爆差し
11R 並び順
①瓜生正義(福岡)13
②白井英治(山口)19
③新田雄史(三重)17
⑤岡崎恭裕(福岡)13
⑥西山貴浩(福岡)14
④茅原悠紀(岡山)18
2コースの白井がブッ差した。爆竹音が響くような猛烈な差し抜けだった。出口で圧勝と分かる展開になった理由は、大きくふたつ。ひとつは、白井のパワーが瓜生のそれを凌駕していたこと。いまひとつは、イン瓜生が「たとえ差されても、絶対にまくられたくない」という握りマイを選択したこと、だと思う。
昨日の前検から8R後のスタート特訓からスタート展示から、白井のスリット足が瓜生を圧倒していた。ジカまくりを浴びたら、ひとたまりもない。そんな思いが強かったであろう瓜生は、結果として3コース新田のツケマイに飛びつく形で白井の差しを浴びた。この流れをひとことで表現するなら、「機力に自信がなかった」だろう。
一方、2着争いは福岡支部の3者による壮絶な叩き合いとなった。ストレートに余裕がある岡崎が主導権を握り、瓜生が百戦錬磨のテクで応戦し、最近は競り合いに滅法強い西山がしぶとく食い下がる。
最後に3者の着順を分けた決め手は、やはりパワー差だったと思う。一旦は2番手を取りきった瓜生にはまったく余裕が感じられず、岡崎に直線で圧倒され、最終ターンマークでは2艇身後方の西山の差しにも太刀打ちできなかった。ターンの前から「これは、やられる!?」と予感させる逆転劇。このままの足色では、トライアル1st~2ndの試練を乗り越えての2度目のGP戴冠は至難の業とお伝えしておこう。明日は大整備がありえるかも?
それから、私が有力なV候補と見積もっていた65号機・茅原は、西山を招き入れての6コース単騎ガマシを選択。トライアルらしい男前な戦術だったし、6年前の当地ファイナルの再現か?とも思わせたが、1マークでまったく展開がなく6着惨敗に。ギャンブル失敗は仕方がないとして、道中での新田との5着争いからもズルズル後退した足色は気になるところ。今日のところは、私が期待した65号機には程遠いパワーだったと認めざるをえない。
一閃の袈裟斬り
12R
①菊地孝平(静岡)11
②徳増秀樹(静岡)17
③平本真之(愛知)15
④松井 繁(大阪)16
⑤井口佳典(三重)18
⑥前本泰和(広島)21
3コースの平本が、強固に見えた静岡ラインのど真ん中を切り裂いた。菊地のインモンキーに大きな失策は感じられなかったから、平本のカミソリの如き鋭敏なまくり差しを褒めたたえるしかない。
進入隊形は穏やかな枠なり3対3。前本がもっとゴリゴリ攻めると見ていたのだが、おそらく「伸びる井口の外」という展開に魅力を感じたのだろう。そこに誤算があったとするなら、4カド松井のストレート足だ。昨日まで「伸びない」と泣いていた松井は、いざ本番前にしっかりと行き足~伸びを上積みさせていた。これが最近の王者流で、スリット足に活を入れる術を掴んでいる。
そのスリットラインは、菊地だけが覗いて外はほぼ横一線。怖い井口のスタート攻勢を松井がガッチリ受け止めたのを見て、私は菊地のイン逃げ圧勝を疑わなかった。それほど昨日からの菊地56号機の出足~行き足は安定感抜群に見えていた。
一方の平本24号機については、新田との足合わせで「ターン回り、出口の押し○」とメモしてはいたのだが、まさかこれほど鮮やかに菊地を斬り倒すとは想像していなかった。レース後の枠番抽選では、勢いそのままに明日の1号艇をGET。もちろん、この流れをもってV候補と呼ぶには早計すぎるが、2014年のGPシリーズに続く「平和島グランプリのW制覇」が視界の片隅に入ったとみていいだろう。
2着は斬られながらも2マークを力強く旋回して後続を突き放した菊地。3着は4カドから外の難敵を止めて最内を差した松井がしぶとく粘りきった。モーター調整も含めて、実に老獪な立ち回りだったと思う。グランプリという大舞台であっても、勝負はターンスピードだけで決まらない。そんな王者の矜持が垣間見えるレースでもあった。
私もストレート足に期待した井口14号機は、そんな王者の前になす術なく敗れた。「自慢の直線足を持て余した」という見方もできるが、道中で後手を踏んでからのターンはすべて引き波で滑る感じで、今日はまったく回転が合っていなかった可能性が高い。弱り目に祟り目、明日は6号艇を引いてしまった井口がどんな勝負手で高いハードルに立ち向かうのか。整備状況や足色を見守りつつ、できる限り正確にその戦略を予測しておきたい。
シリーズTOPICS
竜神様の異常な愛情
平和島の水神様は「吉川」という姓に恋焦がれているのだろうか。吉川元浩はここ3年で3度ここに足を踏み入れ、18年GI周年記念~19年BBCトーナメント~20年クラシックとすべて優出。絶対エース13号機を引き当て、その超抜パワーをフル稼働して頂点に立ったクラシックはまだ記憶に新しい。ちなみに、元浩は1/6の確率とはいえ今節も2連率トップの17号機を引き当てている。
で、平和島クラシックで10年ぶりにSG参戦、元浩に続いてファイナル2着のゴールを駆け抜けたのが46歳の吉川昭男だった。その大活躍でグラチャンの参戦権をもぎ取り、高い賞金を積み上げてSGチャレカにも出場。この一連の流れを思えば、今節は「凱旋帰郷」とも呼ぶべき年間4度目のSG参戦とも言えるだろう。東京支部じゃないけど。
そしてそして、今日の7Rはと言えば、1マークで2艇が転覆というアクシデントを掻い潜ってあれよあれよの先頭に。なんだかちょっと、背中がうすら寒くなるようなサプライズな1着でもあった(今思い出したが、昭男さんは今年の9月に当地マスターズリーグを2コースから差し抜けて優勝し、来年のマスターズチャンピオンの権利まで召し取っている)
とにかく、何から何まで吉川コンビは平和島の竜神様に愛されているのではないか、などと思った次第だ。これで吉川喜継、吉川勇作、吉川貴仁までが平和島で大暴れ、なんてデータがあればもはやホラーの領域なのだが、残念ながらそれらしい足跡はありませんでした、ちゃんちゃん。(photos/黒須田、text/畠山)