BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル2nd・第2戦ダイジェスト

祭り男の逆襲

11R
①西山貴浩(福岡)05
②新田雄史(三重)05
③松井 繁(大阪)04
④寺田 祥(山口)07
⑤毒島 誠(群馬)10
⑥深谷知博(静岡)12

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 西山がわっしょいわっしょい逃げきった。ピットでは恐ろしく緊張していた、という情報が届いていたが、いざ実戦はインからコンマ05の電撃スタート。2コースの新田が意表のジカまくりで斬りつけても、これをすぐに察知して握りマイで応戦。新田の足を封じ、そのままバック先頭で突き抜けた。

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 惜しかったのは3コース松井で、握る気満々でいたところの新田の先攻め。そうと気づいて差しに回るひと呼吸の遅れが、西山の逃げを許す結果となった。それにしても、今日の松井も道中の捌きは達者の一語。バックで内からすいすい伸びる寺田(「平和島の花道」と呼ばれるコース)に舳先を掛けられたが、2マークはまったく慌てず寺田を先に回しての激辛差し。

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 今節、私は松井21号機をほぼ一貫してB+【出B・直A】と鑑定してきた。道中での捌きを「経験値の高さ」と片付けてきたが、これだけ何度も鮮やかに後続を突き放すのだから【出B】を見直す必要もありそうだ。

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 4カドの寺田はスリットの手前で上体をわずかに起こし、明らかにアジャストしていた。パンパンの気合が早起こしへと連鎖したのだろう。悔しい善後策ではあったが、タイミング的には「正解」だと思う。スリット全速で突き抜けたらどこまで伸びたか、それは明日のお楽しみにしておきたい。

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 道中でもっとも心配だったのは、毒島のレース足だ。大敗という結果はコースの不利が大きかったとして、深谷との熾烈な5着争いで常に的確なターンを繰り出しながらもターンの出口で競り負けていた。深谷の足が強かったのか、毒島のそれが見立て以上に弱かったのか。とにかく競り合いに不安を残す、頼りない実戦足だった。

埋伏の魔物

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12R
①峰 竜太(佐賀)10
②平本真之(愛知)12
③吉川元浩(兵庫)12
④篠崎仁志(福岡)12
⑤白井英治(山口)05
⑥菊地孝平(静岡)07

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「今日こそは菊地が動く! ならば白井も抵抗して最終隊形はしっちゃかめっちかになる」という私の憶測は見事に外れた。極めて穏やかな枠なり3対3。無策のまま6コースを選ぶ男ではないから、考えられる戦術はただひとつ。

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 伸びる白井をマークして展開を突く。
 そして、この作戦は結果としてそれなりの成功をもたらすことになる。今日の白井も特訓からスリット足が半端なく(おそらく、菊地はこの足色を測っていたはずだ)、やや直線足が頼りない仁志を軽々と飛び越えていた。

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 本番でも白井は行った。50mあたりでややアジャストしたようには見えたが、それでもトップスタートからもこもこと伸びていく。仁志を超えて、さらに加速がつきはじめた瞬間に、埋伏の兵が現れた。3コースから直進していた元浩が、白井を待ち構えるようにしてぴったり艇を合わせて握ったのだ。
 厄介な敵を張り倒して先に攻める。
 兵法として十二分に成立する作戦で、真っすぐに攻めた白井はなす術なく真横に流れ去った。逆に元浩はその反作用を利して、グイッと舳先を前に推し進める。

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 ほぼ2、3番手は確定かと見た直後、今度は元浩がターンの出口で見えない魔物に足をすくわれた。バランスを逸して転覆、失格。原因は不明だが、見た目にはさほど無理のない旋回だったから、今節のちょっとしたキーワードである「うねり」にやられたか。昨日の午後には平本も足合わせの際に、ほぼ同じ場所で転覆している。当地をホームにしている私もほとんど聞きなれない「平和島のうねり」。もしも実際にこれが原因だとするなら、明日はこの不気味な魔物が現れないことを祈るしかない(もちろん、単にハンドルを戻し過ぎた、などのシンプルな原因かも知れない)。選手責任の転覆(-2点)となって、元浩、ほぼ脱落……。

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 書くべきレースはここで終わった。今日も峰がカッチリと逃げ、転覆した元浩を横目に6コースの菊地が2番手を取りきった。後でリプレイを観たらば、菊地のマーク差しの初動の早いこと早いこと! だからこその6コース選択であり、菊地にとっては脳内レースとまったく同じ航跡を描いたに違いない。そして、レース後にまたしても6号艇を引いてしまった菊地は、明日は180度違う戦術を選ぶと断言しておこう。
 3着は2コースから小さく差した平本。回った直後、菊地の強烈なまくり差しの引き波を浴びており、展開的には幸運な7ポイントと言えるだろう。

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 4着も恵まれのような形で4カド仁志の手に渡ったが、昨日からまったく見せ場のないレースが続いていのが気になる。展開の不利だけでなく、足的にも見せ場を作れるほどの強調材料がなさそうだ。明日は5号艇での1着勝負。6号艇・菊地の存在も含めて、仁志がレース前になんらかの勝負手を放つ可能性も想定しておきたい。

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 5着はスリットからレースを作ろうとした白井。昨日のレースは「伸び型にした」と語の、今日の選択も自力勝負と決めてストレート足を磨いたと推定できる。その作戦は裏目に出てしまったが、行き足~伸びのパンチ力は誰もが認めるところ。ではでは、2号艇となった明日はどんな調整で臨むのか。自慢のストレートを殺さないまま手前に寄せきれれば問題ないのだが、果たして出足系統にすんなりシフトできるモーターなのか。毒島や松井を入れての3カド、4カド戦法も念頭に置いておきたい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)