西ニャへの詫び状
11R
①西山貴浩(福岡)06
②寺田 祥(山口)11
③深谷知博(静岡)08
④吉川元浩(兵庫)07
⑤篠崎仁志(福岡)08
⑥菊地孝平(静岡)09
元浩を除く5人はすべて1~3着以内の得点が必要なラストバトル。3戦連続6号艇の菊地が満を持してピットアウトから攻めたが、吉川も含めた全選手が抵抗して枠なりのオールスロー。横一線で100mを切る起こしから、アタマひとつ飛び出したのはインの西山だった。
いやはや、恐れ入りました。進入が深くなる今日はさすがに苦戦すると予想したのだが、コンマ06のトップS。トライアル2ndに入ってから07・05・06という精密機械のごときスタート勘(プラス気力)で主導権を握り、1マークをくるり回ってファイナル入りを決定づけた。素晴らしい。そして、昨日も今日も「イン戦でも敷居が高すぎる」と無印にしてごめんなさいっ!!
さてさて、誰もが崖っぷちのラストバトルはここからが本番としたものだが……1マークを握って回った深谷が、ターンの出口でバランスを逸して横転した。またしても、だ。昨日はほとんどまったく同じゾーンで元浩が転覆。2日前にはやはり同じ場所で平本が試運転中に転覆し、今日も白井が足合わせのターン出口で転びそうなほど振り込んでいる。
このレースの深谷は2コース差しの寺田とニアミスしているが、接触はしていない。勝手に舳先が浮き上がり、もんどりうって転がった。さらには後方で太い引き波を超えていた元浩も、深谷とほぼ同じタイミングで舳先が浮き上がり、ズルリ後退している。ほとんど風もないのに。昨日も書いたように「うねり」などの物理的要因があるのだろうが、これだけ同じエリアで災難が続いてしまうと本気で「魔物が潜んでいる?」などと思えてくる。本当の本当に、明日こそすべての選手が何事もなくこの不気味な心霊スポット?を通り過ぎてほしい。
この不慮のアクシデントで、レースはほぼ終わった。2コースから差した寺田が西山に続き、仁志が転覆艇を避けたり元浩が失速している間に、6コースから最内を差した菊地が3番手に浮上した。その隊列はもはや縦長で、事実上のラスト勝負である2マークで逆転が起こる展開ではなかった。
鮮やかに逃げきった西山は24点で文句なしのファイナル確定。2着の寺田は23点で同じく確定。3日連続で6号艇6コースだった3着の菊地は20点で、トライアル1st同様に首筋の寒い境遇で12Rの結果を待つ立場となった。
柔らかな王者
12R
①新田雄史(三重)10
②白井英治(山口)14
③平本真之(愛知)17
④松井 繁(大阪)22
⑤峰 竜太(佐賀)22
⑥毒島 誠(群馬)18
このレースの最終隊形は11Rと瓜二つ。毒島の前付けを他の面々がすべてブロックして枠なりの横一線となり、起こしは100mぴったりのヨーイドン競走だ。そして、このレースもインの新田がトップタイミングで通過。直前に上体を上げてのアジャストスタートではあったが、白井はじめ他の選手もほぼモミモミしていたはずだ。
私はと言えば、アタマ決め撃ちの◎白井を追いかけていたのだが、この深いヨーイドンでは自慢の伸び足の出番はない。スリット前後で新田にやや置かれてから、1マーク手前でじりじりと差を詰めてやっと舳先が揃う感じ。
これはこれで無駄に突出するより差しハンドルが入るのでは?
と見ていたらば、そのターン回りはやたらと重く、差しきるどころか2番手を取りきるのも難しい回り足だと瞬時に悟った。やはり、節イチ級のストレート足の代償として、出足系統が相殺されていたのだ。出口で停滞する白井を横目に、3コースから握ってぶん回した平本が件の危険ゾーンもやり過ごして力強く出て行く。置き去りにされた白井の両サイドから峰と松井が迫ってサンドイッチの具材となり、2マークは最後のお願いで先手の握りマイを放ったが、まるでサイドが掛からず真横へと流れ去った。
そしてそして、そんな悪戦苦闘の白井に引導を渡したのが王者・松井だった。今日の2マークも白井をどうぞどうぞと先に渡らせての激辛の最内差し。この松井の「行かせて差す」戦法を、今節は何度見たことだろう。
柔よく剛を制す。
今節の松井は、周囲の位置取りを把握しながら“柔”の心もちで血気早い後輩たちを薙ぎ倒した気がしてならない。松井がガッチリと最低ノルマの3着を取りきった後方では、毒島vs白井の激しい4着争いが続いたが、ファイナル切符のご褒美が売り切れた戦いではあった。初戦を快勝しつつ、その後は抽選運の悪さを克服できなかった毒島。節イチ級のパンチ力で1号艇の峰をも脅かすであろう存在だった白井。このふたりが脱落したことは、明日の峰にとって大なり小なり有利な材料になると思う。
1着の新田は22点で4位通過。3コースから危険ゾーンを乗りきった2着・平本も22点で5位通過(1着のある新田が優先)。そして、トライアル1stの初戦から柔らかいタッチで混戦を捌き続けた松井がしっかりと6番目に滑り込んだ。もちろん、明日のファイナルも重要だが、「トップ6=来年の全SGの権利取得」は松井にとって大きなご褒美だったことたう。来年のグランプリは住之江なのだから。
さてさて、スローとダッシュの差こそあれ、今年のトライアル2ndは全6戦すべて1~6の枠なりとなり、すべて1号艇がカッチリ逃げきった。その6戦で1枚も①のアタマ舟券を買わなかった私の惨敗は選手責任として、例年よりもコクの薄い3日間だと感じたのは私だけではないだろう(例のアクシデントが拍車をかけたのだが)。まあ、これもまたボートレース。気持ちを切り替えて、明日のWファイナルに挑むとしよう。(photos/チャーリー池上、text/畠山)