BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――激しき準決勝、楽しき枠番抽選

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 3着以内なら決勝行き。枠番は抽選だから、準決勝の着順にこだわる必要もなし。しかし、やはり1号艇で負ければ悔しいものである。吉川元浩からは、勝ち上がりの安堵感や歓喜のようなものなど、微塵も感じられなかった。この数十分後の話になるが、決勝の枠番もああだったのだから、11月30日は吉川にとってあまりいい一日ではなかったかもしれない。会見では「ピット離れがいい」と言っていたので、明日の戦略が気になるところ。今日の鬱憤を晴らすためにも、黙って6コースはないような気もするが、果たして。

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 勝った瓜生正義は、清々しい表情だった。鮮やかに差しが決まって、瓜生らしく「恵まれました」とコメントしてはいるものの、手応えのようなものを感じただろう。会見では、「あみだに全力をかけます」といって報道陣を笑わせた。全力のあみだくじって(笑)。全力の結果、外枠になっちゃったんですが。

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 田村隆信は粛々とピットに戻ってきている。レース後、それこそ枠番抽選も含めて、その雰囲気は変わらなかった。ダービー、チャレンジでも書いてきたとおり、今の田村は「平常」を己に課している。それが今日も見られたということになる。さあ、明日はどうする。絶好のチャンスに、それでも平穏にふるまうのか。それとも気合の踏み込みがあったりするのか。楽しみである。

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 赤岩善生には悔しすぎる一戦となった。いったんは3番手をしっかり走ったのに、田村に逆転された。最後の最後でトーナメントの神様の微笑みを見ることはかなわなかったのだ。今日は最終日前日ということで、レース後は洗剤を使ってのボート洗浄が行なわれている。赤岩も当然これに加わったが、スポンジでボートをこする手が弱々しい。力が抜けていたようにも見えていた。真っ先にその輪を離れたのも赤岩。昨日までの力強い表情を見ているだけに、その明暗は非常に色濃く映った。

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 毒島誠、3連勝! 進入で今垣光太郎のまさかの前付けがあったが、動じずに逃げ切った。今日の毒島もギリペラ。はかったように締切7分前に調整を終え、締切5分前に展示ピットにボートがついた。今朝の永井彪也と違って「至急移動してください」のアナウンスはかかっていない(笑)。まさにいつも通りの調整と動きで、いつも通りのレースを見せて、決勝行きを決めた。その姿には貫録すら感じる。

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 それにしても、今垣はただただ落胆するしかないレースとなってしまった。バックで2番手を走り、前付け2コース奪取成功と思われたが、2マークで長田頼宗に逆転を許し、それでも決勝圏内の3番手だったのだが、3周1マークで4番手に下がってしまった。ピットに戻り、出迎えた仲間がボートを装着場に押していくなか、今垣はとぼとぼとした歩様で、離れてついていくのだった。ボートを洗浄しながらも、対岸ビジョンに映るリプレイが気になって仕方ない様子で、厳しい表情で何度もボートとビジョンに視線を移し続けるのだった。

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 師匠・原田幸哉の拍手で出迎えられた柳沢一。逆転3着で決勝行きだ。それでも淡々としている柳沢。明らかに師匠のほうが嬉しそうに見えた(笑)。同支部で、同じレースを走った磯部誠を気遣う場面も。ともに決勝に駒を進めるのが理想だったはずだけに、自分のことよりもまず後輩に意識を向けたのだろう。

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 長田頼宗が決勝に残った! 地元の責任感をきっちり果たしたと言える。1マークも、中へこみの隊形になって、躊躇せずに攻めた。2着とはいえ、見事な決勝進出である。その安堵や歓喜もあったのだろう、ボート洗浄の長田はやわらかい表情。永井彪也もうれしそうに笑みを浮かべていた。明日は全力で一発勝負をかけるのみ!

<枠番抽選>

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 1回戦から準決勝まで、選考順位が枠番の基準となり、選考上位が明らかに有利だったこのトーナメント(3戦連続1号艇だった吉川元浩曰く「宿舎では僕に聞こえるように、みんな愚痴ばっかり言ってた(笑)」)。しかし、決勝戦は選考順位関係なし! 6枠すべてが抽選で決定される。
 その抽選も、他に類を見ないあみだくじ! 平和島実況の福田アナがTwitterで「スーパーあみだマシーン」と言及していたことから、それはいったいどんなものかと我々の間では話題になっていた。昨夜の酒席では「とか言いつつ、レース場目の前のドン・キホーテで模造紙買ってきて、マジックで線引いたものだったりして」とバカ話をしていたのだが……たしかにスーパーあみだマシーンだった! 正式名称は抽選機(あみだ式)だそうですが。

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 このあみだマシーン、まず出発点となる左端には、上から毒島誠、瓜生正義、吉川元浩、長田頼宗、柳沢一、田村隆信のネームプレートが貼られている。これは、いわば抽選順であって、準決勝1着グループ、2着グループ、3着グループで着順上位が早い抽選順。同グループのなかでは選考順位上位が優先され、準決勝1着で選考順位の毒島が当然、抽選順1番となるわけである。

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 で、この順番で何をするかというと、①枠番が隠されたプレートを、あみだのゴールとなる右端の、自分の好きな位置に貼る。どのプレートを貼るかも選択でき、まあ枠番が隠されているのでどれでもいいと言えばそうなのだが、しかしそれが運命を決める可能性もあるので、なかなか重要なところ。と言いつつ、毒島は特に迷う様子もなく、自分に最も近いプレートを取り、右端の一番上に貼った。以下、瓜生が上から2番目、吉川は上から4番目……などといった感じで淡々と進んでいる。

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 もうひとつ、行なうことがある。②各選手、あみだの好きな場所に線を一本引く。といっても、線を引ける場所は10本用意されており、そのなかから好きな場所を選ぶ方式だ。これも“抽選順”に行なわれ、毒島は⑧、瓜生は③、吉川は⑤、長田は⑩、柳沢は⑦、田村は④を選択した。これで、あみだくじは完成! さあ、抽選の結果は!?

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 ここからがまさにスーパーであった。まずは毒島のあみだをスタートさせるわけだが、これがテンションアゲアゲの金属音で「キュンキュンキュン!」と唸りをあげて線上を光が進んでいく。辿り着いたのは上から2番目。その瞬間にまず、抽選会場にはどよめきが起こったほどだ。いや~、素晴らしすぎるぞ、スーパーあみだマシーン! 辿り着いた場所のプレートをめくると、毒島誠、2号艇! ふたたびどよめき! そして毒島の悲鳴!(笑)3連勝できたのに、1号艇じゃないんだもんね。これがBBCトーナメントの醍醐味であろう。
 つづいて瓜生のあみだがスタートして、辿り着いたのがいちばん上。プレートをめくると4号艇。毒島と瓜生がプレートを貼った場所を考えれば、毒島が瓜生に4号艇をプレゼントし、瓜生が毒島に1号艇をプレゼントしたかたちですかね。

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 3番手の吉川のあみだは、キュンキュンキュンと進んで下から2番目。めくると、嗚呼、6号艇! その瞬間、吉川はがっくりと腰を折り、会場には笑いが起こり、瓜生はニコニコ顔で吉川の背中を叩いて慰めるのであった。2勝2着1回なのに6号艇とは……。

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 次の長田は、平和島関係者がこっそり「1引け、1引け」とつぶやくなか、上から4番目に辿り着いた5号艇。そして柳沢はいちばん下に辿り着いて3号艇。その瞬間、目を丸くする田村! そう、1号艇が最後まで残ったのだ。田村のあみだが辿り着いたのは上から3番目。ここにプレートを貼ったのは、長田だった。選手代表のプレゼントは田村の手に!

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 というわけで、決勝戦は別項のとおりの枠番に決定しました。いや~、楽しかった! やはり枠番抽選は盛り上がる。そしてスーパーあみだマシーンは素晴らしかった。これ、来年の若松でも使うんでしょうか。ともかく、いよいよ明日は決勝戦! それぞれが思惑を抱いて、初代チャンピオンを目指して真剣勝負!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)