BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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芦屋チャレカW優勝戦 私的回顧

花束のタスキ

12RSGチャレカ優勝戦
①馬場貴也(滋賀)08
②峰 竜太(佐賀)12
③赤岩善生(愛知)10
④石野貴之(大阪)16
⑤毒島 誠(群馬)18
⑥片岡雅裕(香川)18

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 群馬旋風の次は、シガシブ旋風だ!
 びわこのスピード野郎・馬場貴也がギリギリ逃げきった。進入は穏やかな枠なり3対3。私の脳内レースの大本命(願望)は「ほぼ横一線のスリットでイン馬場と4カド石野だけがやや覗き、石野が伸びなり絞めまくり、それを伸び返した馬場が受け止めながら先マイしてバック直線勝負」というスリリングな展開だった。
 が、現実は石野も含めてダッシュ勢が半艇身ほど後手を踏み、完全な内寄り決着。スリット1艇身・全速の石野が遅かったというより、コンマゼロ台の馬場を褒めるべきだろう。

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 私が日々注目していた「石野42号機vs馬場44号機」の直接対決は、4回ともに道中で舳先を並べることも交差旋回することもなかった。うーん、残念。あと100回くらい見たかったなあ。最後の最後まで決めきれなかった「節イチ」は、4連続で先着した馬場ってことでいいでしょ。馬場クン、SG初優勝とGPチケットと全国コースレコードホルダーという勲章に加えて、私からも「SS級」の称号を贈るとしよう。何の意味もないけど(笑)。

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 さてさて、スリットをゼロ台で通過した馬場は、その瞬間に緊張したと言う。外からは何も見えず、勝利を意識したからだ。心と体がわずかにズレたまま1マークに近づいた馬場は、まんまチグハグな初動のハンドルを入れた。ターンマークを外しての握り過ぎマイ。すかさず2コースの峰がダイナミックな差しハンドルを入れる。例によってそれは早くて速く、スタンドにいた私の目には完全に捉え切ったかに見えた。

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 峰なのかっ??
 不良航法の減点がありながら予選2位で準優1号艇~ファイナル2号艇まで上り詰めたスピードモンスターの舳先が、間違いなく入る。そう思えた。が、そこから先の44号機のレース足はどうだ。「舟が返る」という専門用語を使うなら、それは巨大なブーメランのように俊敏に鋭角に返ってきて峰の舳先をシャットアウトした。この、舳先が振りほどかれた瞬間に、馬場はふたつの宝物を同時に手にしたと言ってもいいだろう。相手が峰であっても、今節の馬場44号機はこの隊形から抜かれるはずもなかった。

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 おめでとう馬場クン! 正直、初日のレースを見るまで今節の馬場貴也はまったくのノーマークだった。海千山千の勝負師たちが跋扈するチャレンジカップという激辛の舞台で、「人格者」として知られる滋賀の支部長が頂点に立つとは露も思わなかった。それが、なんとなんと蒲郡ダービーの守田俊介に続いてSGタイトルを獲ってしまうとは!

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 ダービーを勝った夜、帰途の車に同乗していた馬場に「次はお前の番だ」と優勝セレモニーで受け取った花束を渡した俊介。そのわずか1カ月後に、それを実現した馬場。ウェディングブーケならぬ“ウイニングブーケ”とも呼ぶべき出来過ぎのエピソードではあるが、今日の優勝は色んな意味でサプライズではあったなぁ。しかも、本人が賞金ランク9位でGP参戦するのみならず、この勝利は守田先輩の第6位=トライアル2ndを決定付けたのだ(結果的に1~3着の誰が優勝しても6位ではあったが)。

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 こう言ってはなんだが、「弱小」とも呼ぶべき滋賀支部からふたりのレーサーがGPに参戦するのは超サプライズな出来事だろう。俊介を陰から見守る私にしても、嬉しい限りだ。カラッキシの整備下手で「ちょっと目を離すとすぐサボる」(by馬場)というダメダメな先輩にとって、律儀に実直に勤勉にピット仕事をこなす同県の後輩は実になんとも心強い。逆に、初のGPでコッチコチになるかもしれない後輩にとって、すでにGPを経験していてるちょいと間の抜けた先輩(失礼!)は、大きな心の安らぎになるはずだ。
 うむ、そんな「弱小支部」(たびたび失礼!!)の凸凹コンビが、メッカ住之江のピットでどんな相加相乗効果を生むのか……ここ1カ月のチームびわこの激流を踏まえれば、クイクラの遠藤エミも含めて「びわこ駅伝SG制覇リレー」のタスキが住之江の最終日までつながっちゃうかも?? そんな見果てぬ夢を酒の肴にしながら、これからエビス屋で祝杯を挙げるとしよう。

明日への布石

11R女子チャレカ優勝戦
①守屋美穂(岡山) 16
②今井美亜(福井) 19
③日高逸子(福岡) 15
④小野生奈(福岡) 15
⑤山川美由紀(香川)17
⑥大山千広(福岡) 21

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 見ててください。
 常々こう言い続けているミポリンが、大観衆の前で最高のパフォーマンスを披露した。初の女子ビッグ制覇、おめでとう! 堂々の予選トップ通過でのイン逃げVは、守屋美穂というレーサーの今後に大きな自信をもたらすことだろう。年末のクイクラ(初日は2号艇発進)はもちろん、来年3月の地元・レディースオールスターへの弾みになったはず。そして、それら一連の女子ビッグで今節のように奮闘すれば、来年7月のオーシャンカップの切符も手中にできる。この優勝を踏み台として、活躍すべき場所をもうひとつ上のステージにしてもらいたい。

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 敗者について書こう。まずはグレートマザー日高。GⅡのファイナルで、いきなりあまり経験のない3カドをやらかす57歳ってあなた! スタートもキッチリ1艇身で突っ込み即座に内の今井美亜をゴリゴリ絞めつけたが、惜しくも優勝戦のパワー相場では通用しなかった。うん、ピットアウトから1マークまで実にいいものを見せてもらった。それはまさに「中高年を元気にさせるレース」(by優出インタビュー)だったぞ。逸子ママ、何歳になってもあんたは凄い!!

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 そして、このレースで唯一の「QCチャレンジャー」だった大山千広・22歳にも天晴れを贈りたい。1マークで後手を踏み、バック直線は先団とかなり差のある4番手。クイクラへ是が非でも3着が欲しい千広は最内をするする伸びて、1周2マークの俊敏な小回りで3番手争いに持ち込んだ。今井の激辛の絞め込みで再び3艇身ほど水を開けられると、今度は2周2マークで前を行く今井に突進、ダンプして3着をもぎ取ろうとした。なんたる勝負根性! この奇襲は惜しくも届かず逆転のクイクラ入りは果たせなかったが、まさに後生畏るべし。百戦錬磨の逸子ママやSG常連・生奈の背中を見つめながら、どんだけ強くなるのか。今日もまた計り知れないポテンシャルの高さを我々に見せつけた。

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 そしてそして、57歳の3カド奇襲を敢然とブロックし、激辛の絞め込みで若き22歳の野望を打ち砕いた今井にも拍手、拍手。自身は優勝してもクイクラに届かない身の上でありながら、それでも目の前の敵を競り潰す。かつて将棋の故・米長邦雄が「自分は消化試合、相手が勝てば昇級という一局こそ、絶対に勝たなければならない」という名言を残したが、今日の今井がまさにそれだった。来年は、間違いなくクイクラ当確のランプを点してチャレカに参戦することだろう。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)