たったひとりの下克上PART1
11R女子チャレカ優勝戦
①守屋美穂(岡山) 19
②小野生奈(福岡) 12
③寺田千恵(岡山) 18
④長嶋万記(静岡) 20
⑤平高奈菜(香川) 22
⑥深川麻奈美(福岡)24
寺田、長嶋、深川……年末クイーンズクライマックス勝負駆けの下位3戦士が1マークから抜け出し、W優勝戦の第一弾は383倍の大波乱となった。とは言え、この下克上を演出したのは賞金ランク3位の小野生奈だった。他の5艇より半艇身ほど突出したスタートから伸びなりのジカまくり! この福岡の元気娘がここ一番で見せる必殺技だ。
だが、まくられたら大敗必至のイン守屋が、ギリギリ伸び返しつつ舳先ひとつで応戦。それでも握り倒そうとする生奈ともつれ合ったまま、2艇はずんずん真横へと流れ去った。女子賞金2位vs3位の大競り、蒲郡心中。
ごっつあんっ!!
そんな叫び声が聞こえそうな勢いで、3コースの寺田が誰もいない内水面を差し抜けていく。とりあえず2着条件のテラッチとしては、この瞬間にクイクラ当確がほぼ確定したと言っていい。さらに4カドから長嶋が、アウト6コースから深川がズボズボの差しハンドルを注入。この両者、たとえば先頭が賞金上位の守屋や小野なら2着でもクイクラ入りのチャンスがあるのだが、前にいるのは「目の上のたんこぶ」寺田だから1着が絶対条件だ。
特に、今年のクイクラは浜名湖だからして、長嶋が燃えないはずはない。寺田を追って追って、外から強ツケマイを連発! これぞ勝負駆け、の鬼気迫るモンキーターンに何度か寺田の艇がよろけそうになった。単にクイクラ勝負駆けだけで言うなら、寺田は逆転の2着になっても当選となる。が、その場合に長嶋と入れ替わりで落選するのは、同支部の可愛い後輩・田口節子だ。
もちろん、長嶋と死闘を演じているテラッチにそんな皮算用が浮かぶ余裕はないはずで、「この展開で絶対に負けられない、負けたくない」という気持ちのこもったターンで長嶋の猛攻を防ぎ続けた。万記は本当に惜しい惜しい2着だったが、「ボートレースは選手の気持ちが120%投影される格闘技」という特長を余すところなく魅せてくれた。今日のところは「お疲れさま」の労いの言葉を贈りたい。
それにしてもの寺田千恵。今年は女子戦線を含めてあまり目立たないまま賞金ランク14位で蒲郡へ。さすがに今年は8年連続で参戦していたクイクラの皆勤賞が途切れるかも、などと思っていたものだが、最後の最後に「王国の女帝」の底力を見せつけた。14位から一撃6位の下克上ランクアップで、ただひとり9年連続でクイクラへ。参戦してしまえば、言うまでもなく主演を張れるベテラン女優のお通りだ。
★女子賞金ランク
1守屋美穂(岡山)
2平山智加(香川)
3小野生奈(福岡)
4平高奈菜(香川)
5大山千広(福岡)
6寺田千恵(岡山)
7松本晶恵(群馬)
8細川裕子(愛知)
9香川素子(滋賀)
10岩崎芳美(徳島)
11遠藤エミ(滋賀)
12田口節子(岡山)
たったひとりの下克上PART2
12R優勝戦
①毒島 誠(群馬)11
②久田敏之(群馬)11
③篠崎仁志(福岡)10
④稲田浩二(兵庫)10
⑤岡崎恭裕(福岡)07
⑥平本真之(愛知)09
ここ3年ほど何度も何度も書いてきたが、ブス君、強い、強すぎる! 今日もスリット横一戦から同県の怖い怖い久田がややスリットから覗いても、まったく慌てることなく唯我独尊の高速インモンキーで久田らを寄せつけずに逃げきった。旋回そのものはややターンマークを外した握りマイではあったが、「万が一にも久田さんに差されることはあっても、絶対に外からはまくらせない」という潜在意識の表れだったかも?
強めの握りマイで1マークを先取りしたらば、そこからの押し足に1ミリの陰りもなし。久田の2コース差しもパワー満点に見えたが、それをも上回るレース足で一気に2艇身ほど突き放していた。前検ではひ弱に見えた71号機が、6日後にはこんな立派な足色でシリーズの頂点へ。昨日も書いたが、今節の毒島は(も)相棒のポテンシャルを最大限に引き出した。モーターと対話しながらどんどんその気にさせる手練手管は、どんなナンバーワンホストにも負けないだろう(笑)。
この優勝で暫定2位だった吉川元浩をまくりきって2位=GPトライアル2ndの1号艇をGET。今年はちょっと手間取ったくらいな気もするのだが、1位・峰竜太とともにキッチリと“定位置”に返り咲いた。ミネブス時代かブスミネ時代か、ファンによって後先は変われど、このふたりの勢いはしばらく留まることを知らないだろう。そして、ダービー準V→チャレカVという勢いのある航跡は、去年の石野貴之にも一致する。その石野のGPでの結果は、もちろん言うまでもないだろう。
うん、ブス君のSG優勝に関してはあれこれ書き尽くした気がするし、今後もちょいちょい書くことになるから、このへんで勘弁させていただこう。チャレカ=GP勝負駆けというテーマに移るなら、もちろんMVPは2着の岡崎恭裕だ。
今日の岡崎は枠なり5コースからしっかりゼロ台まで踏み込み、自慢の伸び足で稲田を叩きながら大きな弧を描く放物線状のまくり差しを放った。ターン出口では毒島、久田の群馬勢に次ぐ3番手。毒島1着の場合はまさに3着でもGP滑り込みとなるのだが、2マークの岡崎は「3着なんかいらん」という気迫で攻めた。前を行く久田の内に鋭く舳先をねじ込み、さらに毒島の内フトコロまで掬ってしまおうか、という気合の猛攻ターン。
私の目にはかなりリスキーな強攻策にも見えたものだが、そこからの出足が素晴らしい。差しに構えた久田をシュッと突き放す押し足で、瞬く間に2番手を獲りきってしまった。間違いなく、相棒の64号機を信頼しきっているからこその先制攻撃。逆に自信がなければ、3着キープの守りに入る旋回からピンチを招いた可能性もあるだろう(岡崎が【ブス君1着なら3着OK】を知らなかった可能性もあるが、そのあたりの計算はしっかり念頭に置く軍師だと私は認識している)。攻撃は最大の防御、という定石を思わせる2マークの猛攻だった。
その後は危なげなく後続を振りきり、岡崎はGPには余裕たっぷりの2着でゴールを通過した。今節、GPボーダー圏外から下克上の18位を遂げたただひとりの戦士。斬られた相手が守田俊介というのは悲しい限りだが、6日間に渡って同じ土俵で勝負した結果の入れ替わり。俊介もどこかでレースを観戦しながら、潔く首を差し出したことだろう。16位までジャンプアップした岡崎には、平和島GP1stでも今日と同じ黄色いカポックから下克上の猛攻を見せてもらいたい。圏内でただひとり涙を呑んだ俊キチの分まで奮闘しないと、承知しませんぞ、岡ピー!!
★賞金ランク
1峰 竜太(佐賀)
2毒島 誠(群馬)
3吉川元浩(兵庫)
4篠崎仁志(福岡)
5深谷知博(静岡)
6寺田 祥(山口)
―以上GPトライアル2nd―
7菊地孝平(静岡)
8瓜生正義(福岡)
9白井英治(山口)
10徳増秀樹(静岡)
11平本真之(愛知)
12新田雄史(三重)
13茅原悠紀(岡山)
14松井 繁(大阪)
15井口佳典(三重)
16岡崎恭裕(福岡)
17西山貴浩(福岡)
18前本泰和(広島)
1億円を奪い合う今年のGPは以上のメンバーで決まった。つらつら眺めてみたらば、舞台が平和島だというのに関東から生き残ったのは毒島ただひとり。嗚呼、東京在住者としては実に寂しい眺めではあるな。東都のボートレースファンの多くは、やや途方に暮れながらも関東代表のブス君にアツい一票を投じることだろう。(photos/チャーリー池上、text/畠山)