BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負駆けの朝!

●ダラけてません

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 選手が対岸のビジョンでレースを観戦する際、係留所の屋根の下から覗き込むように姿勢を低くしている、という図はすでに取り上げた。ただ、その態勢はいつも同じではない。平和島は海水なので干満があり、係留所もそれに合わせて上下する。だからビジョンが死角になる高さが時間帯で変わってくるわけである。
 今日の1Rは、なかなか微妙な時間帯だったようで、ただ覗き込むだけではビジョンが見えなかった。というわけで、毒島誠と興津藍は寝転ぶような態勢になったという次第なのである。ピットでダラけていたわけではありません!

●節ちゃん!

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 ビジョンは見えなくても、少し態勢を低くすれば2マークの攻防はよく見える。というわけで、それまで立ってビジョンを見ていた選手たちも、艇団が2マークに差し掛かると腰をかがめたりして直接2マークに目を向けることとなる。
 1Rは先頭に立った松田大志郎が先に2マークを回り、次いで飛び込んできたのは田口節子。先行していた西山貴浩や田中和也を制して先マイを敢行したのだ。しかもこれが的確に決まった。旋回出口では逆転必至のターンと見えたから、選手たちも色めき立った。
「節ちゃん!」
 男たちの野太い声が合唱となる。すぐにビジョンに目をやれば、2番手を走っている! お見事! 田口の逆転ターンはSGレーサーたちをも唸らせたようだった。
 レース後は茅原悠紀や同期の興津藍に声をかけられて節ちゃんスマイル! これで後半に勝負駆けもつながっている。準優行きなるか!

●仁義なき同期競り

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 田口に逆転されてしまった西山貴浩と田中和也だが、3番手を競り合うこととなった。田中がリードする展開ではあったのだが、最終バックで西山が内から並びかけて、2マークは艇を合わせての同期競り! 水の上では先輩も後輩も同期もないのだ。むしろ、信頼している同期同士だから容赦なく競り合うことができる、という側面もあるだろう。

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 張り気味に回る西山を、抱いて交わす田中。競り勝ったのは田中だ。ピットに戻れば、もちろん笑顔でレースを振り返る。お互い敗れた悔しさがあり、西山は競り負けて4着となお悔しく、いろんな思いはあるだろうが、それでも心安く回顧し合える間柄でもある。二人とも予選突破は厳しいが、次に水面で剣を交えたときにはまたビシバシと競り合え!

●傷つけたくない

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 2Rはインの大上卓人が1マークを漏らす格好になり、ズブズブと差される展開に。それでもバックでは2番手争いとなり、大外でのぞく格好になった大上は2マークで先頭逆転を狙うツケマイを放っている。ただ、これは流れてしまい、差した湯川浩司がホームでは2番手をうかがう勢い。これを見た大上は、一気に湯川を締めにかかり、結果湯川と軽く接触するようなかたちになってしまった。
 戻ってきた大上は、まずリフトの上で湯川に謝罪。陸に上がってからも、湯川のもとへ向かい頭を下げていた。さらに、湯川のボートをチェック。接触したあたりが傷ついていないことを確認して、ようやく控室へと戻るのだった。水面ではレースの綾でいろんなことが起こる。エキサイティングなレースはこちらも歓迎ではある。だが、選手たちはお互いの身体を、あるいはボートなども気遣いながら戦っているわけだ。事故にならなかったのならば、すべてノーサイドだ!

●渋い

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 3日目を終わって、大ベテランの江口晃生が得点率3位! 今年はマスターズ世代がSGを席巻しており、といっても活躍が目立つのは40代後半の選手なのだが、この流れで50代後半の江口が優勝したりしたらそれは痛快! なにしろ平和島はSG初制覇の地でもある(98年第1回チャレンジカップ)。現在の得点状況を考えれば、ひときわ気合が入ってもおかしくはない。
 しかしながら、これがベテランの風格ということだろう、江口は昨日までと変わらず淡々と粛々と訥々と調整を進めるのみである。実に渋い。カッコいい。レースでもいつも通りにコース動いて、いつも通りに捌いていくだろう。ワタシも江口みたいな50代でありたいものです……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)