BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江オールスターTOPICS 2日目

ベテランたちの明暗

 今日は40代半ば~50代のSGレーサーたちにスポットを当てよう。ベテランたちの明暗が鮮明に浮き出た1日だったから。

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 まずは、暗。暗闇と言うべきか。『ミスターボートレース』今村豊と『安芸の闘将』西島義則が、2日目にしてV戦線に赤信号が点ってしまった。西島に関しては、昨日の2Rの5着&不良航法-10点でいきなり崖っぷちに追い込まれていた。3コースから豪快にまくってきたルーキー上田龍星を、インから己の身体ごと張り飛ばすようなブロックで「右転舵」の反則。予選5走の西島はこの時点で残り4戦を1112着=やっと6・00という境遇に立たされた。
 そして今日の2R、4号艇の西島はもちろんゴリゴリ動いて2コースを奪ったが、たっぷり助走を取った3コース白井英治のまくり一撃を浴びて万事休す。首を差し出した西島をバッサリ介錯するような一太刀に見えたものだ。2戦目にして無念の終戦。

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 一方、昨日は劣勢の足色ながら4着に粘った今村にとっても、今日は悲惨すぎる1日になってしまった。1Rは2コースから隣の磯部誠の痛烈なまくり差しを浴びて5着大敗。それから間もない5Rでは、バック直線で峰竜太と接触して転覆。心だけでなく身体にも痛い傷を負って、無念の途中帰郷となった(右側臀部打撲傷。田村隆信も腰痛症で帰郷している)。
 何度か書いてきたが、今村と西島は同い年である私にとって問答無用のスーパーヒーローだ。今村を正統派の石原裕次郎とするなら、西島がアウトローの勝新太郎みたいな(さらに同い年の西田靖と山室展弘は任侠スター、日高逸子は永遠のアイドルです!w)。もちろん今節も憧れのこのふたりを密かに応援していたのだが、2日目でこんな残酷な事態に直面するとは……号泣。ただ、今村は去ったが闘将・西島は明日も水面に舞い降りる。予選を突破しようがしまいが、ピットアウトからすべて1着を狙いに行くスタイルが変わるわけもなし。「V圏外」の一事で人気が暴落するなら、舟券としては逆に絶好の狙い目になるだろう。この男(と今垣光太郎)の走るレースに大穴あり。上々のモーター素性も含めて、最終日まで瞬き厳禁とお伝えしておこう。

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 もう少し「暗」に触れるなら、好素性の53号機とともに期待していた山崎智也が、3Rのイン戦でやらかしてしまった。禁断のコンマ44、超ドカ遅れ!! 智也のイン戦はS遅れが多いとしたものだが、これはもう……起こしのタイミングそのものは、完全にズレているようには見えなかった。2コースと同じように握ったと思うのだが、53号機はかなり伸び型に特化している感があり、出足がまるで付いてこなかったのだと思う。このドカが響いて5着大敗。ただ、智也の場合は他のレースを2・3着でまとめており、まだまだ準優の好枠まで望める立ち位置でもある。明日から伸び~る相棒としっかり折り合って、4年ぶりのSG優出(←グラチャン優勝)へと突き進んでもらいたい。

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 さてさて、智也がドカッてしまった3Rのまま「明」にスライドしよう。このレースの勝者・守田俊介。ガッツリ凹んだイン智也46歳を、2コースの原田幸哉44歳が軽々と飛び越えてまくりきり、さらにその外から俊介44歳が狙いすましたマーク差しでバック突き抜けた。直後の2マークは先マイを目指す俊介に、幸哉がスピード任せのツケマイで肉薄。この2期違いの両者はデビューの頃から「天才レーサー」と呼ばれたものだが、当時の評判をまんま連想させるようなスピーディな攻防だった。

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 で、後輩の猛攻をなんとかブロックして1着をもぎ取った俊介は、後半8Rのイン戦も危なげなく逃げきって20点のポイントアップ。昨日の6号艇2着も込み込みで、2日目を終えて暫定トップに鎮座してしまった。相棒の39号機は前検からかなりいい感じに見えていて、今日の2戦を見ての評価は「出足系統を中心に全部がちょっとずつ強いバランス型でトータル上位級のど真ん中あたり」と踏んでいる。篠崎仁志、平本真之、石野貴之などに比べると一枚落ちるものの、V戦線を戦い抜けるだけの足はありそうだ。
 それに、最近の俊介は「日を追うごとにパワーアップ」などという奇跡的なシリーズもあったりするし(←SG常連で俊介ほど「整備下手」と言われ続けた選手は他にいない!)。アラフォーになってからダービー2V、そして整備力アップと日々進化している「44歳の天才レーサー」ほ決して侮ることなかれ!

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 それからもうひとり、明とか暗とか別として、今日の全レースでもっともお茶の間のファンを沸かせたのは9Rの今垣光太郎50歳だろう。いやぁ、今日もしっかり暴れました! 嬉々として3カドに引いて、スリットでわずかに覗くや舳先を左に傾けて、絞めるわ絞めるわ! 結果としては舳先ひとつで徹底抗戦した毒島がその反動を巧みに利用して先まくり圧勝。「特急列車に乗ってるようでした、加速がついた(笑)」という名言?が飛び出したのも、光太郎名物「しゃくり絞めまくり」があらばこそ。人気サイドの毒島が勝って320倍という法外な配当になるのも、もちろん光太郎まくりの賜物だ。やんちゃなガキ大将のように暴れまくるこの50歳には、現状の22位からぜひとも準優圏内へと突入してもらいたい。

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 オッサン談義ばかりになったので、最後は可憐な大山千広で〆るとしよう。昨日の当欄で「2日目は外枠を走る女子にとっての試練」などと書いたが、この試練をそれなりに克服できたのは5号艇3着の千広だけだった(香川素子はんも一瞬だけ2番手だったが……)。しかも、この3Rの道中は丸々2周に渡って永井彪也との熾烈な3着争いに! 「20年前の天才バトル」の後方で、未来の艇界を背負って立つ男女の天才バトルが勃発したのだから贅沢なレースではあった。このバトル、基本的に永井が外から内への切り返しを連発して千広を惑わそうとしたが、千広は慌てず騒がず「行かせて差し」を選択して難局を打開。3周ホーム直線では両者が外へ内へと激しく入れ替わる陽動作戦の末、常に冷静に優勢を保ち続けた千広が嬉しい3着をもぎ取った。この2周の攻防だけで、また千広の内部スキルは何ポイントもアップしたことだろう。

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 千広は返す刀で12Rを逃げて完勝。オール女子戦の1号艇だからして、猛者どもが蠢く混合戦よりかなり恵まれた境遇ではあった。「点増しのドリーム2号艇の翌日にこの待遇は贔屓にしすぎ」と思う方もいるだろうし、「全国津々浦々のファン投票で2位に輝いたからこその境遇、自力でつかみ取った1号艇だ」と見る方もいるだろう。とれはともかく、今日を3・1着でまとめた千広はドリーム4着も含めて7・67=暫定8位で予選を折り返した。好ポジションとは言え、明日は6号艇と3号艇の2回走。真の試練はこれからだ。(photos/シギー中尾、text/畠山)