークと二人はまさにぶつかり合ったと言っていい。そして、ともに大敗してしまった。お互いに、相手に向ける表情は苦笑しかなかっただろう。返納を終えたあとには、池田はさらに大きな苦笑いを見せていた。ようするに、めちゃくちゃ悔しがっていた。見せ場を作れずに敗れた地元ダービー。苦笑の奥には簡単に流し去れない思いがあるのは間違いない。

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 篠崎元志と石野貴之は、サバサバしているようにも見えたし、表情をカタくしていたようにも見えた。そんななかで、二人はメダル授与式のために、素早い着替えを要求される。仲間と悔しさを分け合うこともしないまま、黙々と次の動きを始めていた篠崎と石野。なんの慰めにもなるわけがないが、2番手争いは素晴らしい意地のぶつかり合いだったと思う。

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 結果的に、並びは枠なり3対3。さまざまな進入パターンが考えられるなかでこうなるとは、これもまたボートレースの面白さだ。この優勝戦は、見事なまでに役者が揃った至高の優勝戦だったと思う。そんなレースを勝った守田俊介は素晴らしい! 明日は美味い回転寿司を(というかガリを)堪能してください!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)