BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

地元エース、完勝も……?

10R
①篠崎仁志(福岡)05
②大上卓人(広島)07
③徳増秀樹(静岡)09
④毒島 誠(群馬)11
⑤桐生順平(埼玉)19
⑥興津 藍(徳島)18

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 今シリーズの地元のエース仁志が、鋭いトップスタートから鮮やかに逃げきった。元よりインコースが達者な選手だし、私が恐れていた徳増の行き足が平凡となれば、負ける要素がなかった。あまりにも圧勝すぎて今日の仁志14号機のパワーは測りにくいが、起こし~スタートまでの出足系統はしっかりしていたと思う。

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 ただ、スリットからの二の足はかなり凡庸で、今日もやや外の艇に伸びられていたのも事実。それが今節の仁志の泣き所で、明日も同じイン戦なら出足を武器に逃げきれる可能性が高いのだが、2・3コースではスリットから両サイドの艇に揉まれる展開もありえるだろう。

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 2着争いは、3コース徳増の握りマイにしっかり連動した毒島vs2コースから差した大上のほぼ一騎打ち。ターン出口から毒島がわずかなリードを保つ展開ではあったが、大上も差して握って切り返してと必死に食らいついて離れない。

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  特に2周2マークの広島支部らしい「仁義なき切り返し」の勝負手は鬼気迫るものがあったが、百戦錬磨の毒島がその切っ先を見切るように交わして難を逃れた。SG4度目の参戦で、しかも準優という舞台で天下の毒島をとことん追いかけまわった大上には敢闘賞を贈りたい。

闇からの脱却

11R
①石野貴之(大阪)15
②守田俊介(滋賀)12
③馬場貴也(滋賀)18
④前本泰和(広島)13
⑤菊地孝平(静岡)12
⑥岩瀬裕亮(愛知)11

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 スリット後の乱戦から、インの石野が力強く抜け出した。完勝だった10Rの仁志に比べると、冷や汗ものの逃げきり。仕掛けたのはあっと驚く4コースの前本で、シリーズ屈指の行き足で飛び出すやいなや、軽々と滋賀コンビを飛び越えてインの石野まで引き波にハメようとした。

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 結果論も含めて言うなら、「行き足が良すぎた」のかも知れない。あっと言う間に石野に接近した前本は、勢い的にも自力で攻めきる展開になっていた。あるいは、相手が抜群パワーの石野でなければまくりきったかも知れない。あるいは、ホーム追い風が強くなければ、舟が返って2着以内を取りきったかも知れない。

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 だがしかし、強気で石野を攻め落とそうとした前本は、伸び返した石野の抵抗を受け、さらには追い風の影響も受けて真横に流れ去った。10Rの大上に続いて、このレースも広島支部レーサーの気迫は惜しくもファイナルまでは届かなかった。

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 裏を返せば、この前本の猛攻を冷静に受け止め、ブロックしながら即座に独走態勢を築いた石野のパワーとメンタリティは素晴らしいものだった。レース直前まで私は「石野は本当にスランプから脱却したのか?」と微かに疑っていたのだが、この一戦をもって「今シリーズは今までとは違う」という確信を抱いた。完全復活かどうかはともかく、明日も1号艇なら逃げきれるだけの材料はすべて揃っている、とも。そして、次の12Rで……。

アップセット

12R
①寺田 祥(山口) 17
②松田大志郎(福岡)17
③湯川浩司(大阪) 14
④齊藤 仁(東京) 16
⑤白石 健(兵庫) 11
⑥稲田浩二(兵庫) 13

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 節イチの大波乱が、最後の最後に待ち受けていた。シリーズリーダーにして大本命の寺田祥、敗退。
 最初に引き金を引いたのは、2コースの松田だ。寺田とぴったり同体でスリットを通過したから「セオリー通りの差し構えか」と思いきや、寺田が初動を入れた直後に外からの握りマイを放った。意表のジカまくり!

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 これが最初からの作戦だったか、咄嗟の奇襲だったかは分からない。外から伸びる湯川に圧迫されていたから、まくり差しを嫌っての緊急手段だったかも知れない。とにかく、この奇襲によって初日から「イン天国」の様相を呈していた博多の水面空間にヒズミが発生した。
 インから身体を張って抵抗した寺田が、大志郎とともに流れる。3コースから機敏に差した湯川が突き抜ける。それでもすぐに態勢を立て直した寺田が追撃し、バック直線では3-1隊形で固まったかに見えた。

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 が、一度歪んだレースは、それでは収まらない。第2の波乱を生んだのは、寺田51号機の行き足だ。今日もストレート足が強烈な寺田はグングン先頭の湯川に近づき、追いつき、ついには舳先が入るまで肉薄した。
 これは、ヤバイ!
 2マーク手前の攻防を見た者なら、誰もがそう思っただろう。準優というレースの意味を踏まえれば、寺田の正解は「外に開いての差し」だった。たとえ2着でも。が、ガッツリ追いついてしまった寺田は、強引に舳先を捩じ込んだ。1着だけを獲りに行った。
 もちろん、バックでは圧倒的優位だった湯川も譲らない。捩じ込んだ寺田の舳先を叩き潰すように、2マークを先制。元よりマイシロのなかった寺田の艇は左右にスイングしながらバランスを逸した。

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 そして……1マークに続くデスマッチを横目に、最内からスルスルと差し抜けたのは、圧倒的な最低人気の稲田浩二!!!! これだからボートレースは分からない。つい10秒前まで5、6番手だった稲田が突き抜け、寺田をギリギリ叩ききった湯川が追随して、瞬く間に6-3という配当的にも準優的にも大番狂わせのフォーカスが誕生した。
 もちろん、ありえない展開で1着=ファイナル3号艇となった稲田は望外の喜びを感じたと思うが、ことV戦線においてもっとも得をしたのは石野だったかも知れない。節イチパワーの評判を分かち合った寺田祥が4号艇なら、明日のスリットは誰が勝っても不思議じゃないスリリングな隊形になったはずだ。私自身もその枠番なら「逃げてまくって飛びついて」の大競りの予感を抱いていたのだが、寺田が去った優勝戦のパワー相場はほぼほぼ石野46号機のワントップ状態と見ていいだろう。

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 明日は石野で仕方がないな。
 12Rの大波乱の余韻に浸りつつ、そんなことを思った。昨日は断然トップ当選の寺田祥に対してでも「V争いはまだまだ分からない」などと釘を刺したものだが、なぜか明日に関しては石野の優勝以外はまるで想像できないでいる。(photos/シギー中尾、text/畠山)