BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――匠たちの勝負駆け!

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 11R、前本泰和が3着。勝っていれば得点トップ当確。2着でもかなり有利な立場となっていたが、3着。4番手から逆転しての3着ではあるが、少々痛かったというべきか。前本がどこまで把握していたかはわからないし、こうしたときにも露骨に表情にあらわすタイプではないので、心中を察するのは難しい。ただ、前半のほうが好仕上がりだったようだし、機技両面で不本意なレースではあるようだった。

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 予選トップの座は、12Rの村田修次の結果次第となった。村田は2着以上でトップ通過。12Rが始まって、ふと選手の喫煙所のほうを見たら、その先に前本がいて、モニターを見つめているのだった。レースは、吉川元浩が逃げ切り、村田修次が2番手へ。立間充宏も大外から食い下がったが、村田の2番手は決定的な様相となっていった。そのとき前本の表情は……というと、これが少しも変わらないのであった。悔しがったり、苦笑いを浮かべたり、そうした様子が一片もない。自身の2位が決定的になった状況に、どんな心中であるのかはやはり察するのが難しかった。

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 トップとなった村田も、レース後にその歓喜を示すような様子は見られていない。表情は明るく、吉川元浩と微笑を浮かべながら話す場面もありはしたが、どちらかといえば淡々としているように見えた。ともかく、これで名人位はぐっと近づいた! 若手のころから見ているので、「村田修次名人」という物言いにどうしても違和感は拭えないわけだが、ひたすら若々しい名人の誕生も楽しみではある。なお、結果的にこの野添がボーダー18位だった。

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 ボーダーラインの攻防は、出入りはなかなか激しくなった。9Rで野添貴裕が2着、得点率は5・60。ボーダーはこの近辺にずっとあったので、その後のレース次第ではまだわからないところ。野添がピットを往来する場面は何度か見たが、10R以降の結果に一喜一憂するようなところは特に見られていない。

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 10Rは市川哲也が逃げ切り。これで6・00にまでジャンプアップした。これは準優安全圏。西島義則先輩の前付けがある厳しいイン戦をしのいだことで、まずは安堵の表情を浮かべるのであった。祝福に出てきたのは都築正治で、市川はどうやらアドバイスを授けてもらっていた様子。都築の顔を見ると、破顔一笑で「ありがとう!」と頭を下げた。都築もまた満足そうに笑い返す。都築も安堵の思いがあったかもしれない。

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 3着で5・60だったのは岡瀬正人だ。18位の野添は1着がないので、もし3着で踏ん張れれば初日に勝ち星をあげている岡瀬が上位となっていた。もちろんその時点ではそんな細かい順位は判明していないわけだが、4着5・20でほぼ望みがなくなったことは認識できる。岡瀬の顔には、たしかに悔恨が張り付いていた。寄り添ったのは林美憲。そうか、この二人は同期か。そこにこのレース2着の徳増秀樹がやってきて、「岡瀬ごめん」。あ、これも同期だ。同期が同期を蹴落とすような結果になるという非情。もちろん両者に禍根など残ろうはずがない。

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 11Rは荒井輝年が3コースまくり差しでインの王者を撃破! これで得点率を5・80に伸ばし、見事に勝負駆け成功である! これは値千金ですぞ。津のボートリフトは3艇しか乗れないので、まず1~3着が陸に上がり、その後4~6着が上がってくる。荒井はまず、2着の松井、3着の前本に頭を下げ、礼を尽くしている。通常、1~3着の選手は先にカポック脱ぎ場に向かうのだが、荒井はその場に残った。そして、4~6着の選手が上がってくるのを待って、頭を下げた。全員にその場で礼を尽くしたのだ。これが荒井輝年のお人柄、ということだろう。ともかく、水面も陸の上もお見事!

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 12R、勝負駆けとなっていたのは、三嶌誠司と立間充宏。三嶌は2着勝負、立間は3着勝負だ。三嶌は無念の4着。今日は前半でも5着であり、大きな着順を並べてしまったのは実に痛かっただろう。レース後、眉間に浮かんだシワがなかなかはがれそうにないほど、厳しい目つきで戻ってきている。

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 一方、立間は3着! ピット離れで後手を踏み6コースになったときにはどうなることかと思われたが、結果的にまくり差しの展開が向いて、1マークの出口では2番手もあるかという態勢になっていた。この立間に寄り添ったのは、やっぱり寺田千恵! 立間の手からヘルメットを受け取り、大事そうに持ちながら、肩を並べてカポック脱ぎ場まで歩いた。うーん、素敵な光景です! 寺田は水をかぶったヘルメットを丁寧に拭いてもいました。ナイスカップル!

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 遅れて、5着に敗れた石渡鉄兵が立間に「ごめん!」と右手を掲げながら声をかけた。石渡は無事故完走で準優行き。立間がバナレで遅れた瞬間、6号艇から容赦なく5コースを奪ったのが石渡である。この二人は同期生だが、そんなことは関係ない。同期が勝負駆けであろうと、手を緩めず失着を咎めにいくのだ。もちろんレース後はノーサイド。立間は気を遣わせて悪いね、とばかりに、笑顔で「ごめん!」と返している。結果的にともに準優進出! 明日は二人とも外枠だが、同時優出を目指して諦めない“断固たる走り”を見せてくれるはず!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)