BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トップ争いが熱かった4日目後半のピットから

「カァァァァッ! クソッ!」
 ピットに上がるなり、吼えたのは茅原悠紀である。10Rを逃げ切った、茅原悠紀なのである。
 7R、深谷知博が逃げ切って、暫定トップに立った。10Rで茅原が逃げ切れば、得点率で深谷に並ぶ。しかも、予選で獲った着順はすべて一緒。ということは、最高タイムが速いほうが予選トップとなる。7Rが始まる前までは、茅原が1分48秒4の最高タイムで、深谷を上回っていた。ところが、深谷の7Rの走破タイムは1分47秒5! 一気に0秒9も茅原を上回ったのだ。当然、茅原はこの状況を把握していた。茅原だけではない。見守った選手たちも、理解をしていたようだった。
 茅原が勝って、対岸のビジョンが走破タイムを映し出す。1分47秒8。「あぁぁぁぁ…………」。ピットには溜息が渦巻いた。茅原が勝者とは思えない呪詛を吼えたのは、そういうことなのだった。

 一方で、深谷の周辺=東海地区の選手たちは、深谷を称えて笑顔を浮かべる。深谷もニコニコと目を細めて、しかし特に大きなアクションを起こさずに、エンジン吊りを行なっていた。その後はゲージ擦り。穏やかに過ごしていたというわけだが、この0秒3差は明日以降、大きな差となってくるかもしれないぞ。

 白井英治が予選最終日、大失速してしまった。ボーダー6・00なら2走で5点が必要だったのだが、まさかの5着2本で4点しか獲れなかったのだ。それでも、8R終了時点でボーダーが6点を割っていたので、15位に留まった(9Rの結果で16位に)。もちろん安堵の思いはあろうが、これは決して望んだ結果ではないのは明らかだ。表情は冴えなかったし、報道陣に得点状況を尋ねている間もやけに疲れた雰囲気が見えたのだった。

 毒島誠も失速だ。3日目終了時点で予選トップだったものが、4日目はゴンロク。無事故完走で当確だったが、9R終了時点では一気に13位にまで順位を下げてしまった。誤算だっただろうし、足色にも不安が残るところだ。そうした悔恨をレース後は決して表に出さなかった毒島。しかし、どこか感情を押し隠そうとしていた様子もあり、だから視線があちこちをさまようような様子もあったりした。

 毒島が大敗した9Rでは、新田雄史が会心の逃げ切り。ずっとボーダー上にいるという状況は、一気に8位まで上昇に好転している。気合のイン戦だったに違いなく、レース後に新田は実にゴキゲン。昨日、中山将太の水神祭に自分を担いで乱入しようとした菊地孝平と明るい表情でレースを振り返っていた。ようするに仲良しなんですね。

 そして、その菊地は11Rで3コースからまくり快勝! 21位から一気に準優圏内に浮上した。ボートリフトから上がってくる際に、出迎えた仲間に向かって快哉を一声。陸に上がって、パチパチパチと大きな拍手。露骨に喜びをあらわにしたのは、そこまでだった。ただし、目はギラギラ! 視線の先を射抜くかのごとき目力で、1点を見つめながら、ドシドシと力強い足取りで控室へと戻っていくのだった。会心の一撃だったのは明らかだ。

 そのまくりを浴びて大敗したのが丸野一樹。前半4号艇で1着、ここは連勝で準優内枠を視界にとらえる一戦だったわけだが、6着シンガリ負けだったのだから、沈鬱な顔つきになって当然だ。いや、それはむしろ不機嫌であったとすら言える。苛立ったようにも見える表情は、実はそれでも18位に踏ん張って準優行き(実は無事故完走で当確だったのだ)を決めていたのだが、そんなことは眼中になく、ただただインで大きく敗れたことを悔いているものとしか見えなかった。丸野は昨年メモリアルでのSG初優出は予選18位から、16年ヤングダービーでのGⅠ初優出も予選18位からと、ボーダーからのファイナル行きを2度も経験している。二度あることは三度ある、と前向きに捉えて準優を戦ってほしいものだ。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)