BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル2nd・第1戦ダイジェスト

エリート将軍の咆哮

11R
①毒島 誠(群馬)11
②吉川元浩(兵庫)10
③寺田 祥(山口)08
④平本真之(愛知)13
⑤松井 繁(大阪)14
⑥菊地孝平(静岡)14

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 スタート展示は菊地がゴリッと動き、内5艇はやや遅れつつブロック態勢を敷いて枠なりオールスロー。「誰も入れてくれない」と悟った菊地は本番では動かず、穏やかな枠なり3対3となった。これが抽選による番組ならば、もっと激しい進入争いが見られただろう。「それぞれが自力で勝ち獲った枠」という選手道がモノを言った最終隊形ではあった。

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 こうなってしまえば、助走距離をたっぷり得たスロー3騎に分がある。さらにスタートも↑御覧のとおり、やや内3艇が有利なほぼ横並び。4カド平本のスリット足に迫力は感じられず、むしろ3コースからハナを切った寺田の行き足が際立って見えた。キャブレター交換で、夏場まで超抜だった33号機の底力を引き出したか。

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 1マークはその勢いのまま寺田の先制攻撃か、と思いきや、やや包まれたはずの元浩が得意のジカまくりで先に仕掛けた。3月の当地クラシック準優を彷彿させる強烈なツケマイ! ただ、この攻めは単純な勝負手とか奇襲とかではなく、「寺田のまくり差しを浴びての大敗だけは避けたい」という思いも働いたのではないか。GPトライアル序盤でもっとも重要なのは「重い着順だけは取らない」で、次に大事なのが「抽選運」だ(笑)。

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 クラシックに続いてジカまくりを浴びた毒島は、飛びつくように艇を合わせてキッチリ受けきった。キッチリでもあり、ギリギリでもあった。それほど元浩のツケマイは強烈だったが、受けきってしまえば抜かれる毒島ではない。元浩を外に外に追いやりつつ、2マークを先制して1着を確定させた。2着も元浩で決まり。後ろからは何にも来ない、行った行ったの一騎打ちだった。

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 3着争いは1マークの出口で混戦になったが、そこから力強いストレート足で一歩も二歩も抜け出したのが寺田だ。2日間の激戦を生き抜いた平本も松井も菊地も、その軽快なスピードに置き去りにされた。
 やはり、シード組に分があるのか。
 そう思わざるをえない彼我の差。前検時にも書いたが、今期の平和島モーターは40~45%台に14基が僅差で林立し、2連率1~6位が有利とは言い切れない戦国パワー相場だ。にも関わらず、シード組の3人3基だけがぐんぐん引き離して行ったのはなぜか。私の推測では、モーター素性の強さ云々ではなく、この3日間でさまざまな試行錯誤を繰り返した毒島、元浩、寺田がパワーの底上げに成功したのではないか。3人が3人とも「弱いかも」と泣いていたそうだが、いざフタを開けてみたらば彼らの機力は1st組を圧倒していた。

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 123~~456。枠番通りの着順は、ほぼコースの利に拠るものだ。ただ、道中でどんどん前後3艇の差が開いていった事実は、それだけでは説明がつかない。そして個人的な見解としては、このレースでもっともパワー的に魅力を感じたのは、寺田祥33号機の行き足だった。明日も要注意!

野武士の光陰

12R
①峰 竜太(佐賀)04
②篠崎仁志(福岡)06
③深谷知博(静岡)03
④白井英治(山口)03
⑤西山貴浩(福岡)07
⑥新田雄史(三重)08

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 このレースも「自力の枠番」効果があってか、キッチリ折り合っての枠なり3対3。で、これを書きながら知ったのだが、6人全員がコンマ05前後まで踏み込んだ灼熱のスタート合戦だったのだな。

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 ただ、「スタートはみんなで揃えば怖くない」。これはこれでコースの利がモノを言う。まずは峰が1マークを先制し、そこに3コースの深谷が目の覚めるような全速のツケマイで峰に襲い掛かった。コースこそ違え、この一騎打ちの光景は11Rに酷似していて、2艇でビッシリ競り合いながら後続艇を置き去りにした。やはり実戦に明け暮れた野武士より、試行錯誤を繰り返した将軍の天下なのか。2マークを待たずして、峰=深谷のシードコンビのワンツー決着が約束された。うむ。

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 そして、11Rの3コース寺田がそうであったように、このレースでスリットから力強く出て行ったのは4カドの白井だった。まくりきる勢いではないが、もこもこもこもこ伸びて内艇を圧迫する感じ。1マーク手前では深谷より半艇身近く突出し、逆にそこからの差しが窮屈かつ鋭角になりすぎて振り込むほどだった。

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 つまり、今日の野武士軍団でもっとも輝きを放ったのは3着に食い込んだ白井の直線足なのだが、道中では表裏一体の弱点も露呈した。旋回して引き波を超えるたび、バウンドしたり滑って流れたり軽いキャビテーションを起こしたり……伸びる代わりに出足系統は明らかに劣勢だった。この部分は後方から差を詰めた新田がかなり優勢で、今日の白井の足を私流に評価するならA【出B・直S】というアンバランスなものになる。その弱点を痛感したであろう白井が、明日の5号艇をどんな調整で臨むのか。なかなかにパンチ力のある機力だけに、悩ましい調整になることだろう。

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 一方、シード組でただひとり舟券から漏れた篠崎仁志は、2コースからすんなり差しながら出口でズルズル後退してしまった。平和島では2コース差し不発~引き波にはまって大敗はよく見かけるケース(今日も何件もあった)で、一概にパワー劣勢とは決めつけられないのだが、かなり不安の残る負け方ではあった。4号艇の明日は、その部分の修復も考えながらの難しい調整になりそうだ。

           ★

 最後に、GPシリーズに関しては折り返しの3日目につき、私なりのパワー評価を強いと思う順に記しておこう。

山口 剛 A+【出A・直S】
岡崎恭裕 A+【出S・直A】
池田浩二 A+【出A+・直A+】
前本泰和 A【出A・行A】
深川真二 A【出S・直B】
徳増秀樹 A【出B・直S】
井口佳典 A【出A・直A】
茅原悠紀 A【出A・直A】
 この8基が上位レベル。山口・岡崎は期待通りとして、今節は池田10号機がサプライズ・パワーか。記者席でも「池田がSGでこんなに出てるのは、何年ぶりだろ??」という声があちこちから聞こえるほどで、本当に何年かぶりでパワフルな池田を見ている気がするな。で、今日の池田は当たり前のように予選トップに立ったのだが、これをこそ「鬼に金棒」と呼ぶべきだろうか。以下、B+(中堅上位)は大量にあるのだが、特長のあるパワーだけをピックアップすると、こうなる。
磯部 誠 B+【出C+・直S】
坪井康晴 B+【出B・直A+】
佐藤 翼 B+【出B・直A】
秦 英悟 B+【出B・直A】
 前検で「もっと伸びる」と期待した秦58号機は、なぜかこじんまりとまとまってしまった感がある。それから、最近の穴男・湯川は日々じわじわと伸び足を付けており、明日あたりからさらに警戒を強めたい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)